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Logo Mark歯を磨く様に演じるこの時代と繋がり

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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突然だが、演劇は役者や観客や何か他の物と関わる事が重要になってくる表現で、一人芝居でさえもそれは同じだと思っている。
それなのに、このコロナ時代、なんだか他者と関わらない事が良しとされる様な気がしてならない。
通常生活でのソーシャルディスタンスは良しとして、
“ステージ上でのソーシャルディスタンス”
舞台上に同時に登場する人数は少なめに…なんて考えたり。
また、マスクをして演じたり…。演者は顔を含め身体全体で相手と関わっているのにマスクねぇ。やっぱり残念。
今年の春頃6人位でやった朗読劇では、『これなら役者同士の間隔もとれるね』と舞台上の離れた4ヶ所の場所を決め、そちらに移動しながら少人数で演じたりもした。まあ、それはそれで面白いのだが、やっぱり以前の様な関わりでやりたいと思う。
そして、なるべく一緒に稽古をしなくても済む作品。各自が家で台詞をほぼ入れたらおかしな話、どうにかなる作品の方がこの時代良いのかもしれない。
しかし、あえて来年公演予定のシニア劇団の作品ではコンビネーション重視の作品を作り始めた。台詞はそれほど多くもないのだが、台詞を覚えた上で相手を見て感じて作り出す動きやリズム。また、長い語り台詞をいく人かで割ってあるので、メンバー皆で稽古しないとおかしなリズムになってしまう部分が入っている作品を作り始めた。
その上、小道具などの物を出来るだけ使わず、身体を使って表現をする。
初めはこの方法はどうかと思ったが、意外といけている。役者本人はいたって真面目にやっているはずなのだが、各自が絞り出す表現がなんとも面白くてとても良いのだ。それを見ていて私も楽しくなってくる。
『みんなで一緒に芝居を作り上げたい!』
これは、コロナ時代の私の反動だろうか?
1人で海外旅行に行き、1人でミシュランガイドに載っているフランス料理店に予約を入れ食べに行き、思った時に気兼ねなく行動出来る1人をこよなく愛し、他人に合わせる事が苦手な私が、自分が演出するものには役者がより関われる方法を選んだりしてしまう今日。
そんな時頭に浮かんでくるのが詩人谷川俊太郎の詩『二十億光年の孤独』。
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う…
一部を書いたのだが、気になる方はインターネットなどで調べて是非、読んで欲しい。やっぱり元より人間は人間同士求めあうもの。
今更だが私もいろんな事をやっているなあ。いくつもの朗読講座、シニア劇団、生涯学習センター等に招かれ朗読やコミュニケーションの講師、オンライン公演。
いつやめても誰も何とも思わないかもしれない。もちろん仕事だからやってるのもあるが、ただ単に仕事だからだけではなくて、いろんな所で人との関わりを自分自身求めているんではなかろうか。
そして、これからも生きている間、なんだかんだ関わりを持ち続ける為の私のささやかな準備かもしれない。
タブレット画面の向こうに懐かしい顔が見えたとき、なんかちょっとほっとした先日のオンラインZOOMでの公演。
オンラインでも悪くないけど…、なんだかね…。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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