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Logo Mark歯を磨く様に演じる令和版二宮金次郎だなぁと時々思う

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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仕事の仕方なのだが、ちょとした趣味や遊びの様に仕事をこなす。こなすという程容易いものばかりではないが、なんら適当な言葉が見当たらないのでそちらで代用した。
さて、今日も朝のうちに一仕事を終え、好きなフランス料理店でランチをし、そのあとカフェで旬の桃のケーキを頂こうと計画していた。なんら仕事以外がメインに聞こえるが、勿論メインディッシュはあくまで仕事。
早朝から目覚め自宅の椅子にドンと座り台詞覚えをスタートするのだが、なかなかはかどらない。元々自宅の机にキッチリ座って覚えるのは不得意なのである。というのはこの状態では頭の中に台詞という活字をそっと置いていく感じでちっとも身に入らない。
私の場合、身体全体の筋肉、皮膚、その他全てのものが、微妙に共鳴してその結果台詞が身につくからなのかもしれない。最近その感覚が凄く実感されて面白いなと思ったりする。
だから、あらかた台詞に目を通した後、外を歩いたりして覚えたい。
しかし、本日はまだまだ早朝である。外に出て歩いてみる時間にはどうかと思う。私の朝は案外早い。
先日は夕方近く、放送の仕事の合間に、台本を持ち街に繰り出した。その日はオリオンスクエアでビールのイベントがあり、コロナの5類以降の比較的大きなお酒のイベントで金曜日の夕方らしく、音楽ありトークありで随分盛り上がっていた。
その周辺をA5サイズの台本を脇に抱え持ち、不安定な所のみ見返し、ムニャムニャ台詞を呟きながら歩く。瞬時に覚えられる訳ではないが、ジンワリ身体に台詞を含めた感覚が染み渡っていく感じが心地良い。誰も私の念仏には気づいていない。
こうして歩いていると自分は薪を背負い、歩きながら本を読んでいる二宮金次郎の様だと思い、可笑しくなる(補足をしておくが彼程ガッチリは本を見ていない。本から目が放せない状態のときは家や外の何処かベンチ等に座っている)。この覚え方は台詞に限らずいい方法だと思う。頭と身体の感覚を同時に使い覚えているので、後々引っ張り出しやすい。確か記憶法としてあったんじゃないかな。
さて、二宮金次郎も今や肩身が狭くなってしまった。自分の子供の頃必ずと言っていい程、小学校の敷地に立っていた二宮金次郎像が撤去されている話を前に聞いた。
その背景には、「児童の教育方針にそぐわない」「子どもが働く姿を勧めることはできない」「戦時教育の名残という指摘」「『歩いて本を読むのは危険』という保護者の声」などもあるという(『毎日新聞』2012年1月25日付)。
また、今の時代を反映して、二宮金次郎像が「歩きながらスマートフォンを操作する行為を肯定しかねない」との事で座った二宮金次郎像も登場。
なんとも世知辛い世の中になってしまったものだ。
街を歩きながらムニャムニャ台本を口ずさんでいる人は自分以外に見た事はないが、例えば家では仕事が捗らないので、カフェに行って仕事をする、なんて人も多い。カフェのちょとした雑音が仕事を進ませる要素の一部になっている様で、これにも大いに同感である。
また家にいると別の邪魔が入ったりする。
『あー洗濯しなきゃ!』とか『冷蔵庫にだいぶ前に買った野菜があるがどうしよう。』とか。
ちょっとだけと思い料理などし始めたら最悪である。気がせいているので大したものは出来ないし、愛情がこもっていないので気持ち的に美味しくない。その上、後片付けまでもれなくついてくる。
シンクが皿やお鍋、包丁、まな板で溢れ、『片付けなきゃ!』になり、谷川俊太郎の作った堂々巡りの“きりなしうた”状態に陥る。
結局はその場を逃げ出す様に台本を掴み、家を後にする事になる。
あー、やっぱり私は令和版二宮金次郎みたいだなぁと可笑しくなる。

8月24日 海野十三『ある宇宙塵の秘密』

8月24日(木) 13:30開演。
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