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Logo Mark歯を磨く様に演じる肌でみる

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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ベルガモットのアロマオイルをを持ち歩いていた時がある。というのはベルガモットの柑橘系の香りも好きだし、においを嗅ぐとなんだか落ち着くから。アロマのお仕事をしている友人によるとベルガモットは交感神経と副交感神経のバランスを整えてくれるらしく、始終動き回って交感神経優位の私にはベルガモットのオイルがいいと勧めてくれたのもある。
しかし、香りが素敵なベルガモットであるが、昔の辛い時期にこのアロマオイルの入った化粧水を使っていたせいで香を嗅ぐとその時の感覚が蘇ってきてどうも使う気になれない時期もあった。感覚のお話である。
舞台で演じていると観客の集中している感じが肌を通してヒシヒシと伝わってくる。勿論、どう演じていてもなかなかこっちにきてくれない感覚が伝わって来る事もある。視覚でなく肌感覚だ。目が見えるのに肌でみるってのが面白い。
先日芝居の稽古の時に2人組になって1人が目を閉じて、もう1人が目を閉じた人を引っ張って誘導してもらった。視界をシャットアウトされて歩く事がないので最初のうちはなかなか相方が引っ張ってもゆっくりとしか動いてくれない。怖いのだ。終わった後、目を閉じ引っ張られた感想をも聞いてみた。
『天井から向かってくるライトの明かりが閉じた目蓋の上から入ってくる感覚だったり、その光と反対の方向に進んでいる時の感覚が物凄く伝わってきた、と言うより怖かった。』
『歩いて進んでいる時の空気との触れ合いのなんとも言えない感覚が(半袖から出ている)腕に伝わってきた。』
目以外の感覚が敏感に働く。日常その感覚がないのではなく、視覚が優位にたっているだけ。
目の見えない女性で芝居が大好きな方に会った事がある。その方は宇都宮から東京までわざわざ芝居を観に行く事もあり、それほど芝居好きなのだ。彼女、
『最前列の中央の席に座れるなら是非とも宇都宮での芝居も観せて欲しい。』
と言っていた。そして、
『役者がどっちの方に向かって話しているかもわかるし、うつむいて話しているのか顔の角度だってわかるし状況もわかる。』
とも。目の見える私にはちょっと不思議な感じである。
また著者「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」の白鳥さんが去年アトリエほんまるに私どもの芝居を見に来られた。その時ちょっとしたトラブルがあった。おそらく通常の芝居台本を知らない(普通は知らないはず。創作なので)。健常者にはわからないだろう事。
私と男性役者が舞台上にいて、彼が一瞬台詞に戸惑った。私はいつも聞いている台詞なので通常の稽古とは違うとはわかるが、別に大した事でもなかったのでそのまま進めていった。
これを見ていた白鳥さんに後から聞いてみるとその状況が、彼の迷いというか、おそらく芝居の流れとは違った物を全部感じていたそうで、なんとも嘘はつけないものだ。目の見えない白鳥さん、最初は音声ガイド無しにそのまま観劇し、2回目は音声ガイド付きで芝居を楽しんでいた。
芝居の脚本の覚え方にもいろいろあるが、私は台本の台詞もまずは目で覚える。何かを確認する時もじっとそのものを凝視する私。そんな視覚に頼って生活している私にはここまで鋭い感覚は持ち合わせていないが、やっぱり生で表現をする時はYouTubeやオンラインの時には伝わらないものを出しているのだと思うし、出したいと思っている。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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