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Logo Mark歯を磨く様に演じるモノクロ無セリフ、映画(窒息)

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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先日、映画(窒息)というとても興味深い作品をヒカリ座で観た。ちなみにこのタイトルは“えいがかっこちっそく”と発音する。その2日前に私の担当している映画番組にプロデューサーの棚橋公子さんがお越しになり、放送中には電話で監督にも話を頂きとても気になっていた。
“セリフが全くなくて、それが約2時間続く”
映画のボキャブラリーが豊富ににない私にはセリフがない映画イコールチャップリンしか出てこない。それに私の試観能力が無セリフで2時間ももつだろうか。
監督によると、本当はタイトルはつけたくなかったが、上映スケジュール表のタイトル欄に白紙なのはどうかと、そして映画というものは窒息しそうなものという事でこの題名をつけたそうだ。
監督:長尾元さん、プロデューサー:棚橋公子さん、主演:和田光沙さん
チラシからして不思議なのだ。国家も言葉も失った未来の話だそうだが、そこには原始人的衣装の女が何かを狙い槍を持って構えている。
私の頭の中は矛盾と期待で迷彩花模様である。
さて、映画がスタート。廃墟に1人の女がいる。何かの拍子によく溜息をつく。それも割と大きい。
『何もなくなった時ってそんなに大きめの溜息が何かにつけ出るものなのだろうか?』
まずはその疑問。キャパオーバーしそうな今の自分から想像する。そして映画を見ながら映画の状況を空想し、
『はぁ』
と微風の様な溜息を吐いてみる。変に思われるかもしれないが役者だったら、映像を見ながら自分だったらと実践するのは私だけじゃないと確信している(笑)。
そして女の日常生活での喜怒哀楽が割とくっきりした線で描かれている。くっきりとした線で描かれるという事は観客にこうですよ、というはっきりとした印象や考えを与え、「この人この時どう思っているんだろう?」と観客に思わせる余地がなくなるのである。
通常なら動きがあり、セリフがあるのでそれほど動きを油性黒マジックで書いた様にしなくても良いのだが、そこは難しいところである。何せセリフがない。そして女が物語の柱なのだから。
また、こうとも考えた。
『文明もなく複雑な人間関係もないのだから、複雑な心の動きはなくなるのかもしれない…。』と。
ちょうど舞台挨拶のある上映会に伺ったので、そこ(動作のオーバーさ)のところを主演の和田さんに聞いてみた。
『セリフが無いので(表現は)最初ナチュラルよりすこしオーバーに、そしてちょっと滑稽に。最後の方はナチュラルに。』
確かにがに股でオケと瓢箪の水筒を持ちギャートルズに出てくる女性ではなく男の子みたいに少々体を揺らして歩くのは面白い。なんにしても最初の掴みは大切である。
そして約2時間の物語“人間の性が現れていたな”。物語を事細かに説明するのはなんなので、スパッとこれだけにしておきます。
あと、興味深かったのが今回の映画のプロデューサー棚橋公子さん。通常はトレンディードラマ等のスタイリストさんなのですが、今回はプロデューサー。通常のスタイリスト業務では全体の一部しかわからなく、その為「なんでそうなの」と思う事もあったそう。他人から請け負ったものでは全部が見えてこない。だからプロデューサーとなって映画を作った。
『いい投資だった。』
とこのセリフをスパッと言い、力強く映画の魅力を語る棚橋公子さん。素晴らしいと思いました。
また、映画が終わった後の主演:和田光沙さん。なんともまあ三日月のお目目がとっても似合う穏やかな女性で、劇中のハードな女とは全く違っていた。このギャップにも惹かれてしまいました。
そして、映画=窒息 納得です。

オンラインzoom朗読舞台公演 芥川龍之介『運』

2024年2月24日(木)14:00開演
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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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