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なにか創るとうれしくて嬢メタルから考えるネーミングからのコンテンツ再興

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 この世に「嬢メタル」なんていうジャンルがあることを知ったのはおそらく、ここ2年くらいのことじゃないだろうか。そういえばヘヴィ・メタル専門誌「BURRN!」誌上でもやたらと目にするなぁと。
 「嬢メタル」とはその名の通りヘヴィ・メタルカテゴリの中の1つのジャンル。特徴としては、音はいわゆるヘヴィ・メタルなんだけど、メンバーが女性、もしくは少なくともメイン・ヴォーカリストは女性ということが条件としてありそうと感じる。しかも大抵の場合その容姿がケバい。まるでお水の世界にいそうと思うような人もいるしアニコスの世界にいそうと思うような人もいる。
 音はヘヴィ・メタル系とは書いたが、それもかなり偏りを感じる。乱暴な言い方をすれば、全盛期のジャパメタそのものというか、つまりバックはある程度メタルな音をしているのだが歌メロがめちゃくちゃ歌謡曲っぽいという…こんなことを書くと申し訳ないけど、なんか古くさいなぁと感じたものだった。

 聞けば、今メタル系な人たちがたくさん出ているライヴハウスではこの「嬢メタル」な人たちが人気で、かつ、新しい人たちが出てきたなぁと思ったらすぐに事務所に引っ張られていくんだ…等と言うことを、友人の、こちらはゴリゴリの正統派メタルをやっている奴から聞いた。
 彼の物言いの中には言外に「俺は嫌い」「大してすごくもないのにいい思いしてムカつく」というような思いも滲んでいるように感じて、それはそれで今のリアルなライヴハウス・シーンを垣間見たような気がしてちょっと面白かった。

 でもさ、こういう人たちってけっこう昔からいなかったっけ?…と思い出す。
 代表格としてはなんと言っても日本のヘヴィ・メタルの草創期から活躍し続ける浜田麻里「様」だろう。あの圧倒的かつ驚異的なヴォーカル。コーラスを担当する実妹・ERIさんとのコンビネーションもバッチリ。そしてやっぱり美しかった。
 そしてその後に出てくるこれも姉御系の典型とも言えるShow-Yaがいるし、まぁメタルとは言えないけどプリンセス・プリンセス、レベッカ、バービー・ボーイズ、Pink Sapphire(バイト先が一緒だったから名前を挙げておくw)等々、女性が中心的なアイコンとなって活躍したバンドは数多い。
 それがなんで今「嬢メタル」なんていう新しい名前を与えられて盛り上がっているのだろう。

 考えてみれば、昔はこんなに女性であることのアドバンテージを前面に押し出すような手法はなかったかもしれない。いや、あるにはあったか。女性アーティストは大抵露出が多かったし、女性であることを武器として使ってはいたとは思うが、それでもメタル・シーンの中心は男性アーティストのもので、それはおそらく、とてつもないパワーや技術を必要とするメタル・サウンドに、女性アーティストがあまり対応し切れていなかった(どうしてもちょっと弱く見えるとか)ということも大きかったのかもなと思う。
 だから当初メタルの世界は、やる方も見る方も、まぁむさ苦しい野郎ばっかという世界だった。

 それが変質したのはきっと80年代、Bon JoviやらLAメタルなみなさんが大量に現れた頃かも知れない。この時に現れたみなさん、みんな一様にイケメンだったりする。で、それに吸い寄せられるように一気に女性ファンが増えた。曲もだいぶポップになってたし、売り出す方もかなり意識していたのではないかと思う。
 だから客席は女性が増える。となると女性アーティストはさらにちょっと分が悪い。どうしてもイケメンの方が強いなんてことになるかなと。
 しかしそのブームが一段落すると、そうした女性ファンも引いていき、今度はシーンの縮小が一気に始まる。そこで残ったのが、本当にメタル好きな男性…しかも古くからのファンだから年齢層はやや高めということになったということかなと。

