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Logo Mark歯を磨く様に演じる舞台の雪

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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この時期、雪が降るか降らないかで気分が大いに左右される。私の場合、車のタイヤが今年もまだノーマルなだけに、今週雪が降ると聞くと、本当ドキドキする。昨年も明日、雪が降ると聞いて、夜9時からタイヤ交換を自ら始め、交換後、空気を入れにガソリンスタンドに駆け込んだこともあった。結局雪は降らなかった…。
実際の雪はそうだが、舞台の雪となるとこれまた特別にワクワクする。
舞台に雪を降らすのは、ほんと驚く程単純な仕掛けなのだ。
(1) 薄いひらひら舞う薄めの紙(雪なら白、桜ならピンク等)を三角形に大量にカットする。
この雪は江戸の昔からの伝統で、三角形と決まったものらしく、紙の重さと、三角の平方体が落ちる時に受ける空気の抵抗が、力学的に釣合っていて、いとも鮮やかに舞い降りるからだそうだ。
(2) (底が格子状に1.5cm位の穴の開いた)長方形の籠を、降らせたいところの天井のバトン(照明などが通常吊ってある棒)に少々長めのロープで取り付ける。
(3) 吊った籠を紐で連結する。籠は1つとは限らない。
(4) 端の籠に紐をくくりつけ、見えないところまで持っていき、降らしたいタイミングでその紐を引っ張る。
ただこれだけ。
雪が降る話や桜が降る芝居を何度もやっているので、さして珍しいものでは無いのだが、観る側としてはなかなかこの仕掛けはお目にかからないだろう。
そう思って、ある冬の時期、雪を降らす細工も楽しんで頂こうと、宮沢賢治の『雪渡り』を朗読舞台で上演したことがあった。
但しそこの会場はホールではなく、オフィススペース。
そこでまずお願いしたのは、
『すいません。天井にバトン吊ってください。それに文字幕も。』
文字幕というのはバトンや照明が見えてはちょっと興ざめなので、それを隠す幕。
私の無理なお願いも聞いてくださり、オフィス天井に簡易的な直径5mm位の可愛らしいバトンが取り付けられた。
それに百円ショップで買ってきたこれまた可愛らしい、ワイヤーバスケット(L40×W12×H5cm)を3つ取り付けた。
本当に単純なシステムなんだけれども、この雪が舞っているところにライトが当たると、なんとも感動的で素敵なシーンが出来上がる。ただしこの時は演者は私1人なので、用意するのも私。そして雪を降らす紐を引っ張るのも私で、やる方はあんまり優雅ではなかったのだが。
そしてオフィスは天井が高くないのでちょっとした脚立に上り、簡単に籠を設置できたのだが、いつもそうとは限らない。 毎年、宇都宮市内の小学校で『桜祭り』があり、『桜が咲いた日』という子供達の芝居を上演する。その時は、体育館の舞台のバトンに雪籠を吊って、ピンク色の紙を降らす。それに桃色のライトがあたると、もう何とも言えないクライマックスシーンになる。
但し、準備するのが大変で、舞台の脇の梯子から天井裏のすのこに登り、舞台の上に吊ってある大きな学校の照明をよけ、埃まみれになりながら、幅15cm程のすのこから足を踏み外さない様、手と足の感覚を最大限に研ぎ澄まし、安全に雪籠を吊るのである。
何度もやっている私としては特別なことではないが、いつぞやこの桜祭りの時期に私が家で台本を書いていたら、某演出家から呼び出しがあった。
『私が台本書くからさぁ、その代わり桜の籠、吊りにきて!』
確かに高所恐怖症の人には難しいかもね(笑)

2月28日(日)14:00〜 オンラインZOOM舞台公演・江戸川乱歩『一人二役』

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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