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Logo Mark歯を磨く様に演じる朗読家の実態

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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最近は『肩書きはどうしましょう』と聞かれる前に既に朗読家、舞台役者の順に書かれる事もままある。
ある会場へ行った時は『朗読やってる方ですよね』と声かけられたこともある。
医者で言うと内科、外科…といろいろ病院前の看板表記に書かれているが、先頭に書かれているものが、その病院の専門だと聞いたこともある。
さて、朗読をやっている事が多い私だが、思い違いをさせている事が有る。それは、
「朗読家だから子供の頃から本を沢山読んでいた。」
という勘違い。
朗読を仕事にしているので、そう思うのは当然と言えば当然だが、それは多大なる思い違いで、私の場合全く本というもの、漫画でさえ読まない子供だった。
今は必要に迫られ本を読む様になり、まずは仕事のための本を読み(私の場合ここのところが声を出して読む朗読となる事が多い)そして、『やー終ったー!』と別の本に持ち代えるて休憩に本を読む。そんな事もする様になった。成長したもんだ。
本の世界に入る事が面白かったり、著者の経験を知れるのが楽しかったりするからだが、今更ながら、子供の時から本を読んでいたらなぁと残念で仕方がない。
読んでこなかったので文章を読むのがとても遅い。大人になってから読みだしたのでまぁ少しは速くなったかもしれないけれども、それでも遅いんじゃないかな。
大学4年生の時の就職活動ではこんなこともあった。
名古屋の放送局の筆記試験を受けたのだが、どうやらその会場で1番遅かったらしく、試験監督に試験中に机をこつかれ、
『君、1番遅いよ。』
と言われた。
『受験者にそんなこと言っちゃだめでしょ。動揺するでしょう!』
と教えてあげたいが、向こうにもおそらく言い分があって、口に出したいほど相当遅かったに違いない。だって普通そんなこと言わないじゃない。
まあその筆記試験は何を間違ったか、割と高得点で合格だったんですけれど…。
そしてそんな学生時代を送った私が、今は子供に読書を進める活動に関わらせていただいている。おかしなものである。
子どもゆめ基金の助成活動で、子どもたちが本に親しむ活動を通じて、自主的に読書活動に取り組む意欲を育む活動である。
先日はその活動で新美南吉の『ごんぎつね』を子供達の前で私が読む予定で用意していたのだが、小学校高学年の子供達4人が読みたいと言ってすぐさま手を上げ、その子供達が順番に低学年の前で読んでくれた。
その中にはすらすらと文章が読める子もいたのだが、そうでない子もいた。
すらすらと読めない子は本が好きと言うより、発表するのが好きなのかもしれない。でもそれをきっかけに、本をより朗読したり、読むようになったら、もっと上手になるんだろうし、より本を好きになるんだろうと思う。
本を読み慣れていなかった私も役者を始めたばかりの時には、演出家先生に、
『人前で初見で本を読んではいかん!』
と言われていた。役者としてプロで仕事をしているのに、あまりにも子供の時から本を読まなかったせいで、すらすらと文章が読めなかったからだ。
それが今では朗読を仕事にしている。もちろん朗読の練習回数を数えたらキリがない。
先日はハロウィンのイベントで、オンラインでブックトークをした。自分の持ってきたお勧めの本のオススメ理由を視聴者にお話しするイベントで、全くハロウィンとは関係ないのだが、なんだかとても面白かったし視聴者も楽しんでくれたらしい。
私の場合、いい大人になってから朗読の仕事を通して読書(朗読)という有難い楽しみを得た訳だ。

鵜飼雅子一人芝居『モノロオグ』

11月27日(日) 14:40開場、15:00開演 お申込みは、携帯電話のメールアドレスはPCからのメールが受け取れないことがありますので、下記のものをご記入の上、PCメールでお申込みください。
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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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