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Logo Markアーティストの主張トモ(Moshi-Moshi-Box)・The Sun~遠い地で生まれた歌

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東日本大震災のあったすぐ後の週末は、ベルリンに初めて春が訪れた週末でした。長いこと雪の溶けなかった冬がやっと終わりを告げた週末でした。太陽がほがらかに照り、花が咲き、小鳥がさえずり、やっと訪れた春に、みな浮かれているようでした。あの海の向こうであんなことが起こったというのに。

1日たっても2日たっても、故郷から何も情報の入ってこないもどかしい状態。そして、このとてつもなく対照的な穏やかな陽射し。そのギャップにやるせなくなり、気がつけばギターを手にしていました。無心で感情のままにかき鳴らし続けました。すると、あるリフが湧き上がって来たのです。すぐさま、このリフと共に、頭にあるイメージを音で表現し、録音しました。地球の震え上がる鼓動。押し寄せる抵抗できない力。
頭から離れない衝撃的な映像。このもどかしい状況。何もできない無力感…。
一週間後、バンドの練習(当時は4人)がありました。皆んなが心の底から心配してくれ、何とも言えない重い雰囲気の中、私の作った音源を聞かせると、深く共鳴したものがあったらしく「早速やってみよう」ということに。途切れることのないギターのリフにドラムの鼓動の様なリズムが加わり、唸り声の様なベースが重なり、美しい旋律がのせられました…「The Sun」という曲が生まれた瞬間でした。私はこの瞬間ほど、音楽の持つ「人の心を一つにする力」というものを実感したことはありません。

歌詞は夏になってから、あの時に感じたことをもとに書きました。
「私」は太陽に向かって問いかけます。どうしてそんなに微笑んでいられるのかと。遠い地で、はるか故郷を想うことしかできないもどかしさは積もります。なぜ、なぜ、なぜ…。花や鳥に向かって問いかけても、何も答えてくれませんでした。やるせない気持ちをよそに、それでも太陽は微笑み続けます。
考えてみれば、人間の命というものは、太陽のそれに比べたら、なんと儚いものでしょうか。人間の歴史の始まる前から、太陽はすべてを見てきたことでしょう。だからあの様に微笑んでいられのかも。いろんなことを考えていると、自然に対する畏敬の念が生まれてきて、ただ祈ることしか出来なくなっていました。あの時、被災地では雪が降って寒い日々が続いるのに、こちらでは太陽が照って暖かく、申し訳ない気持ちでした。どうかあちらでも陽が照りますように、と。
「The Sun」は、3回リリースされました。初回はドイツの団体が企画したチャリティーのCDにアコースティック・エレクトリックバージョンで(2012年)、2回目はMoshi-Moshi-BoxのEPにハードロックバージョンで(2015年)。3回目はシングルとして和楽器バージョンで2019年3月11日に。その際、初のミュージックビデオも作りました。制作には、2011年当時のドラマーSaraの独創的な踊りにて、元ボーカルのBeatriceとその彼氏で写真家のChristoph Boyが映像にて、そして私の高校時代のバンド仲間のHOROMI OBORAが編集にて全面的に協力してしてくれました。私達にとって思いの深い一曲、よろしければ聴いてみて下さい。


トモ(Moshi-Moshi-Box)
東京都出身。ベルリン在住21年。
2010年にバンドMoshi-Moshi-Boxを結成。4人組だった当初はベース担当だったが、グループが小さくなるにつれて何でも担当することに(笑)。
小さい頃から様々な楽器に興味を持ち、周りに楽器がないと気がおさまらないタイプの音楽大好き人間。
本職は音楽とは関係はないものの、工学系のクリエイティブな仕事に従事。趣味も色々です。

Moshi-Moshi-Boxさんの詳細はこちら。
アーティスト紹介・Moshi-Moshi-Box

MV「The Sun」

Music by Moshi-Moshi-Box
Dance Performing by Sara Währisch
Video by Christoph Voy / „I Shot...“
Video Editing by HIROMI OBORA

Special Thanks to
Beatrice Gehrmann, Stephan Bienwald, Frank Böster, Yuko-san


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