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Logo Mark歯を磨く様に演じるコロナ禍のプレゼント

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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コロナが流行し表現者にとって受難の時代が来た。なんて書いたが、そうでもなかった。この時代が来なかったら、私にはこんな事は訪れなかったであろう。
昨年の9月、ダンサーの妻木律子さんからお声がけを頂き、急遽大谷石蔵スタジオbe offでアーティスト達のパフォーマンスをやる事になった。メンバーは妻木律子さん、小川倫生君、私。妻木さんはダンスで小川君はギターで私は朗読劇。
3人の合作でパフォーマンスなんて話もあったのだが、やはり一緒に練習するのは難しいとの事で、それぞれ20分の持ち時間での表現となった。
このメンバーはあるライターさんが《コロナ禍とアーティスト》というお題で取材、執筆した面々。本当に、活動は繋がり、波紋の様に広がっていくものですね。
その公演は『アートヴィルス at be off』アートで育む『まち』プロジェクト。妻木さんが企画されたこの公演、助成金を申請し、見事そちらも採択され少しばかり大きな事、いろんな事、人を巻き込む事が出来ることとなった。
会場となる大谷石蔵の換気工事に配信の撮影、これだけでは終わらなかった。
『何かに残しておかないともったいない。』ということから、脚本家で映画監督でもある方に頼んでドキュメンタリー映像を作って後に上映する運びとなった。
その方は映画『金融腐蝕列島・呪縛』で「日本アカデミー賞優秀脚本賞」「キネマ旬報賞 最優秀脚本賞」や映画『誰も守ってくれない』で「モントリオール国際映画祭 最優秀脚本賞」を受賞されていらっしゃる鈴木智監督。
監督は記録映像も使いつつ、自ら取材をされ糸を紡ぐ様に、ドキュメンタリームービーを作り上げていった。
監督の取材時とても印象的だったのがコロナ禍での3者3様の様子。
ダンサーの妻木さんは表現はちょっと的確ではないが、静かに活動していらした。確かにイベント的な物はなく、教室をなさっているので全てが止まったわけではない。
また小川君は音楽活動がメインで他にはCD販売等々。当時、ライブハウスやイベント等での演奏が閉ざされた状態だったので、動きはほぼストップといっても過言ではなかったと思う。
幸い私は朗読教室や小さな会場での朗読劇公演をいくつか抱えていたので、コロナ禍で何割かは減ったがそれでも公演がまったくなくなったわけではなく、同時にオンラインでの公演も始めていたので、割と救われた方だと思う。私に関して言えば、ドキュメンタリー映像を撮っている時、監督に話した様に、
『自分の表現活動の動きを周りに流され、ストップさせるのはたやすいことだが、何か細くてもいいから続けなくちゃいけない。』
そう思っていた。
そんなコロナ禍でのそれぞれの思いも公演記録と合わせて見事に短編のドキュメンタリー映画に詰め込み鈴木監督が仕上げてくださった。
監督についても出来上がった作品を何度か見せていただいたのだが、見るたび見るたび様々な所が修正されていて 『監督もやっぱりアーティスト』と思った次第である。
そして上映会が今年4月にbe offで行われ、これでめでたしめでたしだと思っていたのだが、この続きがあるんです。
このドキュメンタリー映像が映画祭短編部門にノミネート。
“東京ドキュメンタリー映画祭2021”で12月14日上映される事になりました。
これは私にとってコロナ時代の良いプレゼントのひとつになりました。

東京ドキュメンタリー映画祭2021ホームページ

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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