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Logo Mark歯を磨く様に演じる先日のご依頼

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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さて、これまた先日お願いされた仕事なのだが、短い一人芝居の様なパフォーマンスに動きをつけて欲しいとお願いされた。それも私と練習できるのがそのテスト本番の当日1時間しかないと。
有名な物語の台詞を語りながら動く感じで、最初扇も使いたいと用意をされていた。
扇使いも日本舞踊をやったりして使い慣れていると、古典作品も華やかに見せられるものになるし、扇も日舞で使う扇だと開閉がしやすい。もちろん開閉にも手順がある。しかし、経験がないとの事で扇の代わりに身体で表現する事とした。
まず手と腕を使い波の大きなうねりを表現し、そのすぐ後に手のひらで波に上下する扇を表現してもらう様にした。
案外容易い事に思えるかもしれないが、身体でいろんなものを表現するのはやり慣れていないとなかなか難しい。
ただ手を上下左右に動かしているだけでは波には見えないし、手を上下にさせるだけでは扇どころかなんだかわからない。
『このテスト降参!!』
なんて見えては困ってしまう。
イメージを持ちそれに近づけていく作業が必要となってくる。そしてそれに対応できる身体でなくてはならない。 そして今回、正々堂々と直球でいっては負けるので、ちょいと小ネタを入れ、海上に3人、陸地に3人の人物を登場させた。こちらは身体を回転させると別の人物になっているという私のよく使う一人芝居でのネタである。
さて、依頼されたパフォーマンステストの結果はテスト直前の彼の稽古の甲斐もあり、高評価だった様で、とりあえずホッとしたのである。
素で行うパフォーマンスは自分の身体そのものが勝負なので、自分の持っているいろいろなもの、能力を使う。
先日『マルセル・マルソー 沈黙のアート』というドキュメンタリー映画を観てきた。マルセル・マルソーは“パントマイムの神様”と言われる人物で、その妻や娘や孫が彼について語っている。彼らもパフォーマーである。
マルセル・マルソーさん舞台に立つとストーリーに溶け込んでしまって不思議な感じだったそうだ。やはり私も観ていて感じたのが、彼が物語を作品として作っているのだろうが、彼の中から物語が発せられる様に見える。あくまで出発点が彼でそれが舞台と観客を満たしていくと言うか…。美味しいカレーライスがポンとテーブルに置かれ、その香りが部屋中にフンワリ広がっていく感じ。グイグイ引っ張る感じではないのだ。
また、ろう者で後にパントマイムをする事になった人物も登場して、パントマイムの公演を観た時『これならわかる!』と心が動かされた様だ。
実際健常者が普通に台詞がある芝居をしていても、なかなか観客に表現が伝わらないことも多い。というのが、やはり通常の芝居は少し台詞に頼りすぎたり、台詞に頼っているのに、その役者の台詞表現が稚拙なところもあるので伝わらないという結果を招くように思う。
マルセル・マルソーさん、舞台で手(腕も含めた部分)を使い胴体を使い、顔、表情を使い、演じている。目もよく大きくなったり小さくなったりするなと感心してしまった。
本当はこれも言い方が間違っているのだ。手先が動くのがゴールであって、心から発信されたものが最終的に指先だったり足先だったり頭だったり身体の先端に伝わっていくので、その過程で体全体が動いていくのは当たり前なのである。
ちなみにパントマイムはなんでも表現出来るという。唯一出来ないのは“嘘”だそうである。なるほど。

12月23日(土)14:00〜一人芝居『クリスマス・キャロル』

場所:アトリエほんまる
料金:前売り3,000円、当日3,500円

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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