Logo Mark連載記事

Logo Markなにか創るとうれしくて新型コロナな今考えるライヴハウスの運営

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 新型コロナな今、緊急事態宣言も解除されて少しずつ世の中も復活に向けて動いていこうとする今、心配なのはライヴハウス等々のイベント・興行系事業はどうしていくかということかなと思うので、現時点で思っていることを書いてみることにした。

 まずは感染防止ができているという状態作り。まぁこれが当面一番のポイントになるかなと。
 要は3密な状況があることで感染リスクが高まるということになるけれども、特に小規模のライヴハウスはまさにこの状態になる典型パターンかと思う。
 じゃあどうするか? できるだけ容易に、ほぼ全ての事業者がやりやすいことということで考えると以下のようなものかなと思う。
 1. 入場時検温の徹底
 2. マスク着用の徹底
   場合によってはフェイスシールドも
 3. ステージと客席の間にアクリル板等の設置
 4. 入場制限
 5. 飲食物提供の制限
 まぁ「1」と「2」は、ちょっと手間が増えてしまうけれども実施可能だろう。
 「3」はちょっと工事が必要で、かつライヴの醍醐味が減じるのをどう防止するか等の工夫が必要で、もし他にもっといい方法があれば考えたいところだが、とにかくライヴハウス空間の中でもっとも飛沫が飛ぶ可能性が高いのは、ステージの、特にヴォーカリストからの唾だったりするから、これは抑えていることをしっかりと示す必要があると考える。
 まぁ欲を言えば、場内の換気をもっとグレードアップする等ができればとは思うが、ライヴハウスによっては地下だったり、そもそも防音のために密閉性を求められたりするのが普通なので、これは簡単にはできないところが多いだろうとは思う。なのでせめてステージ客席間のシールドくらいはという感じかなと。
 問題は「4」と「5」だ。
 これをやると単純に収益が減る。ただでさえギリギリの状態で運営しているライヴハウスにとっては、営業を再開したところで、やればやるほど赤字ということにつながりかねない。
 しかし、3蜜を避けたり、口から入るウィルスの可能性を減じるためには、この2つもきちんとやっていることが必要になっちゃうんじゃないかなと考える。
 要は、二度と、ライヴハウスからクラスターを発生させないということが重要なのだと思う。これは想像でしかないが、このコロナ禍の初期において、大阪のライヴハウスを震源とするクラスターの発生と拡散がなければ、世間がここまでライヴハウスを危険視することもなかったのではないかとも思えるからだ。


営業モデルの再構築が必要ということかと

 それではどうやってその減ってしまった収益を担保するか。旧来モデルで考えれば、出演者にノルマを課すことで基礎収益を担保し、入場者数が少なくとも、その日1日単位ごとの収支はなんとかキープできるということになるが、昨今、アーティスト側が、ノルマがあるライヴハウスを忌避する傾向も高まっており、この従来モデルを実施できなくなっているライヴハウスでは状況がより深刻かと考える。
 つまり、ライヴ興行そのもの以外での収益の柱を新たに設ける必要があるということになるかと考える。
 まぁ願わくば、これまでノルマ有りのライヴ興行を避けてきたアーティストさんも、この状況下においては自分たちの発表の場を支援するというような気持ちで、一旦は(全額でなくとも)そういった従来モデルに協力するというようなアクションを起こしたりするといいかもとは思うが、とはいえアーティスト側だって自分の仕事が危機に瀕している可能性さえあるのだから、これも一概にそうすればいいということでもないようには思ったりする。
 また、ライヴ以外の収益としてもっともすぐに頭に浮かぶのは飲食系の強化というのがこれまでの流れだろうけれども、今回のケースではこれが効かない。
 入場数を減らすことはそもそも飲食してくれるベースの人数が減るということだし、飲食すればその分ウィルスが口から入る可能性を増すことになるかと考えるからだ。


