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Logo Mark連載記事

Logo Mark歯を磨く様に演じる衣装、コスチューム、コスプレイヤー

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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宇都宮でアニメフェスタが開催され、予想していた通り大賑わい。早朝イベントスタート何時間も前から入り口のところでキャラクターのハッピーを着た人達が並んでいる。仕事で急いでいる私が、
『時間間違えた!? 仕事遅れた!?』
と一瞬焦るくらい。私がスタートさせないとラジオ放送が始まらず、放送事故になる。
アニメフェス恐るべし!
私の放送が終了した10時頃には溢れんばかりの人、人、人。コスプレイヤーも様々な姿で登場している。人との間隔をとり、なんてのはここではもう存在しない。イベント会場は寿司詰めだ。
“コスプレイヤーさん達、なんだか楽しそう”
似た様な格好をした事がない訳ではないが、何故だか私はコスプレイヤーの方々に声をかけてみたいのだが、かけられない。
異世界にいらっしゃる様に私には映るからだろうか?実際、声をかけたって道を歩いている普通の人と同じくらい普通だろう。キャラクターの衣装を着てはいるが、通常は日常生活を過ごしている普通の人なのだから。
カメラを抱えた人々はお好みのキャラクターの衣装を着た人に、
『いいですか?』
と気軽に声をかけ、それに答えてキャラクターなりのポーズをとって応じているコスプレイヤーさん。
私も思い切っていろいろ聞いてみたいのだが、どうしても聞けない。だから遠まきに見ている。
やっぱり話をする時はその人の通常の話し方みたい。
これが私がどうしても聞けない理由の感じがする。
というのは衣装、私の場合芝居の中の登場人物の衣装な訳だが、それを着るとスイッチが入ってしまって、通常の自分の性格で話をするのは恥ずかしいというか、かえって照れくさい。もう自分じゃないんだし。自分でイメージしたそのキャラクターの状態の話しっぷりだったり、声のトーンだっり、目つきだったり、立ち方だったりする。昔言われたことがあるのだが比較的それが強いらしい。
おそらく私が『あの〜』と声をかけたら『なんだい』とコスプレのキャラクターで返答してくれたら話かけられる気がする。見た目と会話した時のギャップがあって私は何故だか怖い様だ。いや、声をかけてはまずい感覚がする。
『この車の前で写真とってもいいですか?』
と日常のトーンで横の自衛隊の車の前で撮影していたコスプレしていた人にひょいと問いかけも出来たのだが、どうしても距離を感じ出来ずじまいだった。
それにしても、彼らの衣装のクオリティは高く、カツラから足の先まで揃えている。流石である。年々完成度が増している。
1年間にこの衣装はどの位登場するのだろうか?
いや、費用対効果なんて雑な考えは別世界のもの。
私が衣装(経費)を作って本番を迎える感覚とは当たりまえだが全く違う。
黒いコスチュームを着、白いレースのついた黒い傘を傾けた、アイドルではない普通の女の子がカメラを向けられ、ポーズをとっている。このイベント何処かかしこで男女関係なくこの情景が繰り広げられている。いろんなアニメキャラがこの地で集合し、ある意味ワンダーランド。
コスプレをする彼らにとってはその装いは新しいドレスを羽織るあのワクワクした感覚以上のものなのだろう。
それとは対照で、私にとっての衣装は仕事着であり、ユニフォームであり、戦闘着。

その次の日は予報通り土砂降りの雨だった。でも彼らはそんな雨にも負けず華々しく登場しワンダーランドを作り上げている。こちらも予想通りだ。

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鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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