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Logo Mark歯を磨く様に演じる好きな物に対する熱量はどんなの?

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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ラジオ放送する直前、パーソナリティの映画大好き男子が好きな映画に対する熱量の話をし出した。
『映画好きの人と話をしていて、彼は映画について物凄く熱く語っているのに、自分は聞くだけで何も言えず、その人同様に熱く盛り上がれなかった。なぜだろう。熱が冷めたのか⁉︎ いや、映画は大好きだ。これからもっと好きだと熱く語った方がいいのか。』なんて少々頭を傾げていた。
そして、その疑問がこちらに向けられた。
『鵜飼さんはお芝居が好きじゃないですか。熱く語ったりします?』と。
『私の場合は、うん、熱く語らない。』とまず即答。
口下手なのもあるし(口下手がお芝居を始めた理由の1つ)。芝居は当たり前にするべき“仕事”でもあるし、作品作りは1人の事が多いし…。
しかし、昔の演劇人は夜、夜中までお酒を片手に語っていたという話も聞く。その映像も簡単に頭に描ける。話ながら道具の材料に使っていた竹の端切れに酒をいれて飲んだ、なんて話も先輩から聞いた。
昔、泊まりで稽古をつけに来た振り付けの先生が、稽古の後なかなか語りが終わらず寝床に行ってくれなかった。
劇団員達は眠くても先生のお話に付き合い、接待をしなくてはいけない。もし、どうしてもそこから抜けたい場合は、年功序列で抜ける事が可能。だが当時の私は下から数えた方が早かったので、どうあっても抜けられない。私達はなんとか早く寝てもらいたく、お風呂を勧めたり、明日の朝の心配を口にしてみたりいろいろな手を使うのだが、
『僕、まだ宵の口。』
というなんとも脳天気な先生の一言で私達は一旦は諦めモードになる。それが幾度となく繰り返された。
これは振り付けの先生の場合だが、外部の演出家だったり音楽家でもあまり変わらない。半分閉じかけた目を頑張って開けつつ、生きているか死んでいるかわからない様な状態で、とりあえず相槌だけは打っておく。今となっては懐かしい思い出だ。
さて、私の場合の熱量だが、外に向けて放つのではなく、自分の身体の中にモクモクとマグマの様に燃えさせながら、自分の技術を鍛錬していく方向に向けられる様な気がする。それが楽しい。新しい出来る事が1つ増えて。
それとは対象だが、皆んな凄い熱量だなと新ためて思い知らされた事があった。それは鉄道番組のミキサーを担当している時だ。
番組中、スタジオにいるのはパーソナリティーとナビゲーターの2人で、通常ならスタジオにいるはずのもう1人はオンラインzoomを使って2人と共に放送していた。 鉄道番組は55分番組なのに、番組中に読みきれないほど沢山のメッセージがくる。勿論遠方からも聞いていて送って来る。パーソナリティーやナビゲーターも特にアイドルや人気俳優がやっている訳ではなく、普通の学生や社会人でリスナーと同じなのだが。
ちょうど放送時はお盆時期だったり、青春18切符が使えたりする時期だったので「東海地方への混雑回避にはどこどこ線の何々で乗り換えて」だの。「〇〇へ行くのにこっち周りの行き方とあっち周りの行き方があって距離としては、たかが15kmしか違わないのに、鈍行で行くと2時間位違う」とか。「どこどこで列車を撮影した時はホームに沢山撮影者がいて、自分は近くの歩道橋から望遠レンズで撮っていた。頭脳戦でいかなきゃね。」などなどひっきりなしに熱くメッセージを交え語っている。全く鉄道に詳しくない私にもその熱さが伝わって来た。
まるで、見えないリスナーがスタジオ内にいて、パーソナリティーとナビと一緒にみんなでマイクを囲んでいる、そんな幻想が見えそうである。
この日も何通かメッセージが読みきれず放送終了時間がきてしまった。
なんとも熱い55分間に驚く私であった。

8月24日 海野十三『ある宇宙塵の秘密』

8月24日(木) 13:30開演。
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