副次的収入としてのグッズ販売

 ではなにができるか。副次的な収入としてすぐに頭に浮かぶのは物販の強化だ。それではなにが売れるだろう。一つはライヴハウスのオリジナルグッズを作って売るということだろうか。
 実際多くのアーティストが、CD等の販売に加え、タオル、ステッカー、Tシャツ、リストバンド、等をはじめとするオリジナルグッズの販売に力を入れていたりする。これのライヴハウス版をやるのもいいだろう。
 最近ではこうしたグッズを容易に作成してくれる業者も増え、さらにデジタル化の進化によって単価もだいぶ下がってきている。確かに初期費用がかかる取り組みではあるが、収益の増加ということに加え、ブランド力の強化的な視点から考えても、これはやってみる価値がある。
 ポイントは販路とは思う。
 ライヴハウスの店舗だけで販売していたのでは心許ない。そもそも入場者数を制限するという前提があるのだから、現地を訪れる客数はさらに減る。その相手だけを対象に販売事業を実施するのは現実的ではないようにも思う次第。
 だったらネットショップだろう。
 今はBASEやカラーミーショップのように、安価で手軽にネットショップ開設ができる。私たちのようなWeb制作会社に依頼しなくても、用意されているテンプレートをうまく使い、掲載する素材をうまく集めて設置していけば、それなりのネットショップが作れてしまうのだ。これを使わない手はないだろう。
 ネットショップを作ったのであれば、せっかくだからそこで、出演アーティストのCDやグッズも販売してはどうだろう。
 自分のオリジナルグッズだけでは訴求対象が狭い。しかし、出演アーティストにも益するようなサービスにまで持っていくことで、そのサイトへの来訪者も増やしていくことができるだろう。さらに掲載コンテンツが増えれば、ネット上でのSEO効果もアップする。つまり、検索で発見してもらえる可能性も増加するのだ。
 もちろんこれは手間が増える。また、原価のかかるグッズや、原則として流通的な立ち位置になるアーティストの商品は利幅が薄い。しかしそれでも、この運営によって得られるものは必ずあるものと考える。


ネット配信による収益

 これまでライヴは、原則として入場料を支払った客に対してのみ公開され、入場料を支払っていない人たちとの差別化のために、それは一般公開されないという形になっていた。しかしYouTube等の動画サイトが高性能化している今、その形も見直していい時期になっていると考えている。ましてや今、入場者を自ら制限しなければならない状況だとすれば、つまりは来てくれる観客はもちろんありがたいが、それ以外の顧客に対してもアピールすることで、同時に収益化することを考えてはどうだろう。
 つまりこれは、ライヴのネット配信だ。
 使えそうなサービスは既にある。代表的なのはYouTubeやShowroomだろうか。
 それぞれの収益化要件は、既に多くの方が書いているので検索してみるといいだろう。残念ながらこれは簡単とは言えないと思うが、それでも、発信を重ねていくことで、これを一つの収益源としていくことができるようになる。
 ここで、そもそもライヴハウスの強みとはなにかと考えてみる。それはもちろん大音量でライヴを、それも比較的近い距離で楽しむことができるということではあるが、しかしそのためには、プロ仕様の音響、証明、それを運用することのできる人材があるというのが大きいと言えると考える。
 とすれば、例えば固定カメラであっても、それを設置してPCにつなぎ、ネットを通して配信できる設備さえ設ければ、簡単に配信可能な環境を作ることができるのだ(これについては2011年出版の拙著「facebookデザインブック ステップアップ活用編」にも書いたけど)。
 アーティストにとってもうれしい効果があるのではないだろうか。
 これまでライヴを見せることができた対象が限定的だったとすれば、それをもっと広い対象へのプロモーション素材と位置付けた新たな活動形態へ持っていくことができる。例えばライヴ集客が今ひとつなアーティストだったとしても、ライヴをやることの意味を活用していくことができるようになるのだ。
 それも、自分のアカウントだけで、自分の既存顧客にだけ開示していたこれまでの手法ではない。ライヴハウスという、そもそも多くのアーティストが出演している存在はそれをやってくれる。そうすれば、他のアーティストのファンが、新たに自分たちを発見してくれる可能性もアップすると思えるのだ。
 そんなことをしたらライヴに来てくれなくなる?…まぁそう思えるのはもっともかもしれない。でもね、そんなんで来なくなるような人たちはそもそも本当のファンじゃないし、もっと言えば、そうなってもライヴを生で見たいと思うようなライヴをやれてないんじゃないの?…とかも思うんだけど違うかな。
 まぁそんなことを言っても対立を生むだけだから前向きに考えると、要は、ライヴに直接来てくれた人たちに、ああ来て良かったと思えるようななにかを用意するということなんじゃないかなと思う。
 生じゃなきゃ体験できないこと。生だから楽しめたこと。映像でもある程度は楽しめるけど、生だとそれが倍増しちゃうというような取り組み…まぁこれはアーティストそれぞれによって違うと思うのでここで一概にこうだ!と言うことは難しいけれども、これを考えていくことで、より自分のコンテンツを強化することができるようになるだろうと思う。
 ライヴハウスにとっては副次的な効果も見込める。
 例えばいろいろな映像収録の撮影場所としての営業。番組配信や収録場所としての営業。もちろん価格設定等のハードルはあるとは思うが、そこでうまく調整ができれば、これまで対象ではなかった新しいマーケットにリーチすることもできるようになるだろう。
 ちなみに、こうした新しい活動に対する事業者向けの助成金もあると思う。このコロナ禍の中で、新しい助成金もだいぶ増えていると思うので、地元自治体や商工会議所等に相談してみるといいだろう。今、ただでさえ資金的に厳しい状態とは思うので、こうした制度はできるだけ活用することを考えるといいと思う(手続きは面倒だし支給も遅いとは思うけど…)。


