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Logo Mark連載記事

Logo Mark歯を磨く様に演じるなんとなくじんわりビビッと…

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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「ビビッとくる」これは恋愛においてよく使われる言葉で、一目惚れして結婚に至る。芸能人が結婚会見で口にしたのを聞いた事がある言葉だ。
先日、ちょっと値段のお高めなワンピースを購入した。マネキンに着せられていたその紺色のギャザーの沢山入ったワンピースをギャラリーの店主さんは、
『これ本当に可愛い。でもお値段は可愛く無いですよ。』
なんて説明してくれた。
とりあえず試着してみて何となくいいなと思い購入しようと思った。通常ならほぼ購入しない金額。
『これ、頂いていきます。』と話すと店主さんは驚いた様子で、
『鵜飼さん、清水の舞台から飛び降りるつもりで…。』
なんて話していた。
でも、私としてはそんな勢い込んで買うつもりはなく、
『なんとなくじんわりビビッときた』から購入したのだ。
物事において私の継続するものにはよくある決め方である。
バブル時代、内定を蹴って、そこが蹴った後もうちにこないかと連絡を頂いた時も、なんとなくそこではない気がしたし、就職先を劇団、仕事を役者に決めたのもこの『なんとなくじんわりビビッ』である。
周囲の方には『思い切ったね。』なんて言われる事がしばしばだが、決してそうではない。
なんだろう、この決定方法は…。
その反対で思い切って、それこそ“清水の舞台から飛び降りたつもりで”と自分を奮い立たせ購入したり、決めたりすると私は案外失敗する様である。
そういえば、公演旅行先で思い切って購入したスカートは一度も着なかった。おそらくそれは、旅先でのいろいろなモヤモヤに対しての憂さ晴らしだったのだろう。
人生の節目で、周りから見たら“思い切った決断を私がしようとした時”、勿論この時も勢いとかではなく“なんとなくビビッ”ときたからそうしようと思っているのだが、そんな決断を仕かけている時に厄介なのが親とか近しい親戚とかだ。
『(そんな思い切った決断をして)やっぱり駄目でしたとか、間違いでしたにならないか。絶対将来間違いとなるんじゃないの。』とあたかも脅迫的に尋問してくる。
自分としてはこれまた“なんとなくそう思う”的決断なので、自分の思いが相手の迫力の為に揺らぎそうになり、それを振り切る為、
『いや、絶対そうするんだ。』
と言ってしまう事になる。そんなに絶対したい事という感覚では無いのに。
この“なんとなくじんわりビビッ”的決断を意図的に利用している面もある。
芝居作品の演出をしていて、ここにこの動作を持ってきたら面白いんじゃないかとか、今回の公演でパイプ椅子で大道具を組み立て様と思った時もそうだ。なので、やっぱり理由を聞かれるとちょっと困る。
日常生活これを使っているのが毎日の洋服選び。起きた瞬間なんとなくじんわりビビッときた物を着て行く。洋服選びに時間をかけていると遅刻してしまうというのもあるが、この選択で選んだ服を着て過ごしていると心地よく過ごせる。
話は変わって、マルセル・マルソーと言うパントマイムの天才の話だが、彼はものすごく体が動く方で、授業ではマイムにおける呼吸の大切さを常に言っていたそうだ。最初彼がパントマイムをやっていた時は上手くパントマイムができる理由を考えることなく演じていたようだが、その原因を考えた結果、呼吸が大切だに辿りついたそうだ。
先日のマイムのオンラインレッスンで教えてもらったお話。
私の“なんとなくじんわりビビッ”も自分の中の何かが影響しているのかも知れない。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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