Logo Mark連載記事

Logo Markなにか創るとうれしくてキノコスープに学ぶすごいコンテンツの肝

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 今回はちょっと趣向を変えて、あるレストランの1メニューを題材に、すごいコンテンツというものについてちょっと考えてみようかなと思います。

 それはキノコスープというもの。
 これは、栃木県宇都宮市に長らく存在していた「トレビの泉」というイタリアン・レストランの看板メニューで、「トレビの泉」がなくなった後は、そこの料理長だった方がご自身で経営しているレストラン「和&イタリアン Dining Stage 心 KOKORO」のやはり看板メニューとして、今でもおいしくいただけるメニューです。

 和&イタリアン Dining Stage 心 KOKORO
 〒321-0952 栃木県宇都宮市泉が丘2丁目2-10 優泰佳ガーデンコート 1F
 028-660-8198

 さてこのメニュー、なにがすごいかと言えば、まず出てきた瞬間のその見た目に驚かされます。
 銅の叩き出しと思われる特徴的なカップ型の容器の上には、ドーンと、そのカップが見えなくなるくらいの迫力で乗っているパンのドームですよ。初めて見た時(当時はまだ高校生でしたが)思わず「なんじゃこりゃ!」だったことを今でも思い出します。
 で、それをどう食べるかと言えば、それはもう以前ちょっとテレビでも見たことがあったアレです。そのパンのドームをフォークやらナイフやらを使って、わずかに入った切れ込みから見えるカップの中のスープへと落とし込んで一緒にいただくわけです。
 つまりこのメニューの名前「キノコスープ」は、まずその出てきたときの見た目を表現しているということなんですね。

 で、まぁきっと普通は上記のようにいただくのが筋なんだろうなと思うんですが、みなさん、是非まずはこのパンだけをちょっとちぎって食べてみてください。
 これがまたうまいんですよ。まずは口当たりのモチモチ感。いわゆる普通のパンのようにフワフワしている感じではありません。もっと密度の濃い、モチっとした食感がたまりません。
 そして香り。おそらくは白ワインと思われるいい香りと、ひょっとしたら酵母かなにかかなと思わせる香りがパァッと広がって、思わず口の中で少し転がしてみたくなるなんて感じなんですね。
 これはもちろん、後にスープに漬け込んでからでも楽しめますが、しかし是非その前に一度、パンをそのまま楽しんでいただければと思います。

 そうそう、どうせならこの後にスープも単体で味わってみるともっとうれしいかもです。
 スープはクリームベースのトロりとしたコクのある仕上がり。こちらは名前とは若干印象が異なり、それほどキノコのキャラクターを強く感じるというものでもないんですが、これもまた口の中でいろいろな香りを感じることのできる、本当に素晴らしい味なんです。

 で、やおらそのパンをスープに沈め、スープが絡んだパンを口に運ぶという感じです。
 するとまぁ、パンの香りや食感と濃厚なスープがホント見事に合わさって、これがもうおいしいのなんの。
 パンを一かけらずつスープにつけて食べるもよし、その後少ししたらもう、残っているパンを全て剥がして全部つけてしまってズブズブにして食べるのもよし、という感じなんです。
 パンをひとかけらずつつけて食べると、それはもう本当にいいバランスでおいしく食べられるんですが、漬け込んでビッチャビチャにして食べると、今度はパンにスープが染み込んで、また別の食感を楽しむことができるんですね。

 さらに楽しいのは、銅の容器に張り付いているパンも全てきれいに剥がし取って食べるという行為。
 これ、最初はけっこう難しいです。銅のカップもそこそこ熱いですしね。しかも食べ方の作法としてはきっとNG。でもこの剥がし取った時の達成感と、そこでまたパンを単体で食べたり、スープへの漬け方をちょっと変えてみたりと、実はこの過程、ちょっと食べ物で遊んでいる感じもしていたずら心も刺激されます。

 で、パンとスープでお腹も心もすっかり満たされて、あ〜おいしかったとなる一品ということですね。

 ちょっと対象コンテンツの解説が長くなりましたが、このコンテンツ、なにがすごいかって話です。

 まずキャッチーですね。
 名前がシンプルに「キノコスープ」。なんだか舌を噛みそうなくせにまったく頭に残らないような難しい名前ではありません。
 そしてキャッチーなのは名前だけではないんです。そう、見た目。銅の容器の上をカバーするように乗っているパンのその形状は、他ではなかなか見ることができないことで記憶に残りやすい上に、そのキノコヘッドみたいな形状につけた名前がシンプルに「キノコスープ」という…これ、もう忘れるはずがありませんよね。
 自分らのように年齢を重ねていくと、モノの固有名詞なんてものはホントにすぐ忘れるので、
「あれあれ、あれさ、なんだっけ。」
なんていう会話が日常的になるんですが、このコンテンツに至っては、
「あれあれ、あれさ、あのキノコみたいな形の…。」
なんてところまで思い出したらもうその時点でほぼ名前が出ているという強力さを持っているということなんですね。
 まさに名は体を表す。恐るべきキャッチーさだと思います。

