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Logo Mark歯を磨く様に演じる芝居とインスタレーション

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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“インスタレーション”、この言葉をここ数年、聞いて又作品を見てなんとなくわかってきたつもりである。
最初に自覚して見たのが、国指定重要文化財の日本家屋の2階の畳の間に沢山の本型の説明文が立ててある作品で、大まかな説明はあるものの、
「これはどうみるのだ???」
とインスタレーションを見慣れていない私は少々困惑した。
自覚と書いたのはインスタレーションという名詞が作品に使われていなかった過去の作品も多く、最近になってインスタレーションと説明に書かれていたり、「これはインスタレーションだね。」と言われたりする様に思う。
調べてみるとインスタレーションとは、1970年代以降一般化した、絵画・彫刻・映像・写真などと並ぶ表現ジャンルの一つで、室内や屋外等にオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化をさせて、場所や空間全体を作品として“体験させる”芸術とのことである。
芝居も観客に体感してもらう類の表現なので、このインスタレーションに属する造作物を舞台装置にするのは案外いいのではないかと思っている。
今までの私の認識は、その舞台となる時代の建物だったり風景だったりをガッチリ作ったり(予算の関係でちょっと作ってみたり)と案外具体的表現が多かった。しかし、このはっきりこれだと明示していない表現を装置に使う事により、観客にそれぞれ違った体感をもたらすのがとても面白いんじゃないかと思っている。
勿論、芝居作品にもよるが。
そして来年4月に公演予定のシニア劇団の作品だが、イメージにどうしても白という色が浮かんで消えない。それもスッキリしたきちっとした無機質で綺麗なもので、芝居をする人間らしい肉体とは真逆の感じのものなのだ。
そんな事を考えていた矢先、よく行く近くのギャラリーでインスタレーションの作品展示があった。
それは天井にある業務用クーラーの周りに真っ白な霧の様な柳の枝の様なものをもっと繊細にした物が何本もフサ状に垂れ下がった作品で、クーラーの風にふんわり揺れ続けているのだ。
その繊細な霧は、和紙でこよりを作り、釣り糸のもっと細いものに固定はせず、引っ掛けてあった。なんとも表現し難いはかなさと空間を作っていた。
ギャラリーの方の話では、
『クーラーの風でこよりの束が落ちたりするのだが、その時はぽんと何処かに引っ掛けておけばいい。朝なんかは2つ3つ床に落ちているが、それも(その景色も)それでいいもの。』
との事で、この始終動き、微妙に姿を変えている所がまたいい。
今作っている芝居作品にはいろんな事を盛り込みつつある。考えていると次々と入れたくなる要素が出てくる。それをわかってもらうために安直に台詞にはしたくはない。でも少しは感じてもらいたいと密かに思っている。
こうなのかな?ああなのかな?と少し考えてもらいたいなと。だからこういったはっきり断定しない手法を使ってみるのも有りじゃないかと思う。
そこで思い出したのが、昔の劇団のある舞台装置。白いジョーゼットの薄い布を使い、袖から風を送り揺らすという美術プランが出ていた。その芝居は確か自分が舞台監督でいろんな事が山の様に残っていて、初演の日に間に合うか焦っていた事もあり、その布を風で揺り動かすというプランはわかってはいたが方法を検討しかねて実行しなかった。
勿論、芝居は上手く初演を迎えスタートはしたのだが、あの時もう少し自分に余裕があって、舞台装置に布の動きのプランを活かしていたら、またもう一つ何かエッセンスが加わったのではと、今になって思うのである。

10月14日(土)14:00〜オンラインzoom公演・芥川龍之介『魔術』

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