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Logo Mark歯を磨く様に演じる人形劇団くぐつさんの庵で宮沢賢治の話

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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凄く素敵な事を始められたなと春から気になっていた企画がありました。それは鹿沼に拠点を置く人形劇団くぐつさんのもので、タイトルは「くぐつの楽校 宮沢賢治・童話の世界」。毎月第4土曜日開催で全120回、なんと驚きの10年計画なのだ。
“童話作家、宮沢賢治が銀河鉄道に乗って銀河ステーションを出発してから今年で90年…さあ、皆で一緒に彼の全童話を味わい楽しみながら2033年の終着駅に向かって銀河鉄道の旅を初めませんか?”
とチラシにはそう綴られている。
その長〜い催しにも惹かれるが、それを企画したくぐつの小川守さんが、それをやる事にむしろ惹かれるのだ。
2014年にも劇団の先輩と2人でそちらにお招きいただき、賢治の作品を朗読した事があるが、その時も小川守さんは面白い演出を行って観客や私等を楽しませ進行していた。それがなんて言おうか、いやらしくなく、全く癒し系キャラではないのだが、ホッコリさせるのだ。
通常人形劇をされているので、人より人形が目立ちそうなものなのだが、守さんはとても目立つ。人形と共に三味線抱え舞台に登場した事もあるし、 芸事の先輩にそう言うのは申し訳ないが、彼の場合そうした方がやはり面白いと私も思う。
そして今年の7月初め、アトリエに伺った時、
『鵜飼さんに(くぐつの楽校 宮沢賢治・童話の世界の)声をかけようと思っていたんだよ。』
と言われ、『待ってました!』で即OK。
『鵜飼さんも短いの1本読んで。』という事で7月22日午前の部(小学生親子向け)に伺う事になった。
しかし、小川守さんと別作品ではあるが一緒に行うので、どの作品にしようかといつになく長々と悩み、結果、オノマトペや音や景色が綺麗にイメージ出来ると思われる『やまなし』を選んだ。
そしてただ読むのではよろしくないだろうと、急遽缶に水を入れ、2つの缶をつなぎ、水音を出す楽器を作ったりもしたが、結果は通常使用しているサンプリングパッドで蟹がいる川をイメージさせる音を入れる事にした。これが前日の深夜。夜のラジオ放送の仕事を終えてから、部屋でパンパン、パッドを叩いていた。
当日は小川さんのウクレレ演奏で、宮沢賢治の歌から入り、私、小川さん、私の順で読むことになった。
このウクレレ演奏&歌で、もうすでにいい意味で力の抜けた守ワールドの空気が漂っている。流石ですね。
力を抜くのはあまり得意でない私は、私なりの正当なやり方で綺麗に作品を描いたつもり。
作品(表現)も対照的で、小川さんの読んだ「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」は難しい話のようだが、彼にかかると小さな子供の心もがっしりとらえるのだ。
ダンボールで作った人形が何体も登場し、ダンボールで出来た小道具もあって、話の中で剣で切られる予定の人形には細工がしてあり、
『どっちがやっつけられると思う?』
『こっち!』
『(ダンボールが)切れてるところ見えちゃった?』
なんていう子供との会話もちりばめられている。
また、物語の途中でダンボールの机や椅子をいったん登場させたのだが、間違えていた様で、
『これはまだ登場しないねぇ。』と堂々と片付けながら普通に話を進めていく。これは間違ったのだが間違いじゃない。むしろ話に色を添える蕎麦の薬味の様な感じ。
また、小さな子供がお話に飽きそうなタイミングで、また自然に掴みにかかる。
場数と言えばそれまでだが、そこのところはやっぱり上手いなあと思う。
10年間開催予定の素敵企画なので、また近々お邪魔したいと思っている。

8月24日 海野十三『ある宇宙塵の秘密』

8月24日(木) 13:30開演。
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