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Logo Mark歯を磨く様に演じる一人芝居フェスでのパントマイム公演を終えて

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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6月1日、2日栃木県と茨城県の演者12名が集まり一人芝居フェスが行われた。
私も出演を予定していたが、ギリギリまで演目に何をするか迷っていた。というのは一人芝居はしばしばやっているので、焼き直しは割と簡単で、今までの延長になる。心は穏やかでいられる。日常生活穏やかに過ごすのは大切だ。私は単純作業が得意中の得意。毎日同じ事を同じ時間にして過ごす。
『しかし、何か足りない!』
冒険やチャレンジは年を経るごとにやらなくなり、安心安定した選択ばかりになっていく。それはわかっているが、新しい事をすると、
『失敗をする事もある。』
それが怖いのだ。
しかし、冷静に“失敗って何?”と考えた時に、
『やらない事が1番の失敗の様な気もする。』
そう考え、悩んで悩んだ末パントマイムをやる事に決めスタートした。
稽古し出してみるといろんな発見がある。
パントマイムは空間固定を多様するのだが、身体の一部を空間固定する為にはいろいろな日頃意識しない筋肉を敏感に働かせる。
例えば肘掛け椅子に肘を置き、かけていた椅子から立ち上がる時、通常は肘掛けにかかっている腕に少々力をかけて立ち上がる。しかし、マイムで同じ様に力をかけると腕が一瞬下がってしまう。なので腕先は力を入れず固定し、腕上部の裏側を意識し、背筋をいつもより使って立ち上がる。腕上部の裏側、そう、よく女性の方が『プルプル振れる肉が付いてきた、どうしよう⁉︎』と気にする部分。使っていないからそうなる訳で、本当、通常生活ではあまり使われない。
葉巻をくわえるマイムであるが、物理的に口にタバコをくわえていたら片方の唇が自然と開くのだが、マイムなので何もなくても広げなくてはいけない。これはそこまで難しい事ではないが、直ぐにはそうはならない。通常そんな筋肉は使わない。
こんな些細な事が山の様にあってびっくりする。
あと、いつもは台詞で助けられていて、悲しいとか、嬉しいとかいう台詞で伝わるものがそうではない。その時の状況、心情を自分自身明確にして身体で表し進んでいかないと自分も観客もなんだがわからなくなってくる。こんな感じと曖昧でやってしまうと曖昧な動きに現れてくる。微妙な身体のブレもよろしくない。
こんな事を稽古中に思いながら進めていき6月1日、2日と本番を終えた。
良かったか悪かったかはわからないが、私としては良い経験が増えたなと思う。
多分このフェスに出なかったら、当分はこんなにガッチリパントマイムを練習しなかっただろうし…。
でも一つ残念なのが、年々身体が言う事を聞いてくれなくなっているのを実感する事。年をとると身体が動かなくなっていくのは頭ではわかっているが、それを実感するのはなかなか辛い。
でもそれにも増して面白いのが、自分の思った状況、感情を言葉抜きに身体で表す事。緩やかな波の動き、浮遊した身体、海辺の砂を歩いているところ。
今までおんぶに抱っこで台詞に頼ってきた。
それを台詞抜きに、身体で表す。角度、表情、呼吸、緊張、緩和も用いて。
直ぐには出来ない。それでも、この表現がなんとも言えず面白いと感じるのだ。

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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