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Logo Mark歯を磨く様に演じるハーブ&カフェFUTAMIでのナチュラルな公演

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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11月14日、久しぶりに大田原市二見カフェでの朗読舞台公演があった。このカフェでの繋がりはカフェがオープンする前に、オーナーの二見さんから、
『カフェが出来たら是非うちでやってもらいたい。』
と声をかけて頂いた事から始まっている。
いつも二見さんが日頃カフェに来てくださる大事なお客様に声をかけてくださっての公演で本当に有難い限り。
自宅で行うZoom公演や自分のところのアトリエで行うのとはまた違った感覚で、キリリと身が引き締まる。
ログハウス調のカフェには感染防止対策として大きなパーテーション状の透明な仕切りが用意されており、彼女が応援しているアーティストのライブなども出来るようになっている。
本当は今年の春に増設した素敵なテラスでの公演予定だったのだが、丁度その時期は緊急事態宣言中でこの11月となった。
カフェに到着すると『駆けつけ1杯!』とご自慢の温かいレモングラスのハーブティーでまずもてなしてくださった。
カフェでは前日まで民泊をやっており、お一人で何もかもなさっている二見さんはお疲れでしょうがお昼の準備にまだまだ忙しい。
それでもここに来るとなんだろう、特別な感覚がする。勿論、それぞれの会場でそれぞれの会場なりの感覚があるのだが…。
大きな窓やガラスの扉からは大自然の木々やちょっとした野原⁉︎が望め、それにオーナーさんの空気が調和しているのかもしれない。なんだかその大自然に自ら溶けていく感じがする。その理由からか通常も遠方からの来客も多い。
今回の作品はそろそろ冬に入ろうとしている時期だが、二見さんのリクエストという事で小泉八雲の『夏の日の夢』。サボテンで作られた楽器“レインスティック”で海のイメージを表現しながらの始まりで、この音も無理に出そうとカフェ周辺に漂っている空気に抗ってしまうと、なんだか異様な空気を作り出しそう。そのなんとも言葉に出来ない感覚と向き合いながら音を作った。
そしてお客様もこのカフェと同じく皆落ち着いた方が多く、ゲストに合わせゆったりと語り演じさせて頂いた。
会場によってはこの作品、音響効果としてタップダンスの簡単なステップを使って音を入れる演出をする時があるのだが、この雰囲気の今回の場合、タップダンスを入れなくて正解だったと思う。そこは日舞の時などに使う足で床を踏みしめ音を出す手法にして音を入れたり、ゆったりとした動きのみで演じた。
透明のパーテーションがあるとはいえ、お客様がすぐ間近にいらっしゃるのでその集中した空気がズシッと突き刺さるようにこちらに向けられる。少し明るめの光線のように演技中ビンビン伝わってくる。気を抜くと一瞬にして壊れそうな厚さの氷をお客様と私が両端を持っているそんな感じ。面白い感覚。それを壊さぬ様、でも充分楽しみながら約30分の作品を終えた。
終演後には皆感想などを一言二言話してくださり、ちょっとした歓談の時間。朝から二見さんが仕込んでくださったカレーライスが出てきて温かいカフェの空気感がかえってきた。
また、公演を知らず、終演後、何年ぶりかにお会いした、私にとって懐かしい方(昔商業劇団にいた時によくドラマスクールに参加してくれた当時は男の子)も偶然いらして、彼の成長ぶりに驚かされた。
『こんなに(心身共に)大きくなって…、私は…』
と心の中で自分を顧みる。
そんな皆様との温かい時間もあっという間に過ぎ、二見さんの、
『今度(の公演)は春ね』
というチャキチャキした言葉で今回の二見さんと私のナチュラルな公演の幕は閉じた。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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