池袋Admさんによる先行事例

 先行事例はある。
 自分がまだクリムゾン・シャアというバンドをやっている頃散々お世話になったライヴハウス「池袋Adm」だ。
 ここの対応は早かった。
 いち早くYouTubeの収益化条件の充足に動き、独自のYouTube番組を展開。さらにグッズ販売や回数券型のチケット販売等をスタートし、ライヴハウスを応援したい顧客層の求心力を一気に高めて効果を上げている。
 もちろんまだまだ経営的に満足できるレベルに至っていないのかもしれないなぁと側から見ていて思うけれども、それでもこうした素早いアクションは絶対にプラスになるはずと思うし、オーナーの藤江さんをはじめスタッフのみなさんの素晴らしさを改めて感じたりした。
 ライヴハウス側がこれほど素早く様々な新しいアクションを起こしてくれたら、応援する方だって頑張れと思えるし、また、そこに出演するアーティストにとっても、とても頼りになる存在と思えるでしょ。
 確かに今はマジで苦しい。でも、やれることはあるってことかなと思うということかと。
 池袋Admオフィシャルサイト


とはいえ当面最大の問題は資金確保かなぁ…

 まぁ、当面最大の問題は家賃、固定経費と、人件費だなぁ…。キャッシュフローがあれば耐えられるかもだけど、そうでないライヴハウスも多いんだろうなぁ…。
 あくまでもし自分だったらどうするかと考えると…まずは自治体や商工会議所等に相談して、当座のつなぎ資金を速攻で貸してくれるところを探すかなぁ…。その上で助成金も探して、後からでも少しでも担保できるようにする。そうやって時間を稼いだ上で、ここまで書いたような事業面の強化を進める…。もちろん家賃支払い等の延期等も交渉するかな…ダメもとでも状況が状況なので、一旦はトライしてみるかなと。
 クラウド・ファンディングを使って支援を仰ぐという手法も考えてみてもいいかもとは思う。もちろんこれも手間のかかる話だし時間はかかるとは思うが、こういう言わば非常事態ではあるので、全てを並行して動かしておくことが必要かなとは思う。だってなにがうまくいってどれがコケるかは正直やってみないと分からないとは思うもの。
 これはもちろん、自分だったらこうするということなので、みなさんにそうするといいよ的な話ではないんだけれども、自分だったら、この過程もすべてSNSまたはサイト等でオープンにするかもなぁ。今日どこどこに相談に行った。こんなことを言われた。どこどこに資金申請に行った。こんなことを言われた。申請した。こんなふうにやった。結果こんなことになった…等など。
 そうすることで、同じ悩みを抱えている方々と情報を共有することができて、そこからまた新しい知恵が生まれるかもしれないし、誰かがアドバイスをくれるかもしれない。いろいろ報道されていることの実態も分かるかなと思うし、それが次に別のアクションにつながるかもしれない…かな、なんて思うので。少なくとも、自分が失敗しても、それが誰かの役に立つかもなぁなんて思ったりもして。
 まぁホント悩みは尽きないと思うけど、自分だけで抱え込まずに頑張っていきましょう。


 まだまだ考えればやれることはあるかもとは思う。ここに書いたことなんてまだまだぬるいかもしれない。もちろん、それぞれのライヴハウスによって事情も異なるだろうから、それぞれの工夫やアレンジが必要とも思う。また、ライヴハウスの運営者だけでは解決できないこともたくさんあるんじゃないかなとも思う。
 ということで、こういう機会なので是非、出演するアーティストさんや来訪顧客のみなさんも一緒に考えてみたりするといいだろうと思う。そういう人たちの中にもいろいろなオーソリティーがいるとも思うし。
 そうすることで、もっとみんなにとって身近なライヴハウスとしての立ち位置も強まっていくだろう。
 正直うちの会社も大変だけど、おそらくはみんな、本当にたくさんの人が大変。だからコラボレーションが意味を持ってくるようにも思う。
 ということでみんなでいろいろ考えていきましょう(これは他のあらゆることに言えることだけれども)。私たちのこのSpinart(スピナート)にも、みなさんの意見やアイディア、アドバイス等々、是非よろしくお願いします!


「Spinart(スピナート)」では、活動・運営・ブランディング・プロモーション等相談も受け付けています。
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紫水勇太郎・清水 豊

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