[ Spinart(スピナート) ] - あらゆる表現者・アーティストと出逢えるサイト

Logo Mark連載記事

Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝世界一不幸な男が、世界一幸せな男になるまでの物語 古市佳央さんのセルフストーリーオペラ

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

続きを読む

野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
アーティストのみなさんと接する機会も多いのですが、どんな人の心を揺らしたいのか、何を感じてほしいのか、人に言いたくなってしまうことはどうしたら起こるのか、そもそもあなたのアートによって人はなぜ幸せになるのか…答えは1つではありません。でも、常に考えていたいですね。そんな皆さんのヒントになれば幸いに思います。
106回目のコラムです。6月29日六本木のライブハウス「AZABU balloon」にて、世界一幸せな歌う講演家古市佳央(ふるいちよしお)さんのセルフストーリーオペラを観劇してきました。古市さんは、2000年より講演活動を始め、2020年現在で講演&ライブ回数は1300回を超え、10万人以上の聴衆に感動と勇気、生きる希望を与えて続けている方で、オープンハートの会会長、一般社団法人きらきら代表理事でもあります。


■ 古市佳央さんのセルフストーリーオペラ

古市さんの壮絶な人生ストーリーを、劇団四季のトップだった阿部よしつぐさんと古市さんが歌と語りで、ピアニスト藤本ゲンさんが演奏で表現していく構成なのですが、このコラムでも何度も登場していただいている大山峻護さんが、人生変わるレベルの衝撃を受けて、大山会で主催して実現したセルフストーリーオペラです。もちろんあっという間に100名ほどのキャパは埋まり、熱狂的な古市ファンも興奮気味の顔で参加していました。古市さんの壮絶な人生は大枠は聞いておりましたが、セルフストーリーをオペラにするということ、そして、それをどんな表現を使っていくのかということなど興味津々で会場に伺いました。


■ 古市さんの壮絶な人生

高校一年の春、バイク事故で炎上したバイクから離れられずに火ダルマとなり、重度熱傷41%という、生死をさまよう大やけどを負いましたが、奇跡的に命だけは取り留めました。顔や手に大きな損傷を残し、変わり果てた自分の姿に絶望し、真剣に自殺を考えるが、骨盤や腕の骨折と包帯ぐるぐる巻きのミイラ状態でもあり、身動きひとつ取れずに死ぬことも許されなかったそうです。自分の手を見て、顔を想像し、親にどうなっているか聞いても、医者に治るのか聞いても返事が返ってこない絶望。その後、33回に及ぶ皮膚移植手術や手や顔の再建手術を重ね、3年間に渡る治療やリハビリをします。この世で自分が最大の不幸と感じていると、重度熱傷55%の方と出逢う。他にも自分の方が辛いというところを探すが全部負けている。そんな入院患者や病院の方々とのふれあいを経験し、再び生きる希望を取り戻していくことになります。
23歳で退院後は、一般社会の人々の好奇と嫌悪、同情の視線にさらされながらも、がむしゃらに生きていく。印象に残ったのが、「言葉で切り刻まれた自分の心だが、言葉でやさしさを伝えていきたい」という思い。体の血液はすべて輸血で入れ替わった。これから他人に輸血で貢献することはできない。それではこの感謝をどうやって伝えていくのか。
そんなとき、リハビリメイクの第一人者のかづきれいこさんと出会い、講演を薦められ活動を開始することになる。「みんなにあなたの話をしてくれる?」最初は、この容姿で人前で講演?と断るが、「それだから伝わる、それが本当の社会復帰」という言葉で活動を開始。現在は、障がい者と健常者の垣根をなくし「生活の質」の向上を目指す、『オープンハートの会』の運営や、自己の体験を通じて得た命の大切さや本当の幸せとは何かを伝えるため、全国での講演活動や歌でのライブを行っています。全国各地の小中学校や高校、大学、保護者や経営者の集まりなどにも招かれての講演活動にも力を注いでいます。
また、たくさんの方を幸せにするために、講演者の育成も兼ねて、女性が自分の人生を語る講演会、キラキラ女性講演会や男性の講演会のサムライ講演会などの企画や、講演の指導など活動しています。その活動はほんとうに精力的で驚かされます。感謝が古市さんを突き動かしています。ぜひ古市さんのホームページもチェックしてみてください。

