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Logo Mark歯を磨く様に演じる子供達と物語・劇作り【子どもゆめ基金助成活動】

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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久しぶりに子供達と小さな物語・劇を作った。本当に久しぶり。
というのは地域の居場所作りを行なっている団体が子どもゆめ基金に助成金を申請してくださり、それが見事採択され、有難い事に今回講師として携わる事になったからだ。
企画や申請書作りの段階からいろいろ団体の方とお話をさせて頂きスタート。
タイトルは『ブロッコリー物語を作ろう』―学校の歴史や学校の森について学び、お話や劇を作り表現してみようーというもの。
学校には子供達に親しまれている“ブロッコリーの木”と呼ばれるクスノキがある。その木は大木で見上げると自分が包まれているようなそんな感じが私もする。
その木の“子供達をいつも見守り包んでくれている感じ”そしてそれを含め“子供達の心に残したい”と思っていらっしゃる担当者の意向もあり、物語・劇のモチーフは“ブロッコリーの木の精霊”になった。
主催グループの方々に加え、シニア劇団スターライトのメンバーも指導者として加わり、3つのグループになって作成が始まった。
行った順番は
(1) ストーリーを大まかに考える
(2) 登場人物と配役を考える
(3) 動いてみて、セリフを少し言ってみる
  子供の意見が出たら上手く取り入れる
  先生方はストーリーテラー(ナレーター)になるとやりやすい
(4) 大体出来たら動きなどを改善する
こんな感じ。
私の加わったグループは男の子ばかりで、最初からモジモジ動いている子もいたりして『りんごが食べたい』なんて言っていた。
しかし、このモジモジがただのモジモジではなかった。
既にイモムシになりきっていた。
大体の話は早々に虫、サル、人間がブロッコリーの木の精霊にお願いをするストーリーに決まった。
イモムシはりんごが欲しい。サルはブロッコリーの木の中に街を作りたい。人間は悪い木の枝を切らせて欲しいとの事。
そこで精霊役となった私が『ただでは望みは聞けない』と言うと、演じた子供達は貢物を持ってきた。
イモムシは葉っぱ。サルはビール。人間は柿。
ビールをもらった時、試しに味を聞いてみたら
『僕は飲んだ事がないですが、美味しいそうです。』
と彼の生の言葉で精霊の私に台詞をかけてくれた。
小道具も劇団のメンバーが作ってきてくれて…。別グループではメルヘンチックなお話に手作りの橋で色を添えた。
音楽も子供達の劇に入れてくれる様、講師のツルタハルさんにお願いしていたところ、いろいろな楽器持参で練習から来てくださり、本番では即興で音楽や効果音等を入れてくれた。
『練習を見回って、本番ではなんとなく話に合う様に音を入れてね』と簡単に言ってみたものの実際これがなかなか難しいと思うのだが、彼女は何の障害もない様な感じでサラリと入れてくれて、子供達ものって演じていた。
子供たちのイメージもより具体化するのだろう。木の所に向かう子供達の歩くリズムと共に軽やかな木琴のリズムでより軽やかになった。神様へのお礼のダンスも出来た。
子供に『発表には来ないで!』と言われたお母さんも本番ではスマホを構えて我が子の貴重な役者ぶりを撮影、なんてシーンもありました。
結果的には大人も子供もちょっと大変だったかもしれないが、劇を間近で観た事もやった事もない子供達にとって楽しい体験になった様だし、指導者にとっても貴重な体験になりました。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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