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Logo Markなにか創るとうれしくてコンテンツの魅力について考える〜AKB48とはなんだったのか

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 日本のエンタメ業界において特徴的なものの一つに、アイドルというジャンルの存在があるかなと思ったりするんだけれども、これは昔からありながら変質を重ね、おそらくはモーニング娘。が出てきたあたりから現状スタイルが始まり、そしてそれはAKB48で現時点での最終形ということになったんだろうなぁと思ったりする。
 しかもそれが10年以上もつづき、さらに坂道シリーズに継承されてこれからも生きつづけていきそうだなんて、正直微塵も思っていなかったから、このモデルがいかにすごいものだったのかなんてことを今さらながら改めて思ったりする。

 じゃあその肝はなんだったんだろう。
 まぁよく言われているように、楽曲やCDそのものの価値ではなく、直接逢える握手券やら総選挙における投票券というような別の価値を付加し、それによってニーズを喚起して売り上げを確保したということなんだろうけど、実はこの手法自体はけっこう以前からあったもののようにも思う。
 例えば山口百恵の時代や松田聖子の時代でも既に、新曲キャンペーンとか言いつつ街頭やレコード店で握手会やサイン会を開催するということはあったと思うし、それから随分と時代が下って、CDが売れなくなったなんてことを言われるようになって来た頃には、アーティストがCDに豪華ブックレットやらグッズやら、その他特典をつけて売るなんてことも始まっていたように思う。
 そういったものを、AKB48は、より明確な「アクションと結果の直結」として見せたことによって、ファン側がやるべき「貢献」とはどのようなものかを定義し、それをより直接的に収益に結びつけたという点で画期的だったということとは思うが、とはいえ、そのモデルだけでここまでの隆盛を極めることになったとも思えない。

 ではAKB48はなにが違っていたんだろう。
 考えられる一つの要素として、専用劇場があって、そこに行けば必ずなにかの公演があって、誰かには逢えるということかなとも思ったりする…でもなぁ、これも結局、売れ出してしまえば劇場にも出なくなってくるわけだし、後継の坂道シリーズにはこの仕組みがなくても成功していることを考えれば、これも要素の一つではあるものの、決定的な要因とは言いきれないようにも思う。
 まぁ仕掛ける側の視点で言えば、トップメンバーはテレビや大きな公演でしか見ることができないけれど、劇場ではまだあまり知られていないメンバーを出していくことで、次世代メンバーをしっかり育てていけるという狙いもあったのかなとは思うけど。

 やや話は逸れるが、実は自分、AKB48が出てきた当初はまったく興味がなかった。
「AKB48? あ〜、秋元康さんがモーニング娘。みたいなモデルで始めた奴ね。」
程度の感じ。
 それがちょっと変わったのは、マーケティングの先輩から、
「あれは面白いからちゃんと知っておいた方がいいぞ。」
的なことを言われたことがきっかけだった。
 ここで言う「面白い」はもちろん、彼女たちのキャラクター等がどうこうということではなく、それを売り出すための手法が面白いという意味だったとは思うが、まぁそう言われれば一応は見なきゃかなぁという気分にはなる。もちろん当初はめちゃくちゃ半信半疑。だって正直なところ最初にパッと見た彼女たちの集合写真の中には、誰一人自分の好みと思えるような顔立ちの子もおらず、ぶっちゃけそれまでのアイドル像から考えればかなり地味とも思えたから。
「確かにこれが売れて来てるって不思議だよなぁ。」
という思いでいっぱいだった。

 しかし調べていく内にその思いは変わる。
 まずそれまでのアイドルに比べて圧倒的に多かった舞台裏での彼女たちをオープンにしまくっている動画の質と量がすごかった。
 確かにこの手法は、モーニング娘。がテレビ番組とのタイアップとして既にやっていたようには思ったが、しかしそれよりもはるかに多くの場面でカメラを回し、そこで見ることのできる赤裸々な姿も情報量が半端なく多く、また、その中での彼女たちはカメラが回っていることなどまるで気にしていないようにあけすけに笑い、そして泣く。数々の失敗場面も、まぁ遠慮なくオープンになっている。正直、ここまで見せるか、すげぇなと思ったものだ。
 おそらくここから成長の物語を見ているというファン側の心理が大きく深まったのではないかとは想像する。そこにいる彼女たちは、これまでのアイドルのようにやや遠い存在ではなく、まるっきり未完成のかなり普通っぽい少女であり、ファン側としては、それを応援し、前出のように明確に示された方法で貢献することで、彼女たちを自分たちの手で成長させることができるという自己充足感も得られるという新しい価値を生み出したということが大きいなと思った。

 そしてもう一つは、彼女たちがアイドルとは思えないくらい身体を張ったバラエティーにチャレンジしていたことだった。
 アイドルが粉を被る。アイドルが色水を被る。アイドルがとんでもない変顔をする。アイドルがゲテモノを食べる…今では割と見ることができるようになったこれらの演出も、おそらく草創期のAKB48以前ではここまではやっていなかったのではないだろうか。だって初めて彼女たちのバラエティー番組を見た時には正直ちょっと引くくらいだったもの。
 これらも、当時の彼女たちや関わっているスタッフさんたちが持つ必死さの現れだったかなとも思うが、いやぁその過激さはホント、ちょっとそれまでには見たことがないものだった。
 自分はここで思ったのだ。
「AKB48恐るべし…。」

 実はこの2つとも、今のAKB48にはないものになったようにも思う(一部の地下アイドル以外には、その他のアイドルにも継承されていないかも)。彼女たち自身の成功や時代の変化によって、こうしたアプローチが不要になったということかもしれないが、今になって「AKB48とはなんだったのか」なんて考えてみると、インパクトという点ではちょっとこぢんまりしたようにも感じるのは正直なところ。
 まぁ、今は今で、Showroomのように新しいアプローチ手法もあるようだから、当時とは違った別の仕掛けが動いているということなのかも知れないけれども。

 ということで、今回なんでこんなことを考えたかと言えば、これからいろいろ表現を広げていこうとする自分も含めた多くの人たちにとって、その手法としてどのようなことを考えるといいのだろうか、なんてことを考えた時、一つの成功事例として面白いと思ったからということだったりする。
 さて、この事例をどのように考えてどのように応用するか。上記とは異なるまた別の要因を発見していくことも含め、考える楽しみは尽きないかなと思う。

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※ちなみに写真は、栃木県那須烏山市で開催されたあるイベントで撮影したもの。
 こういうのを見ると思わず「隊長!」って言っちゃうのは、あの番組を見てた人にはきっと分かる感情かなとw
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 6D + EF24-70mm F2.8L II USM

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