生涯を通しての目標
自殺者のない、思いやりに溢れた社会
身近な人を認めあい、笑顔が溢れた社会の実現


■ 世界一不幸な男が、世界一幸せな男になるまでの物語

 つながろう、ワンファミリー! みんながひとつになる世界へ
  全身やけどを負い、火だるまになった男が、逆境から立ち上がり、世界一の幸せ者になるまでの軌跡
こちらは古市さんの最新刊のタイトルです。ある小学校での講演で小学生から、「タイムマシーンがあったら事故の前に戻りたいですか」という問いに、
「タイムマシーンがあっても、決して過去には戻らない! なぜなら、つらい時期を乗り越えた今の自分が幸せだから。今の自分を愛せるから。」
と答えたとのことです。そして、今の自分があるのは、今の仲間たちがいるから。タイムマシーンで戻ってしまったら、そのすべての人々に会えないではないか!

第1章 これまでの道のり
運命を変えた日、生死をさまよった数日間、地獄の日々がはじまる
つらいリハビリと治療を乗り越える、世界で一番不幸な自分
同じ痛みがわかる仲間との出会い、鏡の前にいた別人の顔、内面を見てくれる人との出会い
第2章 人生に影響を与えてくれた大切な人たち
永遠の師匠おばあちゃん、嘘をついてくれた担当医、普通に対処くれた看護婦さん
同じ痛みを共有できた〇〇君、講演への道を開いてくださったかづきれいこさん
悩みを抱えていた読者(人を外見で判断していたのは自分だった)、人とのご縁をつなぐ大山峻護さん
第3章 ワンファミリーで1つになろう
ワンファミリーへの思いを強くした「東日本大震災」80回通った被災地への訪問
「弱音を吐く会」で涙を流した人たち、友達に会いに行ったから続けられた
第4章 あなただけの物語は誰かの希望になる 12万人の聴衆に向けて語ってきた日々、人生が激変した参加者、歌う講演家へ
第5章 幸せなるために
第6章 やさしい社会へ
こちらはぜひ読んで感じてください。


■ 当日のオペラは

冒頭に書いたように、古市さんの壮絶な人生ストーリーを、劇団四季のトップだった阿部よしつぐさんと古市さんが歌と語りで、ピアニスト藤本ゲンさんが演奏で表現していく構成です。古市さんのほんとうに情景が伝わってくる語り…明確な事実と、あふれる感情が伝わってきます。そして阿部さんのとてつもなく迫力のある、そして悲しさや喜びが心を揺らす歌唱、そして古市さんの心を揺らした方の語りまで…。藤本さんは絶妙なピアノを入れてくるのですが、ほとんどアドリブであんな世界を創るなんて…。素晴らしいセルフストーリーオペラでした。
ちょうど私が、他範囲に渡る経営者壁打ち、理事もしている学校の改革に加えて、ほぼ4人の介護が見えてきた中での、両家庭での考えられない問題(私の家は大丈夫です)という時でして、このオペラを観て、「待てよ、何でもないんじゃないか、むしろなんで介護を楽しんでいないのだろうか」とあっさり感じました。良く考えれば、かつて在籍した企業の大混乱(リクルート事件、ローソンチケット事件など)のときも前を向いて進んできたじゃないか…と。そして、エンターテインメントだからこそ伝わることもありました。ステキな時間と空間でした。そしてステキなさとみさんとのエピソードに涙が溢れました。古市さん、ありがとうございました。

この記事への感想はこちらへどうぞ

この記事への感想を送る


野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

続きを読む