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Logo Markなにか創るとうれしくてアーティスト紹介文から考える横並びにならないことの大切さ

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者
YouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおじぃ
YouT...

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 え? なにか新しいものを創ろうとしているならこんなん当たり前だろって?…それがねぇ、面白いことにけっこう前例踏襲的な事例を見かけたりするんですよこれが…ということでちょっと書いてみようと思いました。

 例えばアーティスト紹介文。私たちが運営しているサイト「Spinart(スピナート)」のアーティスト紹介ページでも、アーティスト写真の次に来る重要度の高い情報で、これによって、そのアーティストの作品を見てみようかなとか聞いてみようかなとか、閲覧者のみなさんの判断とアクションにけっこう強い影響を与える情報になるんですが、この書き方がある時期みなさん同じ傾向になったりするから面白いんです。
 具体的にどうなるかと言うと、例えば書き出しがみんな揃っちゃったりね。それもなぜか出身地や活動都市名で揃っちゃう。
「東京都で結成された…。」
「東京都で活動している…。」
「東京都出身の…。」
みたいな奴。
 いや、別にその都市で生まれたり結成されたり活動していることが悪いって言ってるんじゃないですよ。ただそれが紹介文の1行目にくる情報かなぁということを考えてみませんか?…ということです。
 これが例えば、その都市で生まれたり結成されたり活動していることによって、自らのブランディングにとても強い効果があると判断しているということならそれはもちろんアリですよ。例えば作品の多くや活動の内容等々が地域密着型だったり、渋谷、下北沢、福岡…なんていう都市みたいに、都市名そのものにブランド力があって、その括りに入ることで自己のブランディングにもだいぶメリットありそうだなと思えるとかね、そういうなんらかしっかり考えた痕跡がある場合は特に問題はないと思うんですが、内容を読んでみると、冒頭のもっとも大切な部分であえて印象付けしたはずの地域名とそのアーティストさんの実際の活動内容との関連性がまぁ薄かったり…てか大抵は、冒頭で言っているだけで、あとはほぼ関係なかったりするから面白い。つまり、せっかく冒頭で印象づけしたことが無駄になってるということになると思うんですなぁ。

 似たような例だと「2022年に結成された…」的な奴で書き始めている例。これもよく見ますがこれもどうかなと思います。
 だって初めて見る人にとって…つまりそのアーティストさんについてほぼほぼ知識が入っていない方にとって、それって最初に欲しい情報かなと…違うよね多分。それよりその人たちがどんな人でどんなものを表現していて自分にどんな刺激を与えてくれそうかなということの方が大切な情報だと思うんだけど…違うかな。
 もちろんその方々の活動履歴として、これまでの歴史が掲載されているのは情報として有効なんですが、少なくとも冒頭の書き出しに使用する情報じゃないのではないかとは思いますねぇ。
 まぁ「創業120年」みたいに、長年つづいてる老舗なんですよってなことが言えるのであれば、それはインパクトになりますし、冒頭に書く意義が出てくると思いますけどね。

 そうそう、「4ピースのロック・バンド」なんてのもね、アウトだと思いますよ。あ、この「4ピースの」ってのは4人編成のっていう意味なんですが、バンドの人数ってそんなに重要な情報かなぁってことですよね。だって大抵の場合一緒についてるバンドのアーティスト写真で分かっちゃったりもしますよね。
「あ〜4人写ってるなぁ。」
って。だから改めてテキストで伝えても、おそらくはなんのインパクトも生み出さないんじゃないかなぁと思います。え? そんなの言われなくても分かるって? いやでもね、Twitterとかのプロフィール文を見てみてください。けっこういますから。
 つまり、人数を冒頭でアピールするとした場合、4人編成や5人編成、いやそれが3人だったとしても、ロック・バンドとしてはとってもノーマルにありがちな編成だと思いますので、ちょっと売りにならないんじゃないかなと思うんです。だってだからどうしたって話になりそうですよね。人数でインパクトをつけたいなら、例えば2人とかならちょっとは興味を持ってもらえるかも…いやそれでも「ふ〜ん」で終わりそうだなぁ。8人とか10人とか、こりゃちょっと多いなっていう場合なら面白がってもらえるかもしれませんね。
 じゃあこのケースでなにか特徴を出すにはどうしたらいいのかと考えれば、例えばそれぞれがなにかのキャラクターになっていて、「4人のモンスター」「4人のもふもふうさぎ」なんて表現を(まぁなかなか勇気はいりますが)していけば、それはものすごく面白い打ち出しになるかもなと思いますね。「なかなか勇気がいる」なんて書きましたけど、つまり多くの人がそこに踏み切れないとすればそれをやっている人も多くはないということなので競合が少ない=ブルー・オーシャンな状態と考えられて、つまりやると突出できる可能性が上がるということかなと思いますので。
 あとはメンバーそれぞれの関係性に言及するとか。例えば「小学校時代からの親友」とか「兄弟姉妹」とか「夫婦」とか「飲み屋で偶然出逢ったクソオヤジの4人」とか。するとそこにただの人数としての情報ではなく物語としての情報が追加されるので読み手の想像をふくらませることができるネタが一つ重なるんですな。すると記憶に残りやすくなると…まぁこれは、観光地のプロモーションなんかで有効な手法の一つなんですけどね。なにせほら、記憶に残っていかないと口コミにも繋がらないのがあの業界なので。

