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Logo Mark歯を磨く様に演じる中学校の国語の時間にお招きいただきました

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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先日ある栃木県の中学校の国語の時間に、ゲストティーチャーとしてお招きいただきました。
昔の自分がこの状況を知ったら、すごく驚くだろうし、全然予想もしていない未来だと思う。
学生時代は何といっても国語が大の苦手で、国語の時間が少ないという理由で高校では理系クラスを選んだ。そんな私が国語の授業に、それも先生として招かれるなんて、人生って何があるかわからないとつくづく思う。
今回私がお願いされたのは、生徒の前で谷川俊太郎の『未来へ』と北原白秋の『落葉松』を朗読する事。そしてどのように読んだか説明する事。そして子供たちに読みのアドバイスをする事だった。
やはり国語の授業の一環なので、詩の意味は勿論、形式だったり技法だったり細かく調べた後、この詩だったら、この部分が特に言いたい、中学生に言ってあげたい箇所をチェックした。その上で詩全体のイメージが私の声を通して、描ける様に音程やリズムや間を自分なりに事前に調整した。
当日授業で担当教員がまず生徒達に私の紹介とともに言われたのが、
『皆さんと鵜飼雅子さん(朗読者としての専門家)を合わせたかった。』
だった。子供達もそれを素直に受け止めてくれていたのだと思う。
読み始めると周りの空気がピーンと張り詰めて、子供達の集中が私のところに真っ直ぐ向かっているのがよくわかった。 読んだ後には、
『声がよく通っていた。間が上手かった。』
『どうやって声を出すんですか?』
など子供達から感想や質問ももらった。
私にとってはこれは興味深く面白い授業なわけなのだが、担当の先生には先生なりの温かい思いが詰まっていた。
最近の子供達の多くは本を読まなくなっている。そして、本を広げて文字が小さくびっしり詰まっていたらなおさらその本を読まない。しかし、何かのキッカケがあったらもっと本を好きになったり、本が面白くなり読む行動に出るかもしれないと。
私も学生時代本は好きではなかったし全く読まなかった。それより身体を動かしている方が得意だった。先生の言葉通り、文字が小さい本は開いて本棚に戻す学生の1人だった。
大人になった今では、本は面白いと思っているし、文字が小さいから読まない、なんて事もなくなった。
キッカケはやはり朗読の仕事をし始めて、本を読まざるを得ない状況になった時だ。
朗読がもともとそんなに得意ではない私は、仕事で皆の前で朗読しなければならない為、何度も何度も同じ作品を練習をしなければならなかった。おそらく普通の人よりもっと練習時間が必要だったんじゃないかと振り返る。
練習を続けていると作品の中からどんどん自分なりの面白い事や、作者が言いたい面白い事がみえてきて、数年たった時には、
『これは公演のための朗読の本で、この練習が終わったら休憩にこっちの本を読もう!』
なんて本好きになっていた。
そして起きている時間の多くはほとんど朗読や芝居の練習の為、一人で声を出す事も多くなり、昔コンプレックスだった自分の声も気がついたら周りに褒められる様になっていた。
『どうやって発声の練習をするんですか?』
とよく聞かれるのだが、発声のみの練習は特にしない。読まなければいけない作品がいつも幾つもあり、それを声に出して朗読しているだけなのだ。
私の本に対する転機は社会人になって朗読を仕事にする様になってからだったが、そのキッカケをこういった授業を通して私が子供達に与えることができるとしたら、この上なく素敵なことだと思う。

12月23日(土)14:00〜一人芝居『クリスマス・キャロル』

場所:アトリエほんまる
料金:前売り3,000円、当日3,500円

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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