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Logo Mark歯を磨く様に演じる台詞と覚え方と記憶と…

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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今となっては、台詞を覚える事にはたいしてなんとも思わない。今、もし、長い台詞を提示されたら、何の抵抗も無しに覚えるだろう。覚えなければ仕事のスタートラインに立てない時代を何の疑問も持たず、長々と過ごしてきた結果にほかならない。なので、つい最近も初めて芝居をする人達に何気に長文台詞の台本を選んでしまった。その事を最近気づき、芝居のキャストに話したら『台詞…長い…。覚えられるかなーと思ってたんです。』との事。やっぱり。
しかし皆様、その割に長台詞を何とも言わず、覚えていらっしゃいました。脱帽です。ちょうどコロナ禍でステイホームとなり、その間、台詞を覚える事で、非常事態でのメンタル的逆境を乗り切った方もいらっしゃいました。素晴らしい!
商業劇団にいた時は全くそうは思わなかったが、辞めてから、他で芝居をする機会が有ると、自分はそこそこ台詞覚えが早いのだと感じる。
その台本を覚える場所だが、自宅でない事も多い。桜満開の宇都宮二荒山神社のベンチで、花見客を横目にベンチで覚えていた事もある。台詞を覚え、飽きたら散歩アンド桜。たまに鳩と遊び又、覚え。てな訳で。渋谷のヒカリエのお土産・スイーツ売り場の片隅で覚えていた事も有る。台本、台本、台本、飽きたら歩いてスイーツ見物。
家だと宜しくない。雑用、雑用、雑用、たまに台本、雑用。となりがちで、気が散る要素が多いし、眠くなりやすいし。布団も近い。
勿論、家でも覚えはする。家で覚える時は、ガーッと一気に覚え、台本をいつも自分のいるテーブルの上に置いておく。あれ、あの台詞と思った時、すぐ確認出来るように。食事時もテーブルに有る。別の仕事をしている時も有る。歯を磨いていても気になったら、洗面台から歯ブラシをくわえながら、テーブルの所に行き、台本を見る。何かのついでに、覚えたがあやふやになった台詞を確認する感じ。そうすると何となく覚えていく。
商業劇団にいた時は、大方自分の部屋で覚え、稽古時、皆と合わせて動きながら演じているうちに覚えていた。身体を使っていると記憶しやすいのだと聞いた事がある。
そして、先輩方々、皆さんとても台詞覚えが早かった。その中に特別早い同い年の先輩がいて、彼女は『3回くらい合わせると、台詞入っちゃうな。』と言っていた。それもこの方、この台詞の意味する所は全てのキャストの台詞だ。『一人でこの芝居出来るのよ。』と笑って言っていた。自然と入るらしい。羨ましい事この上ない。
台本を記憶するには、耳で覚えるタイプと目で覚えるタイプがいる様だ。台本をキャストで読み合わせした時、録音し、それを聞いて覚える者。私はこれでは覚えられない。私は断然、目で台本を見て、記憶する。そして、(立ち稽古スタート時は)台詞を言いながら、頭の中に台本を開き、その台詞を追っている時がある。そして頭の中でページをめくる。
最近、やっているのが、覚えている時、どうしても出てこない台詞の横にイラストを描いている。稽古する時間が少なかったりする場合、これが案外、私には役に立った。
例えば『怖いわ。もう駄目…、それと…』の文があって、『もう』という言葉が出ない場合、『もう』の台詞の横に“牛”のイラストを書いたり、『それと』の横に“空にある雲”のイラストを書く。文の意味とイラストは全く関係ない。牛が“もう”となくから。雲が“そ”らにある。それだけのこと。私のみが絵を見てその台詞が出てくる独自のキーだ(この時も頭の中で開いた台本を見ている)。
しかし、記憶術には、「フック法」と言われる覚え方があり、物を掛けるためのフック(鈎)を想像して、これに記憶すべきものを対応させる方法。なので、あながち間違ったやり方ではなかろうが、私の台本に書かれている多数のイラストを見た演出家の友人は、全くわからないと苦笑していた。
ちなみに、台詞を覚えるのはいいのだが、困った事に踊りは覚えられない。覚えていても直ぐ忘れてしまうのは、何故だろうか…。

7月26日(日)14時〜 オンラインZOOM 舞台公演 芥川龍之介『羅生門』

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