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Logo Markなにか創るとうれしくてりくろあれさんに感じる、世界観構築のモデルケース

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者
YouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおじぃ
YouT...

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 シミズの中に強力なインパクトを残しているアーティストさんを紹介するシリーズ第2弾はりくろあれさんです。
 りくろあれさんの紹介情報はこちらのページをご覧いただければと思いますが、
 アーティスト紹介・りくろあれ
りくろあれさんで強く印象に残っているのがそのあまりにインパクトの強い世界観なんです。
 例えば上記の紹介ページに書かれた短い文章に使われている単語も、「独善的ひとりユニット」「ひとりおうたあそび」「まっしろな漆黒歌謡」等、とても印象的。こんな短い文章からでも、この人はどんな表現をする人なのだろうとつい気になってしまいます。

 しかしりくろあれさんがすごいのはそういった文章の内容がしっかりと作品でも表現されているということ。
 私が当時やっていたネットラジオ番組で紹介させていただいた際は「ヘクトパスカル」という曲を紹介させていただいたんですが、この曲がものすごい。それも、歌がすごいとか演奏がすごいとかそういった技術的なことじゃないんです。とにかく楽曲全体から醸し出される世界観がすごい。そしてその世界観を醸し出すために埋め込まれているさまざまな音の繊細さがすごいと…思ったんです。

 それは平易な言葉で言うならキュートでチャーミングと言えます。そしてちょっと淫靡な雰囲気も感じさせるレトロなヨーロッパのアンティークな人形がそこにあるようなイメージ。そして古いサーカスのような、映画「ヘルタースケルター」で描かれているあの雰囲気にも共通するような、そんなイメージなんです。
 その世界観をより完璧に描き出すために、例えば楽曲の方向性とか声とかドラム等のサウンド・イメージなども極めて精密に決定づけられていると思うんですが、さらにはバッキングの合間に聞こえてくる木がきしむような音や鍵盤の打撃音、ピアノのペダルを踏んでいるかのような音が効果的に入っていて、それらによってもこの楽曲の世界観表現にとても大きな役割を果たしていると感じます。
 だからこの楽曲は是非ヘッドフォンやイヤホンで聞いてみてください。できれば目を閉じて耳に意識を集中しながら聞くといいと思います。すると、驚くほど緻密で繊細でさまざまな音がこの曲を彩り、その上でこれもまた見事にその世界を演じている歌が、そのブレスの息づかいも含めていい役割を果たしていることに気づけると思います。

 これね、あらゆる表現に必要な世界観構築のとてもいいモデルになると思うんですよ。
 まず世界観を構築する必要性ってなんだろうということなんですが、まぁ世の中これほど多くの表現者の方がいてね、技術的には多くのジャンルでもうだいぶ出し尽くされているような状態ですよ。分かりやすいところでは音楽なんてさ、技術的に上手いだけならまぁ本当に星の数ほどすごい方がゴロゴロいるわけです。その中で自分がなにかを生み出し表現しようと思ったら、できれば過去や現在の偉大な先輩たちを凌駕するものを生み出していきたいと…まぁそこまで比較的に考えなかったとしても、自分なりの独自のものを生み出したいとは思うでしょ…てか、思わないならそれはきっとオリジナルを作ろうとしているとは言いにくいかもと思います。そしてこれからの未来、自分も表現を磨いている間に他の人も同じように自分を磨いているのだから、もっとすごい表現はどんどん出てくる可能性が高いと思うんです。そんな中で自分ならではの表現をし、他者と被らず、できれば作品に触れた方になんらかのインパクトを残したいとなれば、そこに独自の世界観を強力に構築していくことはとても有効な手法の一つになると思う…ということなんです。
 で、それを普通にやっていたら自然にできちゃってるなんていう人もいるにはいるんです。とんでもなく特徴ある、しかし魅力的で技術面でも申し分のない歌が最初からサクッと歌えている人とか、ただ普通に絵を描いているだけなのにそれが自然に過去には存在しない技法になってて、しかもそれが人の心をとらえて離さないなんて人とか…まぁ、こういう人を天才…天賦の才…なんて言うのかもしれませんが、私のようなクソ凡人からすればとんでもなくうらやましい存在なわけですけれども、しかしそんな人は多くないでしょ?…多分。私みたいに、なにかを作りたいという意思はだいぶ強くあったとしても、残念ながら与えられた才もなく、きちんとした教育を受ける機会も金もなく、でも作りたいという人、いるでしょ? まぁこれはとてつもなく僭越な例えだけれども映画「アマデウス」のモーツァルトとサリエリみたいなもんですよ…いや、サリエリはあの音楽的な才を得るためにあらゆるものを犠牲にして努力し、オーストリアの宮廷作曲家にまでなった人ですから私ら腐れ凡人と一緒にしては甚だ失礼な話なんだけれども、しかし(少なくともこの映画の中では)求めて得られなかったという意味での対比としてね、似ているということです。
 そうした場合にこのような世界観構築を考えると有効だってことなんですよ。なぜならこれによって自分の打ち出したいものの方向性を絞り込むことができ、その結果ある程度分かりやすくもできて印象を強めたり受け手の記憶にも残りやすくなる。同時に、同種ジャンルの他表現者との差別化もできるようになりますね。まぁ「差別化」なんて言い出すとそれは表現というよりもマーケっぽくなっちゃいますけど、でも作品作りがブランディング要素から離れられないことを考えれば、そうした方向も含めて考えるのは決して悪いことではないと思うんです…まぁ、そんなことを考えなくてもちゃんとすごいものにできちゃう天才系の方には分からないことだとは思いますけどね。

 しかしその世界観作りってどうしたらいいのかとなると、それはもう手法はた〜くさん考えられるのでなかなか一概にはいえないしだからこそ分かりにくいんだと思いますが、このりくろあれさんの表現は、その事例としてとても優れていると思うし、世界観を作っていきたいなと思う方は是非研究して参考にするといいのではと思います。

 具体的になにがすごいんだって?…そうですね、私が思うポイントは以下の通り。
 ・言葉選択のうまさ
 ・メロディー選択のうまさ
 ・アレンジ方向性選択の巧みさ
 ・音像方向性選択の巧みさ
 ・細かい効果音使用のうまさ
 ・これを実現できる楽曲製作者の引き出しの多さ
 ・それを実現できる歌う能力や演奏能力の高さ
 ・これらをすべて一つの軸の上で表現できるプロデュース能力の高さ
 まぁ項目にするとちょっと漠然として感じちゃうかもしれませんし、なんか面倒臭くも見えるかもしれませんが、しかしこれらすべてにおいてものすごく高いレベルの試みがなされているからこそ、りくろあれさんのとてつもなくインパクトの高い世界観は存在し得ているのだと思います。

 ということで、表現者の方にこそ聞いていただきたいりくろあれさんでした。
 ちなみにりくろあれさんは、大島朋恵さんというお名前で舞台俳優さんもやっていらっしゃるということで(すみません…まだ観たことないんですけど)、きっとそうした演じる力も、こうした世界観の構築に大きな力になっているのかもしれないなんて思えますね。演じるって多分、いろいろな立ち位置の人の心を考えるってことだと思いますので。
 是非みなさんもお聞きになってみてください。

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