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Logo Mark歯を磨く様に演じるお家で舞台+《テレAroma》やりました!

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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先日やった公演はコラボ企画で、オンライン舞台公演&香り《テレAroma》。この《テレAroma》とは今回ご一緒させて頂いた“香りの演出家堀綾子”さんの造語。
「テレホンって遠い所に伝えるって意味じゃない! じゃあそんな言葉はないけれど遠くにアロマを届けるっていう意味で《テレAroma》にする!」この言葉も広がっていくといいなとの思いも込めてスタートした。テレホン…この単語を例に出して話す所も私達らしい。現代だと、テレワークの方が例題として上位にランキングされるんじゃないかな(笑)。
香りでは印象的な思い出がある。それは、海外旅行でマカオに行った時の事。私達が泊まった所はお金持ちの方々が行き交う地域で、ホテルごとにカジノがあり、ホテルチェックイン待ちの10分間に10億飛ばしてしまった、なんて話も聞いた非日常の世界。ホテルを入るとどのホテルもゴージャスで強烈な香りがし、なんか自分も富裕層の仲間になった気がした。日本の柔軟剤の文句にある様な“ふんわり香るフローラル”ではなく、身体に染み付く強烈な匂い。この記憶が今でもそのホテル生活とマカオでの楽しかった思い出をよみがえらせてくれる。
現在は、そんな大好きな海外旅行に行くのは難しい。それじゃあ自宅で海外旅行に行けたら。そこで上海を舞台にした海野十三のSF作品『見えざる敵』を選んだのだ。
当初から香りの使用は決めていたので、まずはお互い作品を読み、その中で私が表現したいものを香りにしてもらう事からスタートした。
お話の舞台である上海は私にとってはゴージャスで妖艶な街。それをお題として、嫌いな人があまり多くない香りを条件に、調合してもらった。そしてその香りが私のイメージするものと一致するかをズームで画面越しに嗅ぎながら打ち合わせをする。
「モワッとしたところはいいんだけど、もう少し…なんていうかなぁ…、色で言ったらもっと紫よりな感じ。」
「暗い世界の話だから、ちょっと茶色系も入れてみたんだけど。」
流石、綾さん!。話の内容的にはそうなんだ。そうなんだよ。
でも、街の明るい部分から始め、暗い部分に気分を急降下させたかったのと、参加者に、豪華な上海旅行に行ってもらいたかったので、あえて“ゴージャス&妖艶”を強調してもらった。綾さんはバックにもやもやした暗い部分がほんのり出てくる様、そこの所は抜かりなく表現してくれた。
香りにあまり詳しくない私は、調合アロマを色で説明しているのだが、それでもわかって頂ける⁉︎ところが、一緒に仕事をしていて面白いし、有難い。
そして次にくるのが、アロマをどんな形で参加者に届けるかだが、費用がかかりすぎては実用的ではないし、あまり貧相なものだと、お話のイメージをかえって壊してしまう。
そこで、アーティスト綾さんが栞に香りを忍ばせ、素敵なメッセージも添えて郵送してくれた。栞には月夜に咲く、月下美人の花が描かれている。この花は、昭和天皇がまだ皇太子だった頃、台湾を訪れた時に、目を奪われた程の美しくも貴重ではかない花で、英語では「A queen of a night(夜の女王)」と呼ばれている花。中国をイメージするものにはよく描かれている。
実際、公演ではオンラインzoom を使い、まず最初にお届けした、アロマ“上海ブレンド”を楽しんで頂き、その余韻から2人の登場人物が活動する裏の世界にドーンと入っていく。私も香りに負けじと四角い枠の中から上半身の動き、表情、人物の声、それにサンプリングパッドを加え、お話の世界を私流に演じさせてもらった。
1公演30分程のものだが、いつも以上にパワーを使いましたよ。
そしてやはり存在感が大きかったのが、《テレAroma》で、
「香りがあることにより、現実の世界から離れられた。」
「上海に行った気がした。」
「香りを開ける時のワクワク感!が良かった。」
などなど、温かいコメントも頂き、オンライン舞台公演+《テレAroma》とのコラボ企画第1弾は無事に終了した感じ。 まぁいくつか課題はあるのだが、1つずつ改善して、今後も続けていきたい企画となった。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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