連載記事2026/10/08
脳内伝言板
いぶし銀の里 1
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
2026年1月後半に初めてその地に訪れた。晴れ間は見えるが、時折雪がチラついていた。
以前からお世話になっているプロデューサーに新たなプロジェクトのお話を頂き、いぶし銀の里へ訪れた。
「セミナーとアート」というコンセプトで新たなスタートを切るために動き出したプロジェクトだった。いぶし銀の里は黒磯駅から板室温泉を繋ぐ国道369号線沿いにある敷地面積約4500坪の森でその中にオーナーの別荘がある。その入り口が国道369号線沿いに40メートルくらいあるのだけれどそこに「気配」を創れないかという趣旨のオファーだった。
そこで初めていぶし銀の里のオーナー様や関係者とお逢いした。皆さんナチュラルな雰囲気の素敵な方々で、アットホームな感じで話は進んでいった。いぶし銀の里ではこれまでオーナーの経営していた東京の会社に勤める従業員が自然を感じたり、実際に野菜を作ったりと土に触れる体験をしてきた場所であるとのこと。また山野草が沢山あるとのことだった。その他色々とお話しし、ご用意して頂いたホテルで一晩を過ごす。実際に場所を見てお話しした中から私の考えが生まれたので、簡単なスケッチをし、急遽翌日プロデューサーにもう一度お会いし話をする機会を頂いた。いぶし銀の里のオーナーはすでに東京へ帰っていたので後日私の考えを伝えて頂く事になった。
そしてプロデューサーとの打ち合わせの後もう一度いぶし銀の里にもどった。
オーナーとお話ししている中で、山野草や植物にとても関心がある事、先代から受け継いだ思いを後世に伝えたいということが思いの中にあった。それは私の創作と強くリンクするものだった。植物の種や循環は常に私の意識の中にある。当然そういった事をよく理解した上でプロデューサーは私とオーナーを引き合わせてくれたのだろう。
いぶし銀の里は今日も雪がチラついていた。普段殆ど雪が降る事のない静岡に住む私には結構新鮮だった。その中でこの地で受け継がれている種を採取していった。私の考えた作品のプランが通るのであればこの種たちが必要になるからだ。真冬なのでそれほど多くはないけれどそれでも松や椎や草花の種を時間が許す限り採取して駅へと送っていただき岐路に着いた。
後日私のプランが通り更に具体的に話は進んでいった。まずは3月に2週間程オーナーの別荘に寝泊まりしながら制作をすることになった。もちろんこの期間に作品を完成させるためには2月中にかなり下準備を進めなければならない。また制作するにあたり幾つか条件があった。それは先代から受け継がれてきた石のテーブルと石のイスを使ってほしいということ。大谷石が29枚ありそれを使ってほしいという事。長さ3メートルほどの半割の丸太の椅子が2つありそちらを使ってほしいという事だった。こういったことは比較的得意分野である。そういった素材を使う事で、より意味深い作品になっていく。
全体的な作品については、この地で育ち受け継がれた植物の種を入れたホシノタマゴ(種入り泥団子)と導(矢印)の作品を制作していく。
まず道路沿いに制作する気配について、こちらは石のテーブルと石のイス2セット計10個を使い矢印をモチーフにした「救世種の丘」を制作する。これは全長20メートル幅8メートルの矢印型の丘の作品である。元々そこには伸び放題になったツツジが植えてあったのでそれを移植してもらい更地にする。図面を送り私が行くまでにある程度土を盛って丘の原型を作ってもらう。3月に私が行った時に矢印を描くように石を積んでいけるように砂やセメントや丘の縁を積むための石を用意してもらうように段取りをする。ところが所変われば品変わるわけで必要なサイズの石を探してもらうだけでも結構大変だった。一般にグリ石といわれる大体30cm〜50cm位の石を使ったのだけれどもグリ石も土地土地で様々なのでどんな石が手に入るのか理解するのが中々難しかった。この地で産出しているグリ石は想像以上にカラフルで結果的にはとても良かった。作品にメリハリをつけるために砂利の色を何色か変えているのだけれど、これもまたサイズや色を合わせるのに思いのほか苦労した。この辺はいぶし銀の里の里守さんが色々と動いてくださり本当にお世話になった。そうやって3月に現場に入り制作していった。
