2025/01/27
次回のシニア劇団の公演演目『天守物語』で舌長乳母という役がでてくる。文字通り舌が長いので舌長乳母なのだ。
『どうやって人間の舌を長く見せよう⁈』
映像なら簡単で、舌を長く細工して、舌の部分をフォーカスして別撮りすればいい。
しかし私達がやっているのは芝居なのでそうはいかない。『長い舌』と『フォーカス』の部分をアナログで見せねばならない。そして2本の手は表現に使うべく自由に動かせる様にしたい。
大きな舞台でその時の観客の目は紛れもなくその乳母に注がれている。
また、大きな獅子頭もプロジェクターなどで背景に写し出している団体も見た事があるが、アナログな私はどうしても立体で見せたいが為に張子で作った。
舞台照明も切れても線を繋げばまた点灯するというアナログで単純なものから今はLEDでプログラムする複雑な物に代わってきている。
アナログな私は芝居に限らず、少々世の中の進みの速さに戸惑っている。
宇都宮市にはデジタル政策課なるものがある様で、先日はシニアの男性に若い担当の男性がその活動などを話しているのを私は黙って聞いていた。これからますますデジタル進歩が加速していく様だ。
なんとか今までは世の中の流れに取り残されそうになりながらも、牽引される車のように引っ張られてついてきたつもりだ。大体私のデジタル化は知人友人が支えている。
書籍『九十歳。何がめでたい』で著者佐藤愛子さんは、
『「文明の進歩」は我々の暮しを豊かにしたかもしれないが、それと引き替えにかつて我々の中にあった謙虚さや感謝や我慢などの精神力を磨滅させて行く。(中略)もう「進歩」はこのへんでいい。 更に文明を進歩させる必要はない。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力である。私はそう思う。』
と書いている。私は大いに頷き拍手を送る。
私もスマホやタブレットで、調べ物ができたり、簡単な書類のやり取りが出来るのは大いに助かる。私はインターネット上の電子図書館、青空文庫などで朗読の作品を探して、コピペして数分で朗読台本を作る事がよくある。しかし、少々前の事だが、コラボさせていただいた先輩役者は図書館にその書籍を借りに行って1文字ずつパソコンで打ち私にくださった。申し訳ないのだが、その時には既に私の手元にはコピペした台本があったのだ。
必要以上に時間を使い自分の体を動かしてはいられない時が最近良くある。効率的に動かないと仕事がこなせない。この時ばかりは、スマホやインターネットは大いに助かる。
それとは対照的で何かのイメージを形にする時には、こんな詰め詰めの頭の状態では良い閃きや面白い物が浮かんで来ない。
12月に宇都宮市の図書館でこんな図書館あったらいいな…という『あるかしら図書館アイデアコンクール』が開催された。
たまたま応募初日が一人芝居『クリスマス・キャロル』の稽古用に日程がとってあった。朝いつもの様に早朝に目が覚めてしまい、その時間からアトリエで稽古するのはさすがに早いだろうと思って、何気に図書館のアイデアコンクールの事を思い出し、油性マジックと色鉛筆を使って書き始めた。余裕のある早朝の頭の中は整理されている様で、割とスラスラと筆が進み、20、30分で書き終えた。
今日はその作品が図書館賞に選ばれたとの連絡を頂いたので、応募作品を見がてら記念品を受け取りに図書館に行った。書店賞、図書館賞含め応募された全ての作品が展示されており、特に子供達の作品が発想も異次元的で面白く、曲がった線や塗りむらがあるものの、その作品に向けられた情熱が伝わってきて私もなんだかホッとする。
自分は世の中の流れに戸惑っているのではなくて、出すべき情熱がデジタル化がもたらすスピードによって削られているのではないかと、ふと思う。
準備中