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Logo Mark歯を磨く様に演じる子どもゆめ基金助成活動を終えて

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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先日《子どもゆめ基金助成活動》放課後ブック楽校〜本を楽しむ4日間〜が終了した。
昨年から地域の居場所運営会「えん」主催で始まったこちらの活動。今年も昨年に続き全日程関わらせて頂いた。
今回は本をモチーフにした活動という事で、現代の小学生がどれだけ本に興味を持っているのだろう(持っていないのではないか)、参加者が集まらないのではないかと不安だった。
と言うのは、私の知人の子供や、知り合いの学童などではYouTubeを見て時間を過ごしている。そんな現代っ子が自分で読んだりしなければならない本など面倒だし、面白いと感じないんじゃないかと思っていたからだ。これが全てではないと願ってはいる。
かくいう自分も全く本を読まない子供で、おそらくそんな講座があっても全然興味を示さなかったであろう。
しかし募集をしてみると、運営担当者のお力も凄いのだが、低学年を中心に20人弱の子供達が集まった。これには驚いた。
内容は、
(1) 専門家の読み聞かせ等を聞いたり
(2) 本に関する造作物をつくったり
(3) センターで開催している朗読サークルのメンバーの作った紙芝居を読んだり
(4) 自分で選んだ動物に関連する絵本を読んで発表したり
バラエティー豊富なメニューだった。
紙芝居の時は、計画では私が説明付きで読む予定だったが、驚いた事に高学年の子供達が“皆んなの前で読みたい”という。そこで4人の子供達が代わる代わる読み、私は紙芝居をめくっていた。
もっとも読みたいといったすべての子供達が、読みが上手くすらすらと読めたわけではない。途中で引っかかったり、読み方がわからないのを別の子に教えてもらったりしながら読んでいた。
それを低学年の子達は見ている。さすがにちょっと長い作品『ごんぎつね』だったので、最後のほうは低学年は集中力がなくなった様だが、それでも最初のうちはお兄さんお姉さんたちの読みに食いついていた。
『からすのパンやさん』『パンどろぼう』の絵本を読んだ後で紙粘土で自分の好きなパンを作った時は、打合せ時にはこれはすぐ飽きてしまうのではないかと思っていたが、実際やってみたら集中しすぎてなかなか終了したくなさそうだった。
これは本とは違うじゃないかと思われるかもしれないが、何がきっかけで物事を好きになるかはわからない。この時も1年生なのにすごく上手なホットドック、パセリもあり、からしもケチャップも付いているホットドッグを作っている男の子がいた。それをみんなが褒め大人も褒めていた。こんな褒められた体験から『あの本読んだ時(あの講座の時)皆んなに褒められた』って本が好きになるかもしれない。
講座の最終回は子供達が選んだ本を自ら読む事になっていた。おそらく読みたくないとぐずる子もいるんじゃないかと思っていたが、参加者全員が気持ちよく読んでいた。全作品、最初から最後まで読めるほど時間がなかったので、ほんの1部、好きな箇所を中心に読むことにした。中にはこの本は短いから全部読みたいと主張していた1年生の子もいた。どの子もこの本のここが好きと自分の意見もはっきりと発表していた。
また、友達と2人で読む男の子もいて、彼らは前もって自分で読むパート、相手が読むパート、2人一緒に読むパートなどを事前に区分けして、本とは別に資料を持って読んでいた。おそらく2人で一生懸命練習したんだろう。
そんな姿を見ていると、
『自分ももう一度小学生に戻ってこの中でやってみたい』
なんて思う。もちろん上手く読めないだろうし、なかなか読み進まないと思う。でもこの子達も全員が上手いわけではなく読みたいと思うからやっているわけだし、それを他の子はちゃんと聞いている。
そんな環境で私も育ったら、もう少し子供時代に本を読んでいたろうし、本の世界を楽しめたんじゃないかと思う。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
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