 ここで鍵になるのはやっぱBABYMETALかなぁ。上記のような流れと考えられる客層の変化に対してはちょっとした爆弾のようでさえあったように思うもの。
 年端もいかない、そもそも「メタル」という音楽ジャンルさえ一度も聞いたことがないと言う女の子たちに、半ば謀って(笑)メタルっぽい曲を歌わせちゃう。その上バックには、当代最強と言えるほどの手練れ集団を配して打ち出されたこのコンテンツはまさにぶっ飛びだったし、そして自分も含めたおっさんファンにとっては、あんなかわいらしい女の子たちが首も千切れんばかりに全力でやるパフォーマンスは、微笑ましい以外のなんでもなかった。

 まぁザッとだけれども、おそらくはこんな流れが、「嬢メタル」への変遷であって下地になったものかなぁと思う。

 でも、既に書いたようにそれは前からあったんだよなと。それが今また突然クローズアップされる理由ってなんだろう。その大きな要因の一つはネーミングじゃないかなと考える。
 誰がつけたか「嬢メタル」。美名のようでどこか皮肉や自虐も含んでいそうな絶妙でキャッチーなネーミングだと思う。こんないい名前をつけられたらそれが人々の頭に記憶される確率はかなり跳ね上がることだろう。それはかつての「ビジュアル系」のようでもあるし(あ、かつてじゃないね…「V系」という新しい名前の元まだまだたくさんいらっしゃいますよね;;;)、そもそも「ヘヴィ・メタル」だってイギリスの雑誌記者がつけた新語だもの(「NWOBHM」なんて単語を知ってるのはかなりのジジィかメタル好きだろうなぁ)。
 もっと分かりやすく言えば例えば病名がそうだ。それまで症状としてはあったが別の病気の一部分とされていたり、特に名前も付いていなかったものが、ある時突然それが独立した一つの病名になり、それを報道機関等がちょっとセンセーショナルに取り扱うと、その病気だと訴える人が一気に表層化して、さらに薬屋ではそれに関する薬が大量に販売され始めたりする。この辺の動きについては、人間心理をうまく突いた薬業界や医療業界のマーケ戦略なのではないかと疑いたくなってしまったりもするが、しかしこれは、分かりやすい名前がつくことでヒットする典型事例と思う。

 つまり、ここまで書いてきたような流れがあった上で「嬢メタル」という名前がつき、それを体現するような牽引役がいて(名前と牽引役の存在順は逆かも知れないけど)、それにメディアが絡んだ結果、今ちょっと盛り上がって見えるようになって来たということかと考える。

 さてそうなると、今後問われるのはこれのコンテンツ力だなぁ…と思うけど、ここに踏み込むとさらに長くなるので今回は止めておこう。話をネーミングに留めることにする。
 ということで、みなさんも自分たちの作品に対し、勝手にジャンルやカテゴリ名を発明して、それが過去にない新しい表現なんだとしてアピールしてみたらどうだろう。それがいいネーミングで、追随してくるバンドが出てきて(これを敢えて一緒に組んで展開するという手法もあるね)、それをメディア展開できたりしたら、ひょっとしたら今はない新しいムーヴメントを作っていくなんてことができるようになるかも知れない。
 「嬢メタル」に対しネガティヴな反応をするより、そこから学んで新しいなにかにつなげる方がきっと楽しいと思いますぜ。
 そう言えばハッピーなヘヴィ・メタルだから「メリー・メタル」っていうジャンル名を名乗っていたバンドもあったなぁ…あ、やま♪げんさんがいた「Pax in TerroR」の話ですけどね…これもかなりよかったと思います。
 やま♪げんさんの詳細はこちら。
 アーティスト紹介・やま♪げん

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※ちなみに写真は栃木県板室温泉神社で撮った一枚。
 これもかれこれ10年ほど前に撮った写真ですが、やはり色バランスをずらして撮ってます。
 魅力的な顔の狛犬でした。
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 50D + Sigma 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM / EX DC

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