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Logo Mark歯を磨く様に演じる気になる脚本

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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次回やる芝居台本を探しているのだけれど、そういう時ってなかなか見つからない。まだ先だからとのんびり先延ばししているとあっという間に歳月が過ぎ、大変な事になる。勿論、又自分で書いてもいいのだが、今回はなんとなく既成の脚本を選んだ方が良さそうな気がしている。
既成の台本で1本気になる本があり、確かアトリエに置いてある様な気がしていて、1度知人と2人で探してみたが、見当たらず、それでも気になって仕方がない私は今度は1人で探してみたら、なんとあったのだ。
出演者は私を含め8人なので、8人以下の台本で探さなければいけないのだが、どうしてもこの作品が気になって仕方がない。今の世の中便利なもので、登場人物が何人、以前どこの劇団がやって配役は誰、なんてのは簡単にスマホで調べれば出てくる。
それは1989年に扉座が初演した横内健介さんが書いた『ジプシー』という作品。登場人物は16名でなんと倍の必要人数。
なぜ気になるのか不思議ではあるが、実際にその台本を再度読んだら解明するかもしれない。
私の記憶が正しければ、ある若夫婦の建築中の家にジプシー達が来て一悶着ある…とざっくりこんな感じだった。
初めてその作品を手に取ったのは大学卒業後初めて芝居をやる機会を得た時で、この作品『ジプシー』かキャラメルボックスの成井豊が書いた『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』かどちらかをやる事になり、その時は無性に後者がやりたくて、名古屋に住んでいた私は、
『(関東の友人に会うついでに)東京のその劇団の事務所まで、私が脚本を取りに行くから』と言って結局『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』に決まり、公演をし、その翌日、栃木県の塩原市に向け旅立ったのだ。
野生の勘は鋭いと思っている私だが、今やったほうがいいという感覚よりもむしろ、この時の忘れ物が心の何処かに残っているのだろうか…。
何年か前、流木を使うアーティストさんとアロマを調合する仲の良い友人と私と3人で太宰治の『メリイクリスマス』の朗読舞台を作っていた事がある。その時、
『(自分のアイデアで)説明出来ないんだけれど、これがなんとなくいいって事が良くあって、説明出来ないんだけれどもやってみた結果もやっぱり良かったって事多いんだよね。反対意見の人もやっていくうちに、結局自分が言った通りにやってるんだよね。』
という話で3人盛り上がった。
今回もその類だろうか。もし、その脚本を採用するとなると、登場人物を減らし、消えた人物のキーとなる台詞を別の人に言わせたりして辻褄を合わせなければいけない。又はあと8人くらい今回の公演の参加者を募るとか。まぁそれは不可能ではないが難しいだろう。
それはともかくとして、だいぶ昔に描かれた作品であるが、今も通ずる重みのある作品であった事は間違い無いし、キャストも落ち着いた年齢の人達がやった方が良い様な気にさえなってきた。出演者が血気盛んな若き頃に書かれた脚本である。演ずる事に大分携わってきたなあと感慨深い。
私が栃木県に来て2、3年経ったころ、浦和の友人宅で扉座の若手役者と会う機会があって、同じ位の歳だったからとても気軽に話していた。
その時彼が、
『職業欄に役者って書いたら、フリーターって書いてくださいて言われたんですよ。』
と声を大にして言っていた。その頃よりは役者の地位も少しは上がったろう。
とりあえずその扉座、横内健介作『ジプシー』を完読して、我が感覚に従ってみようと思う。

6月12日(日)14:00〜オンラインZOOM 舞台公演 森鴎外『身上話』

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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