2021/01/08
いつの頃からだったか、朗読劇公演にいつも一緒の相棒がいる。今となっては初めから一緒にやっている気がしてならない。最初にそいつと出会ったのは、宮沢賢治の『どんぐりと山猫』の作品を創っている時だった。
私だけかもしれないが、宮沢賢治の作品にはバックに音が流れている様な気がして、都合よく音が入れられるものがないかと探していたところ、そいつに出会ったのだ。
そいつはサンプリングパッド、ローランド OCTAPAD SPD-30で、OCTという通り、8面パットに99キットあり、単純計算しても、そのままで8×99、792種類の音が出せる。厳密には叩き方によってもっと多くの音が出せる。
芝居をする時、既に作られている曲をバックに流したりする事はありがちだが、それとはまたちょっと違う。演じていると、会場だったり観客の雰囲気によってスピードやリズムを調整したい時が出てくる。既に作られているものだと瞬時にはそこが変えられない。
以前ゲストで呼んで頂いた時、作家ご本人の前で、彼の詩集を朗読する事があった。その時はバックに事前に作った曲を流し朗読したのだが、練習の時よりゆっくり朗読したものだから、長めの曲がなくなってしまい、1人で、本を読み演じ、機械操作までして、とても大変だった記憶がある。
その点、サンプリングパッドは演じながらキットボタンを変更させ、単純にパットを叩けば、それ相応の音が出る。そしてリズムもその場で変えられるし、叩く強さを変えれば、音の強弱も変えることができるのでとても都合が良い。
そして実際、朗読舞台公演で使ってみると、音によって話の情景がわかりやすくなりとても高評価だった。
サンプリングパッドは自分が演奏したフレーズを、その場で簡単にループ・フレーズにして、音を出す事なども出来るそうだが、そこまででなくても、今のところ充分相棒として役に立っている。又、持ち運びも軽く、形も演じる時、邪魔にならない単純な長方形なのもいい。それにどれだけハードスケジュールで使っても文句も言わないのがまた良い。まぁこれは冗談なのだが(笑)。
そして、音選びに関して書かせていただくと、私の場合まず作品を読み、なんとなくここに音が入ったらいいなと思う部分をピックアップし、そしてサンプリングパッドを叩いてみる。パットを叩いてみる時はじっくり叩かない。パパパパパンと1キット全8面1、2秒叩いて、はい次とページをめくるようにキットを変えドンドン叩いていく。単に自分の感覚を頼りにパパパパパンと叩いて次から次へと進みながら、選ぶ。
たまに迷うこともあるが、そんな時はやっぱり最初の音の印象で選ぶ。人の第一印象、直感は正しいなんて話も聞きますが、それに関しては音も同じだな、なんて思いますね。
ちょっと話がそれてしまうが、音は人間の感覚に作用するもので、別のものでこの音の代用にならないかと昔考えた事がある。というのは、音や曲を選ぶのも機械を操るのも苦手で、おまけに人手がなかった。その結果取り入れたのがアロマ、香りだった。香りも音と同じく人間の感覚に作用するものなので、同様の効果が得られるのではないかとアロマテラピストの友人に頼み、二人芝居に取り入れてみた。シーンや心情が変わるごとに違った香りを漂わせたのだ。もっとも空間に香りが充満してしまうとすぐには消えないので、音のように多く使うことはできなかったけれども、音の代用にはなったのではないかと思う。
その後何度か、朗読劇の時にその芝居に合うアロマを調合してもらって、ディフューザーでたいた事もあったが、最近はもっぱら私の片腕となった気の合うサンプリングパッドと共に作品に向き合うのである。
それと余談ですが…、これを読んで機械に詳しい方、どうぞ私にこれ以上のサンプリングパッドの使い方を伝授していただける神のような方、お待ちしております。
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