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Logo Mark 「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝 FC町田ゼルビア 逆境を逆手にブランディング

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
131回目のコラムです。以前のコラムでも何度か紹介した顧問先の株式会社聡研プランニングのマーケティング事例研究の共有会にて、また面白い事例が出ましたので、今回は、それを共有させていただきます。


■ 聡研プランニング

リクルートのゼクシィの付録を作っていたり、何球団ものプロ野球のオリジナリティの高いグッズが評判のノベルティ・ツールを創っている会社です。後発でプロ野球球団のグッズ販売の門をたたきましたが、この2年ほどでほとんどの球団にオリジナル商品の提案を受け入れていただいています。プロ野球からはじまり、JリーグやBリーグにもかわいがっていただいており、そんな中から東京のサッカーチーム町田ゼルビアのブランディングがおもしろいということで共有されました。


■ FC町田ゼルビア

昨年J1で怒涛の快進撃を見せていてメディア露出も増えていたので知っている方も多いかもしれません。チーム名は、町田市の木であるけやきの英語名の「ZELKOVA(ゼルコヴァ)」と町田市の花である「SALVIA(サルビア)」を合わせたものになっています。
2023年にJ2優勝、2024年からJ1初参戦しての現在の進撃です。2024年の成績は、リーグ戦3位(19勝10敗9分)となっています。


■ 1989~2020年 観客が増えない根深い理由

最高成績J2で4位。観客動員数は4,000~5,000人でJ2下位の観客動員数。このときのアルビレックス新潟は観客動員数15,000人程度でJ2トップ。なによりもアクセスの悪さ。なんと最寄り駅からバス20分、徒歩なら60分という立地。バス待ちも大行列、乗れたとしても一車線しかないため大渋滞でかなりの時間がかかる。アウェイサポートからも不評の嵐で、スタジアムから足が遠のくばかりの状況でした。あるXの投稿を流用すると、
「この日は、試合後もバスに乗れず、なかなか帰れないサポートが続出。バスに乗るために2時間待ち。」
という感じ。歩いて帰ったチャレンジャーからは「下山」という表現も。かなりの難易度がありました。


■ 2021年 天空の城プロジェクトスタート

ホームスタジアムを「天空の城」としてブランディングを行うプロジェクトが始まりました。会場は山の中にあり標高が高い。この条件を逆手に取り、RPGゲームにある「山の上にそびえている天空の城」をコンセプトに会場を再設計。わざわざ行ってみたい理由の創造に着手しました。
Jリーグ初のコンセプトスタジアム「天空の城」として、会場地図もRPG風にしてゲームの中に入り込んだように作りこみました。グッズショップも城をコンセプトにした雰囲気作りのため、ショップの名称が「武器・防具屋」になっています。遊技場という名のガチャガチャ場はドラクエのカジノ的なノリをかもしだしています。その他のブース、スタジアムグルメのMAPなどあらゆる場所が、お城・RPG風になっています。イートエリアにも、樽が置いてありルイーダの店で食事をしているようにセットしています。「再入場」という言葉をとっても、再入”場”ではなく再入”城”。山の上にそびえる、”アクセスが大変という2点を逆手に取って「天空の城」のブランディングをしました。徒歩60分コースを『セルフ男気コース』と名付けたりもしています。


■ 観客動員数増加は?

2019年に5,000人弱だった観客動員数は、2023年には7,500人、そしてJ1に昇格した2024年には17,600人と急増しました。
大きかったのは、2018年にサイバーエージェントが経営権を獲得したこと。私もこのコラムでよくプロレスについても書いていますが、プロレスリングNOAHやDDTプロレスリングの経営権も獲得し、配信ビジネスを強化することでプロレス界の未来を示してもいます。大きな資本と技術はすごいですね。
これによりFC町田ゼルビアの経営基盤の強化や、ファンサービス、デジタルコンテンツの充実などが実現しました。2023年にメインスポンサーに就任したことで実力のある外国人選手の獲得なども進み、2024年からJ1の舞台で戦えることになりました。昇格を決めたシーズン終了後に、町田駅前の原町田大通りにおいて、選手・関係者らがスカイバスに乗り込んで「J2優勝・J1昇格パレード」を開催し、沿道には主催者発表で8千人が集まったとニュースになりました。
おもしろいブランディングの事例ではありますが、そうは言っても観客の多くはバス輸送に依存しているのも現実なので、多摩都市モノレールを延伸する際にはスタジアム付近に駅を造る計画が立てられているとのことです。


■ まとめ

天空の城プロジェクトは非常におもしろい戦略でした。もちろんサイバーエージェントの経営参画によるチーム力強化が大きく観客動員を伸ばしたという要素が強いと思いますが、「不をステキに変える」という発想は勉強になります。汚い、臭い、接客感がない古本屋を、新刊書店みたいな古本屋に変えたブックオフなんかも「不をステキに変える」代表のような事例ですね。ストーリーのある楽しい企画をいろいろ提案してみたくなりました。
この共有会で発表したメンバーは、この難関ともいえるスタジアムに自分の足で体験してきたようです。何事も自分で確かめるって大事ですね。この原稿を書いている7月24日段階で、FC町田ゼルビアはJ1で6位につけているようです。大変そうではありますが、天空の城に行ってみたいと思います。

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野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
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