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Logo Mark歯を磨く様に演じる夏の日には怖いもの!?

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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小中学生の頃、夏休みになると心霊・怪奇番組『あなたの知らない世界』を必ずと言っていいほど楽しみに観ていた。
しかし、もっぱら怪談的なものは苦手で、番組を見たは見たで、その後決まって何日かは夜になると一人で電気のついていない部屋に入るのがとても恐ろしかった記憶がある。
そして大人になった今も、夏になると “怪談”のふた文字が私の守備範囲のところにも登場してくる。
私が朗読舞台を始めた時も確か初公演が夏で、主催の方との演目打合せの時にもやはり“怪談”的なものがいいなんて話が出た。
その時の私は練習時一人なので、怖い話は避けたく、
『なんか不思議な話がいいんじゃない⁉︎』
と逃げたのだった。
しかし、もともと本に詳しい主催者は素早くインターネット上の電子図書館から小泉八雲の作品を探り出した。
私はそれまで小泉八雲なんてよく知らず、御縁が無いとばかり思っていたのだが、実は彼、『耳なし芳一の話』『狢』『雪女』等日本の怪談を多く作品に書いていたのだった。
その中でも怖いというより不思議な話で、もっとも小泉八雲が好きだったという浦島伝説をモチーフにした作品『夏の日の夢』を初公演作品として取り上げる事となった。
小泉八雲、後に日本国籍をとるが、もとはギリシャ生まれのイギリス人、生まれた時から日本人として育ってきた者とはやっぱり違うなとつくづく作品を通して思う。
彼の物語には日本の自然が美しく強調され描かれている。ワクワクしたり、ドキドキしたり、子供の様に心を動かしている様子がよく伝わってくる。おそらく普通の日本の田舎の港町に暮らす人々だったら、海や山やいつも見ている何気ない風景にここまで気をとめないんじゃないかと思う。
稽古を開始した当初は、表現というより作品を読み、どちらかというと物語を観客に伝えるのが主になっていたが、毎年の様に繰り返されるこちらの作品の公演により最近は、日本好きのラフカディオ・ハーンがこの物語を話す、彼を表現し演じる事も楽しくなってきた。
でも、最初はこの方の文章はとても読みづらかった。
ひとつの物事にツラツラと説明がついている。これが特別な物事に対しての説明ではないんです。
例えば “長浜の村は、道路の近くの緑の崖の麓にあって、杉の木立の陰になった岩の池の周りに、全部で十二軒ばかりの茅葺き屋根の農家が散在している。”
『え!藁葺き屋根が沢山ある長浜村でいいじゃない!』って作品に突っ込んでたりしていた。
そこがやっぱり日本の自然を愛し日本に帰化した人間と、もともと日本人であった人とは違うんでしょうね。
そんな彼をちょっとオーバーに演じつつ夏の公演を楽しんだのである。
話は変わるが、今、宇都宮の中心部にあるオリオン通りのACプラザで、夏恒例のお化け屋敷が開催されている。今年で第10回目だそうで、こちらは私も毎年の様に楽しみにしている。
ここは私の様に怖がりでも割と大丈夫、というより舞台や道具を作るのにとても参考になるし興味深いのである。
例えば、ここの盛り上がりを踏むとここの人形が動くんだなとか、ここのセンサーの前を通ると丸い透明のプラスチックの所に人形が水を吹き出すしかけになっているんだなと良くわかる。怖い物が苦手な子供なんかはその盛り上がりを踏まず、センサーをすり抜け通って行ったりすると係りの方が笑っていた。こうなるとなぜお化け屋敷にきたんだ??とはなるが、仕掛けがとてもわかりやすくていい。
昨年はすいている時間にそちらに訪れた。じっくり人形だの背景だの、作りを観察していたら、あまりに出てくるのが遅い私を心配して(恐怖で立ちすくんでいるのではないかと)、係りの方がゴール地点から迎えに来てくれた。
そして4年ぶりに行われたふるさと宮祭りでは宇都宮の中心街はこんなに人がいるのかと思う程多くの人出で賑わい、そのお化け屋敷も例にもれず東京ディズニーランドのような長蛇の列ができていた。
やっぱり日本の夏には今でも“怖い物”が人気の様ですね。

8月24日 海野十三『ある宇宙塵の秘密』

8月24日(木) 13:30開演。
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