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Logo Mark連載記事

Logo Markなにか創るとうれしくてsanaさんから学ぶ「こうなりたい」を明確に表明するというこれまで意外となかったブランディングとプロモーション

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者
YouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおじぃ
YouT...

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 シミズの中に強力なインパクトを残しているアーティストさんを紹介するシリーズ、今回はsanaさんです。
 sanaさんの紹介情報はこちらのページをご覧ください。
 アーティスト紹介・sana
 sanaさんは、私が当時やっていたネットラジオ番組のオンエア楽曲として初めて知った際はまだ現役音大生だった岐阜県出身のシンガー。その歌や楽曲の内容、そして活動の姿勢等々があまりにインパクトがあったので、今でも時々思い出してしまう素晴らしいシンガーさんなんです。

 まず興味を惹かれたのはプロフィールにあった「クラブで歌える女性シンガーに憧れて活動を始めた」という一文。「クラブで歌える」って? 「クラブ」ってあの夜のクラブ?…いや、実はちゃんと行ったことがないので、せいぜい映画かなにかで見たあの雰囲気かな?…くらいしか思えなかったんですが、しかしこの時sanaさんは現役音大生ということでしたからきっと20歳くらいの年齢で「クラブ」という、その目のつけどころというかプッシュ・ポイントが本当に特徴的でとても記憶に残ったんですよねぇ。しかもこの時既に名古屋や岐阜のクラブで実際にライブ活動もしていたって言うんですから、言ってるだけじゃなくて行動も起こしているというすごさなんですね。正直、こんな方法での記憶の残り方って今まで経験したことがありませんでした。
 だってアーティスト写真を見ると、とっても細身の、とってもかわいらしい女性なんですよ。「クラブ」と聞いて頭に浮かぶ妖艶な感じ(…まぁ私が勝手にそう思ってるだけですけど…;;;)とはどうもストレートに結びつかない。そんなギャップ感も、さらにインパクトを増していたように思います。だって夜のお店で、いかにもそれっぽい人がいたら、それはまぁ普通なことなので、きっと「ああ、はいはい、なるほどね」とか思って、そのまま忘れたかもしれませんもの。このギャップによって、
「この方はどんな歌を歌うんだろう?」
と、より一層興味を惹かれたのは間違いがありません。つまり、キャッチコピーとしての「クラブで歌える女性シンガーに憧れて」というキーワードがものすごく効いたってことなんですなぁ。

 これね特徴的なのは「憧れて」なんですよ。今現時点で既にそうなっているとは言ってないんです。あくまで自分の目指すところとしての将来像としてこれを言っているんですね。こんな表現方法、実はあまり見たことがないなぁと思いました。
 通常こうしたブランディングやプロモーションに使用されるキーワードっていうのは、その人が現状既に持っている属性(…まぁ通常多いのは「強み」ってやつですね)の中から生み出されることが多いので、要は「今」のその人を表現していることが多いものなんだと思うんですね。「今」のその人が持っている属性の中のプッシュ・ポイントを、より印象的な表現として出すという感じです。
 しかしsanaさんのこの「憧れて」は「未来」の自分について言われているキーワードなんです。つまり現状は必ずしもそうなっていないけれども、自分はそのポイントを目指して活動してますよという…これ意外と新しい手法ですよね。
 そこから感じさせられるのは、この「sana」というアーティストさんが「今」の現状からその「未来」へ向けてやっていくであろういろいろな取り組みによって生まれるsanaさんの物語を、リアルタイムで一緒に共有していくということなんじゃないかなと思いました。
 彼女がなりたい自分を目指していろいろな活動をしていくんですよ。そして少しずつそこに近づいていく。もちろん途中にはなんらか障害もあって、うまくいかないこともあるでしょうし、また、一見うまく行ったかのように思えることが、実は当初イメージしていたものとは違っていてそこでまた悩んだりとかね。もちろんシンガー・ソング・ライターですから曲作りの悩みもあるでしょう。そういった物語を、彼女が一生懸命生きている姿としてリアルタイムで一緒に見ながら応援する。そんな意味合いも強く感じることができる手法なんじゃないかなと思います。
 そういう意味では、未完成な状態でメジャーな場所に出てきて、その後の活動の中で成長していく姿をあからさまに見せていた初期のAKB48のような、成長共感型とも言える方法なのかもしれませんね。

