2022/03/04
芝居を始めた20代前半、そんな事は微塵も考えなかった。自分が歳をとり体が思うように動かなくなる日のことを。幸いまだそこそこ身体も動くし、ダンスも出来る。あえてやめておいた方がいいと思うのが、前方宙返りだったりロンダードだったり、アクロバティックな動きだ。怪我の元である。
若い頃、頭の片隅にあったのが、自分の役者としての価値がいつまであるかである。20代の頃は新しく劇団員が入ってもすぐ辞めてくしまうことが多かったので、長年劇団内でもほぼ1番下。なおかつ童顔なので、メインの役ないしそれに準ずる役柄が回ってくることも多かった。どちらかと言うとチヤホヤされていた。若いから。
劇団に入団してすぐの芝居では、幕開きから出ている村娘の一人をほぼ素人の私がやらせていただき、演出には「この子なんだか目立つのよね。」と言われながら必死に演じていた。
その同じ芝居の中で、50代半ばか後半の女性先輩役者がいらっしゃって、芝居の中では亡霊のお姫様役だった。
その芝居をある小学校で公演をした時の事、幕が上り私達が登場した時、子供達から、
『可愛い〜。』
という声援が上がった。おそらく着物を着慣れていない子供達からしたら華やかな衣装をまとった私達がそう見えたのでしょう。それはよろしいのだが、その話が中盤に差し掛かり、その50代半ばから後半の女性先輩役者がスモークに包まれ帯を仕立てた豪華な着物姿で登場した時、子供達は恐ろしい事を口走ったのです。
『ババアー! ババアー!』
とても厳しい先輩だったので、なんて怖いもの知らずな子達なんだと、 その時私は舞台袖で思ったのでありました。
そのほぼ同じ頃、東京へ有名劇団が演っている『人形の家』という作品を観に行きました。その芝居では、先程の先輩役者と同じ位の歳の有名役者さんが新妻として登場し、その夫役がまた彼女よりも明らかに若い男優さんだった。劇中では、彼女が小さなタンバリンを鳴らしながら舞台中央で踊っていて、夫役の男優さんが、
『なんとあなたは小鳥のように可愛いのでしょう。』
と声をかける場なんかもあり、なんとも複雑な思いで20代の私は観ておりました。
さて、そろそろその当時の先輩役者さん方の年齢が近づいてきた。
あえて若作りして、20代の役はしようとは思わないし出来ないでしょうが、表現者として何を観せたらよろしいのか、何かにつけてふと考えたりする。
ある劇場では私より2回り程年上の女優さんが金髪のカツラをかぶり一人芝居で男性役(おそらく青年では)を演じる様だ。私から見るとチラシの写真ではもちろん男性には見えない。残念にもスーパーにいらしているおばちゃん(上品なおば様という感じではない)の髪が金髪になった感じ。どんな心持ちか同性として本音を聞いてみたい。
また一方で、女優白石加代子さんは50歳を超えてからライフワークとなる『百物語』をスタートし、22年続けたそうで現在80歳あたり。これからどこへ向かっていくのか。このまま惰性とは決して言ってほしくない。女性先輩役者様達、いち役者としてどっかに向かって付き進んで欲しい。
男優さんだと『歳を重ねるとやっぱり渋くなっていいね』なんて言われる気がするのだが、女性の場合は…。
無い物ねだりかもしれないが、やっぱり若い方がいいかなぁ。たまに『若さは才能よね』と言ってみたりする。
置いてきたものは戻ってこないので、何はともあれ、
『観に来ると元気が出るんだよね。変な役(いい意味で)が合うよね。』なんて言ってくださる方々がいらっしゃっるので。しょんぼりした姿にはならぬ様に演じようと思う。
日時:3月20日(日) 昼の部15:00 夜の部18:00
入場料:1,000円(学生500円 小学生以下無料)
会場:be off 栃木県宇都宮市吉野1丁目7-10
ドキュメンタリー映像出演:妻木律子 鵜飼雅子 小川倫生 他
当日はこの映画を作った鈴木智監督も交えたトークショーもあります。
予約・問い合わせBEAT CLUB STUDIO(028-908-5080)
準備中