[ Spinart(スピナート) ] - あらゆる表現者・アーティストと出逢えるサイト

Logo Mark連載記事

Logo Mark歯を磨く様に演じる凄い!植物園の大道具屋さん

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

続きを読む

最近の公演でパントマイムを多用している私。というのもパントマイムは、沢山の大道具や小道具を作らなくてもいいし、公演先にも軽自動車1台、私1人で出かけていくことも出来、とても身軽で助かる。しかし、その分観客が世界を広げられるパフォーマンスが必要になってくる訳だが…。
そんな身軽さも好きだが、素敵に大きな舞台をガッチリとこれでもかと所狭しと大道具で飾るのにも憧れる。豪華な城があって煌びやかな王座があって、テーブルには綺麗な燭台があって。そんなところでシェイクスピアの作品なんかいいんじゃない⁉︎としばしば思う。
しかしその為には相当の“経費”がかかってくるので、ちょっと考えてしまう。数回きりの公演、それが終わったらほぼ大道具は廃棄。まだ使える大きめのベニアや角材のみ、分解して再利用。
大道具とはそんなもんよね。
さて今春、人生初となるヒスイカズラ(マメ亜科に分類される常緑つる性植物で翡翠色の綺麗な花が咲く)を見に栃木市岩舟町にある〈とちぎ花センター〉に行った。予想通り1mを超える花房が見事で、帰りにはほぼその日最後の入館者だった私は「好きなだけ(ヒスイカズラの花を)持っていっていいよ。」の言葉に甘え5、6輪頂いてしばらく家で水に浮かせて楽しんでいた。そんないきさつもあり、とちぎ花センターのTwitter情報を頻繁にチェックする様になった。
さて、先月そこで紫陽花の企画展があり、紫陽花一杯の会場に来場者も歩ける白いランウェイを作ったという。Twitterにはこう書いてあった。
『#あなたが主役アジサイランウェイ #モデル気分で歩くもよし #デザイナー気分で歩くもよし #なんならターンしてもよし #ダイブはご遠慮ください 』
ちなみにタイトルはパリコレならぬ“アジコレ”。
見た目思いっきり芝居の舞台“花道”だ。
私が行く時には風に揺らぐワンピースを着、ヒール高めのパンプスを履き、なんならカメラスタンドを持参し動画撮影!と意気込んでいたのだが、あいにく行けたのが終わった翌週で、別の企画展が始まっていた。
その時このランウェイについて花センターのスタッフさんに聞いたら(作成者はその日はお休み)、作成者はだいぶ年齢が上の方で、なんでもこなす学校で言ったら用務員さんの様な方だそうで、このランウェイについて、
「運ぶ為には軽く作らなければいけないのだが、人が歩くので安全に作らなければいけない。しかし、企画展の間だけもてば良い…」
なんて事を話していたそうだ。
そうなんです。私もその点に関してTwitter画像を見て思っていた。この要件は案外難しいのだ。
以前大工さんに芝居の大道具を作ってもらった事がある。素晴らしく素敵な出来なのだが、なんせ素晴らしく重くて芝居中にその道具を運ばねばならなかった先輩から「重過ぎ!」と嘆きの声がたびたびおこった事がある。
また、元大工の劇団員と大道具を作っていた時、彼と柱に打ち付ける釘の間隔を争った事もある。
元大工『もっと間隔狭く釘打って!』
私『だってこれ終わったら壊すんだから!』
さて、とちぎ花センターのアジサイの企画展は終わったのでランウェイはどうやら分解された様だが、新しい「木の実」の企画展もスタートし、これまた素晴らしい大道具が目白押し。
段ボールを使った大きめの木。段ボールを使うと下手したら見劣りする物になったりするのだが、なかなかの代物。
また、よく観光地にある顔をはめて記念撮影するパネル。これも一捻りされていて面白い。
顔はめのものは〈まつぼっくりマン〉バージョンもあり沢山のまつぼっくりが厚みのある発泡スチロールに装飾されていて、力作。
こんな大道具等のいろいろを友人に力説していたら「何しに植物園に行ったの?」と不思議がられた。
『勿論、企画展と装置を見に行ったのよ。』

宇都宮のシニア劇団スターライト劇団員募集中!

問い合わせ、申込は下記のメールまでどうぞ。
メール

この記事への感想はこちらへどうぞ

この記事への感想を送る


鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

続きを読む