 で、そんな感じで興味をめちゃくちゃ惹きつけられたところで彼女の楽曲を聞きます。で、これがまた素晴らしかったんです。
 まずタイトルが「渇愛」です。「愛を渇望している」なのか「愛が渇いている」なのか、いずれにしても「渇」という文字から連想される尋常じゃない感情を強く感じます。そして歌が始まると、シンプルなバッキングの上で、やや深めのエコーが効いた彼女の歌声が、それも時々は引きずるように、甘えるように、文字通り渇きを感じさせるようでもあったりと、変幻自在に、色気を感じさせる表現に満ちた歌声がですよ、おそらくは彼に対しての想いを切々と歌っているんです。それもただの想いじゃない。ある意味執着とさえ思えるような情念的な重さを持った想いなんですね。しかも全然素直じゃないし(*1)。
 彼女は楽曲もご自身で作っているということですから、この歌詞世界もすべて彼女が産み出したものだとすれば、この人は一体これまでの、まだ20歳くらいの年齢で、一体どんな経験を積んできたのだろう等と、彼女の物語についてさらに興味が湧いてしまったりするんですね。
 そしてその世界観はまさに上記した「クラブで歌える女性シンガーに憧れて」というキーワードの線上にしっかりと乗っていると感じるわけです。

 本当にすごいなと思いますね。完璧にブランディングできちゃってる。その上キーワードが「未来」を向いていることで惹きつけるというプロモーションにもめちゃくちゃ効果的になっている。その上作品がいい。これは行けるでしょうと思えちゃいます。
 いやこれね、作品がダメだと、いくらなにを言っても多分、
「ああ、なるほどそうしたいのね、頑張ってねぇ〜。」
くらいの感覚になるかもと思うんですよ。それと、言っていることとアプトプットしている作品のテイストが合ってなかったりするとやはり、
「大丈夫か〜? なんか迷走してないか〜?」
と思ったりね(まぁ、そうやって心配させるという手法もあるにはあるんですけどね)。
 ところがそこもバッチリ。キーワードがとても素晴らしい上に、それが指し示すコンテンツも素晴らしいという、いやぁすごいなと…本当に心から思ったものでした。

 ということで、なにかを表現しているみなさん…じゃなくても、なにかを売りたいなんて…まぁお仕事でもね…なんていう方はぜひ参考にしてみてはいかがでしょう。
 今の状態を言うだけではなく、「将来像としてこうなりたい」ということをプッシュ・ポイントに据えたブランディングやプロモーション。意外と多くない分、逆に高いインパクトが期待できるのではないかと思います。

 そういえばsanaさん、X(旧Twitter)のアカウントを鍵垢にして、YouTubeの動画も非公開にしちゃったっぽいんですよねぇ。心配です。もうやめちゃったのかなぁ。もしご存知の方がいたらよろしければお教えください。そして、Spinart(「わくわくWOORKStyle(当時やっていたネットラジオの番組名)」の方が分かるかも?)のシミズがこんな文章を書いていたぞとお伝えいただければと思います(いや、完璧に覚えてない可能性の方が高いかもとも思いますがw)。
 まぁもしね、今は一時的に音楽から離れていたとしても、またいずれ、カタチを変えてでもいいので戻ってきていただければと思います。本当に素敵なシンガーだと思いますので。

(*1)「渇愛」について…2024/8/31追記
 この原稿を書いた時には知らなかったんですが、「渇愛」という単語は仏教の概念の一つだったりするんだそうです。
 なんでも、対象のものごとを貪ったり、執着することを指すんだそうで、快楽や刺激的なものへの執着はもちろん、存在することや、逆に存在しなくなることへの執着なども表す他、苦しみの原因でもあって、渇愛に生きる者は輪廻の輪において死と再生を繰り返すんだそうな…まぁこんなことを言われてもなかなかすぐには理解しにくいかと思いますが、こうした背景も考えながら聞くと、このsanaさんの作品で描かれている感情も、より一層複雑さや深さを考えているものなのかも等と思います。


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sana「渇愛」ラジオ わくわくWOORKStyle 今月の楽曲:インディーズアーティスト 2021/5/10

以前私がパーソナリティーをやらせていただいていたネットラジオの番組で、sanaさんの「渇愛」を紹介させていただいた際の音源です。 めちゃくちゃいいので、是非お聞きください。

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