 さてさてまた長くなりましたが、なんでこんなことが起こるんだろうと考えてみますと、まぁ推測にはなっちゃいますが、多分、こうした文章を書くに当たってきっと誰かのものを見て、そのフォーマットを参考に書いたりしてるんじゃないかなぁと思うんです。
 で、たまたま見たものが地域名始まりだったり結成年始まりだったと。で、ああなるほどこう書けばいいのかと早合点して、ほぼそのまま書き始めたりしたということなんじゃないかなぁなんて思うんですよね…違うかもしれないけど。
 しかも、その時点で一番上に掲載されているものからちょこっとだけ見て書くから、つまり同じ傾向の文章がしばらくつづいたりするという現象が起こるのではないかと想像してます。

 まぁね、よく分からない時には誰かの真似をして書いたり作っちゃったりすれば、とりあえず大きくは外さないっていうのは正しい判断だとは思いますよ。特に仕事の現場なんかでね、とりあえずミスなく無難に目の前の仕事を終わらせたい時なんかは、一生懸命考えて自分なりの手法を考えてやってみて、しかしそれが正しいかどうかはやや危ういなんていうことをやるより、よほど手っ取り早くて確実…つまり目の前のお客さんに怒られたり先輩や上司に怒られるという可能性が減るというわけですな。
 でもさ、だから似たようなものが生まれがちになるんじゃないのかなぁ。
 これってなんかお役所仕事みたいじゃないです? 大失敗はないけどすごいものを作ることはできないってことですよね。仮にもアーティストとして、これまでこの世には存在しないなにか新しい自分だけのものを生み出そう…なんてことを考えているはずの方が、そんな自分を知ってもらうための、しかもおそらくは最初の出逢いとなる可能性の高い自己紹介文で、そんな無難で当たり障りのない手法を取っていていいのかなぁ…ということです。

 じゃあどうすればいいんでしょう。まぁ端的に言えば、
「小さくまとまらない。」
ってことが大切なんじゃないかなと思うんですけど…え? よう分からん? 「チャンス」っていうドラマの中で本城裕二(演:三上博史)がよく言ってたじゃないですか…知らない? まぁ1993年のドラマですからねぇ…生まれてないという方も多いかもしれませんけど…もっとちゃんと具体的に言えって?…そうですね、すみません。

 例えば、「シンガー・ソング・ライター」という表記があるとします。だから冒頭に「シンガー・ソング・ライターです」と書く。これはあってもいいんです。なぜなら一般の方っていうのはそもそもそれほど高い想像力を持っていないことが多いですから、例えばその方が「シンガー・ソング・ライター」に興味があったとすれば、まずは単純に「シンガー・ソング・ライター」で検索する可能性が高いと考えられるからですね。なので、この単語はむしろ入れておいた方がいい。
 ポイントになるのは「どのような」シンガー・ソング・ライターなのかをどう表現するかということです。
 例えばそうだなぁ…昔の反戦や反体制系のフォーク・シンガーのようなスタイルなら、
「〇〇絶対にNO! 歌の力で世の中を変えるシンガー・ソング・ライター。」
とか…あはは…例が極端すぎるかw 分かりやすいところでは、
「愛を求める心の内をリアルに克明に掘り起こして表現するシンガー・ソング・ライター。」
「凹むことがあっても大丈夫。この歌でみんなの心になにかしら前に進むきっかけを作るシンガー・ソング・ライター。」
「誰の心にもある内なる声を言葉の具象として浮かび上がらせるシンガー・ソング・ライター。」
「ふわふわとゆらゆらとたゆたうような心地よさをやわらかいエアリーな声で表現するシンガー・ソング・ライター。」
とか…。
 だってさ、こういうのをちゃんとしないと伝わらないでしょ。「シンガー・ソング・ライター」なんてホント〜にいっぱいいるんだもん。あなたの他にたくさんいるシンガー・ソング・ライターとあなたがどのように違っていてあなたがどのようにいいのか全然分かってもらえない。てかその前に興味も持ってもらえないからきっと見てもらえない。見えもらえたとしても覚えてもらえない…なんて思うんですよね。
 まぁつまりはちゃんと考えて、自分を表現できる言葉を見つけ出して、かつ中途半端にならないように表現しましょうよってことですね。

 そのために大切なのは、表現する対象である自分についてしっかり考えるということですね。例えば、
・自分が押し出したい表現の内容
・自分の表現手法の特徴
・その結果相手に感じて欲しいこと
・その相手ってどんな人?
…とか?
 これをまずはできるだけ列挙してみて、その上でそれを重要な順に並べてみるとかするといいと思います。
 その上で、そのリストを眺めながら、
・自分たちをどのように特徴づけて記憶してもらうか
・同種の他者といかに差別化できるか
・その紹介文を読んでくれた方に少しでもなにかを残すことができるか
なんてことをちゃんとしっかり考えて工夫しましょうよというお話です。

 え? そんな特徴なんてないって?…それはねぇ、まだ自己プロデュースができていないということになりますから、まずはその特徴がなんなのかをしっかり考えてみましょうね。そしてそれが見えれば、きっとプロフィール文に書くなんてことはすぐにチャチャッとできるようになると思いますよ。

※ちなみに写真は栃木県那須町にあるカレー店「ラクタ」の店内照明。
カレーを食べている時にはあまり思わなかったけれど、ファインダーをのぞいて見たら、屋内の星々のように見えた。
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 50D + Sigma 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / EX DC

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