 そして食べる過程も記憶に残りやすいんです。
 パンをちぎって崩す、それを一旦そのまま食べてもいいし、いきなりスープにつけて食べてもいい。自分で選べるんです。パンの漬け方や漬け込み具合も自分で選べる。さらにはパンを剥ぎ取ったりしてちょっと遊べる。
 それを一緒に食事する相手とキャッキャ言いながら食べたら、もうその体験自体が素敵な思い出です。
 こんな感じで、自分で能動的に動いて得た体験ってのはホントなかなか忘れませんし、それが素敵なものであれば、その記憶自体がドーパミンを出してくれる元にもなるかと思いますから、もう一度アレが食べたいなんてことになりやすいという構造ですね。
 マスターがこんなことまで考えてこのメニューを生み出したのかどうかは聞いたことがないのでなんとも分かりませんが、もしそんなことも考えていたということなら、これはもう行動心理学的な実践者ということになるかもと思っちゃいますね。

 そして最後に、これが一番肝心なんですが、とにかくうまい。
 これが普通って感じだったらその記憶は弱くなるんです。逆に大してうまくもないものだったら、そこまでの仕掛けが大仰なものに思えて逆に反感にさえつながります。
 よく、やたらといい雰囲気のお店で、やたらと見た目的にデコレートされた料理が出てくるなんてことあるでしょ。ところが食べてみるとさほどでもない。結果、その店にはきっと二度と行かないと思います。まぁ話の種にはなるかもしれないけどそれは肯定的な話の種ではないでしょうし、もちろん他の誰かを連れていきたいとも思わないでしょうねぇ。
 この「キノコスープ」は、そこのインパクトもすごいから成立しているんだと思います。
 特にこのパンがすごい。似たような形状のメニューは他のお店でも食べたことがありますが、ここのパンの食感と香りを超えたものは今までまだ知りません。ポピュラーなものだと、このドームがパイでできているものが多くありますが、確かにあのサクサク感はおいしいですけど、このパンの感じにはちょっと負けるかなぁなんて思います。まぁこれは完璧に主観的な好みの問題なので、もちろん人によって感じ方は異なるとは思いますが。
 とにかく自分にとっては、これを超えるものにまだ逢えていないという感じがしているという点でも特別だということですね。

 しかも値段もお手頃なんだよなぁ。高くてうまいは当たり前だと思うんですけど、この価格帯でこのコンテンツを提供できるって、なかなかすごいと思うんですよ。
 キノコスープ単品で880円、サラダとドリンクをセットにすると1,280円、さらに、オードブル、サラダ、パスタ、デザート、ドリンクのセットでも1,680円ですよ(2019年12月現在)。これでこの食体験ができるなら、もう全然お安いなと思っちゃいます…ってこれも主観ですけどね。
 まぁ値段的にお手頃というのは別の効果もあって、こうした食系のコンテンツに必要な繰り返しの利用にも有効なんですよね。このくらいの価格帯なら、自分なんかでもちょこっと行けますから。

 さて、いつにも増してやや興奮気味にだらだらと書いてきましたが、まとめると以下のようなものと思います。
 順番は逆になりますが…、
 1. 品質がいい。
 2. その品質を体験する過程にバリエーションがある。
 3. その品質を体験する過程が記憶に残る。
 4. ハイ・インパクトでキャッチー。
 という感じですかね。う〜ん、すごいな。

 じゃあこれを他のコンテンツ、例えばアートに置き換えるとどうでしょう。
 まぁアート作品は厳密には商品コンテンツとは言えないとは思うので、ストレートにこれを当てはめて考える必要はないかもしれませんが、そのプロモーションを考える際にはものすごく参考になりそうですよね(自分はそう思うんですけどみなさんどうです?)。
 ということで是非是非考えてみてください。まずは是非一度食べに行ってみてください!w

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キノコスープのキャッチーな見た目はこちら

 ね、すごいでしょ?
 この形でネーミングが「キノコスープ」ですよ。
 もう絶対忘れないと思いません?

これが例のパンです

 パンの断面、見えますかね。
 この生地の感じを見ていただければ、なんとなくこの食感をご想像いただけるかななんて思いますが。
 でもさすがに香りは伝わりませんね。
 この素晴らしい香りはね、是非こちらにお越しになって実際に体験してみてください。

パンを剥ぎ取って遊びますw

 これがけっこう難しい。
 そしてこの時点でまだけっこう熱かったりもします。
 でもやり切ると不思議な達成感があるんですよ。

パンを浸していただきます

 こんな感じでパンを浸しながらいただきます。
 自分的にはズブズブに漬けちゃっていただくのが好みです。
 うちのカミさんは、程よくつけてバランス良くいただく方が好きだと言ってますねぇ。
 それぞれで好きな食べ方ができるのも、「キノコスープ」のすごいところですね。

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