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Logo Mark歯を磨く様に演じる文化庁助成事業での公演

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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演劇公演『コメット・イケヤ2021』が大盛況に終演した。企画・製作小劇場“アトリエほんまる”。有難い事に2週目の4公演は予約でほぼ満席となった。
2週にわたっての『コメット・イケヤ2021』。こちらの他にも個人的には別作品での公演や演劇ワークショップを抱えていながらの事ではあったが、私にとっては全く気ぜわしくはなかった。ある意味とても有難い公演だった。
というのは文化庁が行っているARTS for the futureという助成金事業があり、それにアトリエほんまる支配人が必死になって応募し、見事採択され行った公演だったからだ。
このARTS for the futureは、
「新型コロナウイルスにより、文化芸術活動の自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体において、感染対策を十分に実施した上で、積極的に公演等を開催し、文化芸術振興の幅広い担い手を巻き込みつつ、「新たな日常」ウイズコロナ時代における新しい文化芸術活動のイノベーションを図るとともに、活動の持続可能性の強化に資する取組を支援する。」
「Arts for the future事業概要」より。
本当に助成金がこういった演劇公演に使えるのは夢の様だ。
1番の利点が、いろんな方の手を借りることができたこと。役者をはじめとして、舞台美術、製作、動画撮影などなど。
日頃、一人での公演が多く、それに慣れてしまっているので、その一人公演をこなす事は出来るのだが、一人でやっていると全て一人でする事になり、余裕がない。それにかけられる予算が充分に有ればその一部でも誰かに頼んでやって欲しいなとは思っているのだが、そこがなんとも上手くはいかない。
趣味と割り切って表現活動を自分がしていたら簡単にレジャーの代わりと思ってお金を使えるのかもしれない(あくまで私、個人の気持ちで)。しかし、表現活動を仕事として行っているので、やっぱり、収入と支出のバランスは重要視される事項なのだ。
特に製作担当の役割は大きくて、通常最小限の事しか出来ていない私にとってとても考えさせられる状態だった。
担当がそれ専門に進めてくれる。それもいろんなことを考えて。どんな事をやったら面白いかとかも。
パンフレットについてもデザイン的だったし、入場者に配布する“号外新聞”等も作っていた。後者に関しても予算とその専門担当がいなかったら、公演直前に、
『新聞が作りたい!』
などと演出も言わなかったろう。今回はそう言った結果、号外新聞ができた。
それに製作さん、お手伝いさん用のお弁当も面白いお店のを手配してくれて、私も便乗してそのお弁当を頼んでもらった。
いやいや、美味しいお弁当が食べたい!というのではなくて、こんな所まで考える事が出来るなんて素晴らしいという事。私1人で公演をまわしていたら、お弁当なんておそらくいつもの弁当だったんじゃないかなと…。
舞台装置にしても、日頃からの、
『ガッチリ大きな舞台を仕込みたい!』
という思いが叶って、東京方面で活躍されている舞台家さんにプランからお願いし“小劇場ほんまる”の舞台を段差と奥行きのある広々とした舞台へと作り出してくれた。舞台のあらゆる場所をいろんな手放したい物品で飾り、後ろのバック幕近くに通路を作って。
最近の自分たち含め周りの公演を見ているとやはり舞台にかけるお金が少ないのか舞台装置が少なくなってちょっと寂しい気がしていたのだ。
こんないろいろな希望なり何なりが実現出来ているのは勿論最初に話した有難い文化庁の助成金があったからこそ。
しかしこの助成金そうたやすく取れるものでは無い様で、申請したアトリエ ほんまる支配人はとても申請書作りに時間を要し、終わった後には報告書に追われているという。
とりあえず『どうも有難うございます。またお願い致します。』とここで言っておこう。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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