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Logo Mark歯を磨く様に演じるクリスマス作品⁉︎『海をゆく者』

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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年が明けてクリスマスの事を語るのはなんですが、次回ご覧頂ける機会があれば是非どうぞという事で…。
人生100年時代と言いながら、いつまで演じられるのかと、ふと頭をよぎる事がある。そのうち覚えも悪くなってくるだろうし、身体も動かなくなってくるだろう。
さて、年齢のことから始めたのには訳がある。昨年、自分のクリスマス公演が終わった後、久しぶりにクリスマス作品を観たいと思い探していたところ、目に飛び込んできたのが『海をゆく者』。
クリスマス作品といえば定番の『クリスマス・キャロル』だったり『森は生きている』だったり、サンタがなんとかだったりすると思っていたのだが、『海をゆく者』⁉︎
だだし『21世紀のクリスマスキャロル』と評されたと書いてある。
海の上でクリスマスを祝うのだろうか⁉︎海賊なのだろうか⁉︎とあれこれ想像しながらキャストを観た。
【出演】小日向文世 高橋克実 浅野和之 大谷亮介 平田満
う〜ん⁉︎なんとも渋い。演劇界の私好みのレジェンド達が勢揃い。
これを見ただけでも何かやってくれそうな予感がする。ちなみに平均年齢も70才あたり。
『いいじゃない!』
久しぶりの大劇場で大いなる期待を持ちパルコ劇場の席に着く。
カモメの鳴き声で始まる。暗闇から一転して明るくなるとそこに現れたのは私の煌びやかなクリスマスの予想を裏切り、ある老兄弟の古びた家。
兄役は高橋克実さんで弟役は平田満さん。兄は大酒飲みで最近目が悪くなり兄の世話の為に弟が戻ってきたという。
高橋さんはずーっと喋っている。大した話はしていない。ほんの世間話やたわいもない話で、聞いていてもいなくても大して問題はない。しかし、台本には膨大な台詞が書かれているのだろうと想像する。
どうでも良い話がずっと続くので、行動の方が余計に目につく。奥に行って出てきたと思ったら、ズボンがいい感じにずり落ち、トランクス姿(トイレに入っていたという設定)。
そのタイミングの良い事。奥に行っている間も台詞は途切れることなく相手と噛み合うんだか噛み合わないんだか続いている。
またの場面では兄の高橋さんは目が不自由なので、ソファーにつまづいて前方のソファーにダイブする。
『お見事!』
目が見えていたって若者だってあのダイブはなかなかですよ。
ある時は(高橋さんの)喉に痰が詰まり、吐き出して近くの階段の手すりに擦りつける。それを後程やってきた浅野さんが思わず触り。手すりのベチャベチャ感になんとも不思議な顔で対応している。浅野さんの劇中で出している小心者感でより可笑しい。
小日向さんも負けていない。
駄目男達が最後に酒を飲みながらカードをしているのだが、小日向さんはベロベロに酔っていて、酒の入ったグラスを持った左腕がソファーから飛び出してしばし揺れている。そこへ偶然通りかかった浅野さんのズボンのお股のところに命中。勿論計画された事だとわかっていてもお見事なのだ。
浅野さんの小心者感が際立ち滑稽なのだ。
彼らの技を述べたらキリが無い。
さて、どんな話だったかというと駄目男達がクリスマスに古びた家に集まってぐだぐだ言ってカードをする。そしてカードの勝者として小日向さんが最初喜ぶのだが、探していた浅野さんの眼鏡がトイレの辺から見つかって、カードの見間違いから勝者が浅野さんへとひっくり返るのだ。(私には)クリスマスに何も行動できなかった駄目男達の話と言える。
何もできなかった駄目男達の話ではあるが、演じたのは今まで切磋琢磨してきたレジェンド達である。

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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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