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Logo Mark歯を磨く様に演じるChatGPTで演劇公演⁉︎

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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これを演劇と言うのかいまいち疑問?なところではありますが、演劇祭の1コマだったので、まあそういう事で。 先日、宇都宮市内にあるサザンクロスホールで短編演劇祭が行われた。20分位のものを数団体が公演し、演劇を見慣れていない方にも見やすい公演だったのではないかと思う。
その中で、1つとても気になった演目があった。
その団体も実験的公演とアナウンスしていたし、確かに私もそう思う。どちらかというとショウの様な感じだった。
それは今世間で注目されているChatGPTを用いた公演であった。
どの様にやっていたかと言うと、舞台上には【ChatGPTに台詞(質問等)を入力する人】【その台詞を言う人】【ChatGPTからかえってきた台詞(返答)を言う人】がいて、舞台後方のスクリーンには入力台詞と返答台詞が出てきたChatGPTの画面が主に映されており、1つの演目がスタートする時などは、客席後方でドラキュラ城の案内人の様なメイクをした機械かパソコンを操作する人が映し出されていた。この方もこのショーを盛り上げる重要な登場人物だった。
さてこの公演、どんなだったかと言うと、面白かった…、いや、興味深かったと言うのが最初にでてくる感想。
芝居というものはとてもアナログなものだと思うのだが、そんなアナログの世界に最先端の技術が入ってきてなんとも複雑な心持ちであった。
昔から台詞の行間を読めと言われてきたし、台詞だけでなく体もその時の状態であって初めて言葉が出る。そうすると台詞に重みが出て、観客に伝わりやすいと思っている。
口先だけで台詞を言ってしまうとその台詞がでた状況等が伝わらないし、軽々しいものになる。
また、役者の身体の一部、動かしやすい腕や手でさえ、身体の状態と合致していなければ、薄っぺらなオカシナものになってしまう。
まあ、私が超アナログな人間だから複雑な感覚になるのかもしれない。
さてChatGPTだが、問いかけたり何か言ったりすると、ちゃんと真面目に答えてくれる。ずっと会話していると、そんなに丁寧に答えてくれなくていいよと思う程。
『どうしてそうなの?』
と聞いたら、
『うーん。なんとなくね。』
『ふーん。』
でいい時も現実の会話では多い。とりあえず聞いた本人でさえ、なんとなく聞いてみた、なんて事もよくある(ちなみにこれが芝居の中なら重要な台詞でないと言うのではなく、その時の登場人物の心情を表していたりするので、かえって重要な台詞であったりもする) 。
僅か数文字の台詞の返しが膨大な量の台詞?文?になって返ってくる。少しするとChatGPTの出した台詞を話す人が言葉に出すのが追いつかない位。
それが幾度となく続く。
また、感情や感覚的な事は苦手らしい。
これに関する返答には違和感があり、ちょっとクスッとしてしまう。
これはChatGPTに対してまだ上から目線でいられる今のうちだからかもしれない。
こういう文明の力の発達はものすごい勢いで進んでいる。あと数ヶ月後にはChatGPTに、
『凄ーい!なんでそうなの?』
と聞いたら、
『まあね。』
と上から目線で答えてくれる様になっているかもしれない。
私も試しにChatGPTを使ってみた。
“宇都宮をモチーフにした短編小説を書いて”とお願いしたら、数十秒のうちに宇都宮駅やら昔の県庁やらが出てくる作品が出来上がった。まあ、東野圭吾の様な伏線の複雑なものではないが。
同じお願いをまたしてみた。あっという間にまた違う作品が出来上がった。
台本を書くのに苦労している私はなんとも言葉が出ない…。

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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