毎日職人さんが8時30分位に来るので私は朝5時くらいに起きて、その日に整地してもらったり、資材を運んでもらう場所などを指示するための段取りをして作業に入る。現場全体で日々5〜6人位の職人さんが入っておりその中から1人〜3人くらいが私の作業の手元についてくださり夕方まで制作する。私は殆どが石を積む作業だった。造園業の経験が生きた現場だったし、久しぶりに石を扱うのはかなり楽しかった。やはり石が好きなんだなぁと改めて認識した。4時30分位に職人さんが帰るのでそこから暗くなるまで一人で作業する。そして夕飯とお風呂に入り夜11時くらいまで電気をつけてペンキ塗りや出来る事する。寝ても覚めても創作のみに注力できることは私にとっては最高のご褒美みたいなものだった。この期間天気にも恵まれた。ここに着いた翌朝はびっくりするくらい雪が降ったのだけれど午前中には溶けてその後は全部晴れた。土いじりが多かったので、雨が一日でも降ったら大変なことになっていただろう。ただびっくりするぐらい風が強かった。冬場静岡も海からの風が強い時はあるけれどそれとは比べ物にならないくらい山の方から平野に向けて強烈な風が吹き続けていた。
現場には常にダンプや重機を置いておいてくださり、職人さんがいない時も自由に使わせていただいたのも助かったし、最後の日曜日はお休み返上で職人さん達も現場に出てくださったりと本当に助けられた。
私の車はノーマルタイヤなので一日訪れるのが遅れれば雪で到着できなかったかもしれないし、到着して2日目に急に車が止まってしまった。近くの修理工場を紹介してもらい修理にだした。理由はアイドリングのセンサーの故障だった。これも来る道中じゃなくて助かった。なんだかギリギリ上手く事が運んで行った感じだった。
またこれはオーナーはじめ関係者も皆こんなに円滑に進む事は早々ないと口々にしていた。私もそんな風に感じていた。私としては皆様に感謝しかない。
いぶし銀の里 作品制作秘話 2 に続く 写真は「救世種の丘」

2026年セミナーとアート・立ち止まる場「いぶし銀の里」に、大型の常設野外作品を8点を制作させて頂きました。
約4500坪の森の中を散策しながら作品を楽しんで頂けます。
期間中、全日在廊し、「始まりの石」を始め小作品も展示致します。
この機会に是非お出かけ頂けましたら幸いです。
白砂勝敏
日時 :2026年10月31日(土)〜11月8日(日)
10:00〜16:00 ※期間中無休
作家全日在廊予定
入場料:無料
※入場無料ですが、お車でお越しの際は駐車料金1台1,000円(里の協力金として)となります。
場所 :セミナーとアート「いぶし銀の里」
〒325-0114
栃木県那須塩原市戸田650-1
・東北自動車道「黒磯板室IC」「那須IC」より車で約15分
・東北新幹線「那須塩原駅」より車で約23分
・JR東北本線「黒磯駅」より車で約19分
・「那須塩原駅」「黒磯駅」より、関東自動車バス「板室温泉行」にて「戸田」バス停下車、徒歩約9分
(バス運行本数が少ないのでお時間ご確認下さい)
お問い合わせ:いぶし銀の里 tel:080‐2837-7700
静岡県出身、造形家/演奏家。
農業高校造園科卒業、美術音楽共に独学。
美術家、演奏家、パーカッション、ディジュリドゥ、ムビラ奏者。
20代前半人...
準備中