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Logo Mark歯を磨く様に演じる芝居と共に生きる

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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そろそろ自分の公演を初めて中止にしてから、2年が経過する。
それまで芝居公演というのは観客の予約が0なら話は別なのだが、中止にしてはいけないものだと思っていた。その時も勿論既に予約は何件か入っていた。
1、2ヶ月もすれば、以前の様に当たり前に生での公演ができると思い会場の方とも相談して、少し軽い気持ちで中止にした。そして昨今の状況はコロナが収まっていれば公演出来るし、また関係者がコロナに感染していなければ開催出来ると綱渡り状態。やるせないことこの上ない。
20代で主役をやらせて頂いていた時、朝起きたら声が殆どでず、それでも公演があるので演じ、円形舞台の上から一瞬舞台の中に消えた時、喉スプレー薬を使ってまた登場してと、公演をした経験もある。
また、ある日は朝起きたら入団1年目のキャストの男の子がいなくて、でも私以外は大騒ぎなどぜず公演バスは出発し、普通に芝居が行われた。私もその新人役者が抜けた所では別のキャストと一緒に話を進めた。登場人物になりきっているので、私も別段いつもと変わりなく自然と台詞が出てきた。
劇団側も確かな人物に主要キャストを当てているので、こういう時もあまり大騒ぎにはならない。公演があたりまえに毎日毎日行われていくのが普通の生活だった。
そして、自分も主要キャストを任される事も多くなり、自分に当て書きされた台本を受け取ると、私にしか出来ない役(代わりがいない仕事)として思え、それがヤル気ややり甲斐にも繋がっていた。
この様に若い時、舞台と共に生活をしていたので、今でも舞台にいる方が落ち着くし、その反面日常生活は自信がなくていけない。
先日、足利にあるシニア劇団の第10回公演を観に行ってきた。私にとって初のシニア劇団の公演観劇であり、年齢が高い方々がこの状況下で芝居を打つのはとてもハードルが高い様に思え、前々からとても気になっていた。
演目は斎場を舞台としたコメディー劇『煙が目にしみる』。その中に出てくるキーマンが今からあの世に行く亡くなった息子の母親であるお婆ちゃんで、実際シニア劇団なので実年齢もおばあちゃんあたりの年齢の方がなさっていた。詳しく語ると劇中では
『あんたは黙ってらっしゃい。』
と息子にズケズケ言うお婆ちゃんなのだが、舞台を降りた後、お話をさせていただいたら、お婆ちゃんというよりむしろ“お婆ちゃま”という可愛らしくて奥ゆかしい上品な方であった。御年78歳でその芝居の中で最高齢。
それにしてもよく声が出るし、出番も多いし、セルフがはっきりしていてプロンプなんて彼女にいたっては全く縁がなさそうである。
申し訳ないが、年齢が高い方々の芝居公演の話を聞くと、
『(芝居で台詞 を忘れた役者に陰からそっと台詞を教えるはずの)プロンプが観客に聞こえていてね…。』なんて話もよく聞いており、それもしょうがないと思っていた。覚えるの大変だし、小さい声で言ったら聞こえないだろうしと、私なりにシニア劇団はそういうものだと思っていた。でも、これはシニア演劇への冒涜だと知った。
関係者のお話では、彼女のご家庭に悲しい事が起こった時期にこのシニア劇団がスタートしたそう。
『声が大きいのだけが取り柄なんです。』
『台詞を覚えるたびに出来たって自分で思うんです。』
と楽しそうに話していらっしゃったそのお姿ちゃまはとっても78歳には見えず若々しく生き生きとしていた。
不要不急。この不要の二文字を自分がやっている…?? そんな考えが頭をよぎる昨今。この方にとって演劇は決して不要のものではなかったはず。私も78歳になった時この方のようにいたいなと思う。

劇団スターライト第2回公演「見えざる敵」2022年4月24日(日)

令和元年11月11日にスタートした宇都宮のシニア劇団の公演です。
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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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