2024/03/09
先日、オンラインで芥川龍之介作『運』の朗読舞台公演をした。この作品ではうだつの上がらない若侍に陶器師の老人がある績麻売りの娘が願掛けをした昔話を話す内容だ。
陶器師によれば、その女は若かりし頃、それは器量よしで有名だった。
その女が良い運が授かるように、清水寺の観音様に願掛けをした。すると満願の夜、観音様からのお告げがあった。
『今日ここから帰る際、そなたに言い寄る男がいる。その男と夫婦になれ。』
その言葉通り言い寄ってきた男と夫婦になり、その男から綾十疋、絹十疋を貰い受けた。しかし、その男は物取りで、女は男の留守中怖い思いをしてやっとのこと頂いた綾や絹を持ち逃げ出した。女が逃げている道中、物取りの男は捕まってしまったが、女の方は貰った綾や絹を元にその後何不自由なく暮らしたそうだ。
若侍はこの運を良しとし、陶器師の老人はこんな運はまっぴらごめんだという。
私だったら、この女みたいに要領がよくないので、この金持ちになる運は掴めないだろうなという話から、参加者のお一人と『運』についての会話が花咲いた。
最近お会いしたある女性に『運』の話を聞いた。彼女、フランスのルーブル美術館での展示を誘われ、初めは騙されているのかと思ってその話を信じていなかったが、いろいろ調べてみるとどうやら本当らしいとの事で、その展示に参加した。参加するにはお金もそこそこ必要だったよう。
また、このルーブル美術館で展示をしたおかげで次に繋がったと。
また、誘いが届いた同じ分野の作品を作っている知り合いは、その話にのらなかった。
『運は掴むものだと』と彼女は力強く言っていた。
また別の方は、ある映画作品のオーディションに参加した。その結果役付きに選ばれた。だが、それに出る為には幾らかのお金が必要だった。そのお金は今となってはそれほどの額ではないのだが、当時の彼女にとっては大金で、そのお金が払えず諦めたそう。また、その映画には有名役者も出演されていたので、後になってとても悔やまれている様だった。
オンライン公演参加者の彼女いわく、
『ルーブル美術館の展示に参加した人は運を掴んだのではなく、そういう運だったんだよ。参加しなかった方は参加しない運だったんだよ。』
『映画にお金を払えなかった方も、出ないという運だったんだよ。』
物事の選択でなぜか見た目がきらびやかな方を選んだ場合にばかり注目して『運を掴んだ』と私も言っていたが、この意見には何故か納得してしまった。
そしてそんな事を話していた矢先彼女が、
『(鵜飼が)芝居をする為栃木ではなく東京に行っていたらどうなっていただろうね。』と言う。
どうなっていただろう?
東京へ行っていたらいろいろオーディションを受ける機会もあるだろうし、舞台も多いだろう、その舞台に立ったら…と想像を巡らす事もある。やはりこの妄想というもの、華やかな方へ向く。
確かに現在となってはなんでも出来るねと度々言われる様にはなったが、根本的に要領の決して良くない、どちらかというと不器用な私は華やかに見える人々のいる氷山の一角には入っていなかったんじゃないかと思う。
そしてここ栃木県に来て芝居をしている運だったと思う。
でもこれは諦めや残念な事ではなくて、舞台は相当数上がらせてもらったし、ここだから出来る事も多くて、自分の意志でいろいろ芝居を作ったり、その関連の分野で仕事の依頼を受けたり。
そんな運もよろしき運なのだと思うのである。
2024年4月21日(日) 11:00開演または14:30開演
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