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Logo Mark歯を磨く様に演じるディバイジング〜最近芝居業界で流行っているらしき〜

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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第42回宇都宮市市民芸術祭演劇部門の公演ではディバイジング手法を取り入れているという。
『ディバイジングねぇ。なんじゃそれ。そんな最新鋭的サウンドの方法がアナログ表現の骨頂の芝居にあるのか??』
と調べてみたら、近年わりと使われている手法だった。既存の台本を使わず、演出や役者などがアイディアを出し、芝居を作っていくやり方だそう。
うーん。言葉は最近の流行りかもしれないが、前からそんな方法はやっていた気がする。
以前私が所属していた商業劇団では、夏には“ドラマスクール”という行事があり、小学生から大人まで泊まりがけで、劇作品を作っていた。コミュニケーションが必要だとの事で、看護師や教師になって間もない方々のコースもあった。そのドラマスクールでの劇作りに似ている。
どうやって作品を作るかというと、7、8人のグループに別れ、最初に紙とクレヨンを渡され、個人個人で対立するものの絵を描く。
“対立”これが大切で、この“対立”が芝居の素となるとのことだ。文字や言葉ではなく必ず“絵”で描く。
例えば“天使と悪夢”、“太陽と雲”、“猫と鼠”などなど。自分の心の悩みでも何でもいい。思いついた“対立”をひとりひとり次々に書いていく。
『どうしても思いつかなかったら、○(まる)と書いてください。』
これは最初に指導してくださった京都の演出家先生の言葉。
この描かれた絵を組み合わせてどんどん芝居にしていく。どのグループも最後には面白いオリジナルな芝居が出来上がる。勿論、最初の絵から離れたストーリーになってもいい。
そうそう、エチュードなんていうのも芝居の稽古によくやっていた。お題などが与えられ、そこで打ち合わせもなく役者が即興で芝居を作っていく。私はどちらかと言うと苦手分野だ。瞬間に物事を判断し演じなければならないので機転が必要。それも練習であろうと観せる人がいるとなるとやっぱり面白い方が良いわけで…。
それに対し『無人島に持っていくなら何を持っていく?』の問いに対し、しばしば『鵜飼』と言われるこの私。大体のものはもしもの時のためにカバンに準備し、いつも大荷物で移動するこの私が即興に強いわけがない。ちなみに、もしもは大抵は起こらない。たまにちょっとしたもしもに出会って、あーこれがあって良かったと思う位だ。最近気づいたのだが、それがなくても、どうにかなっていたものばかり。
話がそれたが、前々から今流行りのディバイジングの類はやっていたのだ。この今で言うディバイジングたる方法は、台本の書き手がアイディアが出ないからやっている行為かと思っていた。
以前、芝居の台本を書いてもらった時も、
『(劇中で)何やりたい?』とか『何着たい?』と聞かれ、
私だって思い付かないから、脚本を頼んでるのよ〜!と思いつつも、
『うーん。私がやった事がない役。セーラー服とか着てもいいかな?』
と適当に答えた文句がそのまま取り入れられ、高校生の制服を着て会場を駆け回る一人芝居作品となった。台本を初めて読んだ時は、あまりの奇想天外さに「なにこれ⁉」︎と思ったが、その一人芝居の上演で栃木県の就職支援のコミュニケーション講師の仕事等々が来たので、私にとっては有難い作品となった。
今回、このディバイジングたる手法を私も作品に取り入れてみようと、シニア劇団スターライトの稽古でもやってみた。 お題は『あったら嬉しい発明品』。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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