Logo Mark連載記事

Logo Markなにか創るとうれしくて厳しくなった音楽系サブスクでの作品リリースについて〜噛み砕いてみた

紫水勇太郎・清水 豊

株式会社4DT 代表取締役
株式会社ワークス 代表取締役
Spinart運営者


1966年、栃木県生まれ。

株...

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 もう3ヶ月〜4ヶ月ほど前にリリースされたアナウンスなので既にご存知の方も多いかとは思うけれども、サブスク・メディアでの音作品リリースに関する基準が厳しくなった…ということで、今回はそれに関するお話。
 このお話は主に、国内のディストリビュート企業であるMONSTAR.FMさんからリリースされているものをベースに書くものだけれども、そのアナウンスによれば、海外サブスク・メディアの中でももっとも厳しいApple Music/iTunesの規約に準じているということなので、おそらくはApple Music/iTunesが厳しくなったということと同義かなとは思う。ということで、Apple Music/iTunes側のリリースを読んでみたが、これがちょっと分かりにくかったので、MONSTAR.FMさんが分かりやすく示してくれたものをベースに書くことにする。


以下のような作品は原則としてNGになったもよう

 比較的分かりやすいところからということでここから。
 まず以下のような作品のリリースはNGということになったとのこと。
 ・ヒーリング、瞑想、ヨガ等、精神状態の向上を促す目的の楽曲
 ・カバー曲、トリビュート楽曲、カラオケ楽曲
 ・VOCALOIDで制作された楽曲
 ・ジャズスタンダードを中心としたアルバム
 ・クラシック楽曲
 ・オーディオブック(声のみの楽曲)
 ・コンピレーションアルバム
 まぁ、ボカロ作品のNGは分かりやすいね(残念なことだけど)。
 これに関しては、MONSTAR.FMさん以外ではこれを挙げていないディストリビュート企業も散見されるので、Apple Music/iTunes側で示した規制なのかどうかは判然としないものの、少なくともMONSTAR.FMさんでは完全NGで、それがもしApple Music/iTunes側でもダメということであれば、サブスク・メディアの選択が細くできるようなディストリビュート企業でないと対応できないということになるかもしれない。
 まぁもっともボカロ作品については、そもそもの文化的にサブスク・メディアでのリリースが必須ということではないとは思ったりもするので、このダメージはあまり大きくはないかもとは思う。
 気になるのはコンピレーションやヒーリング系かなぁ。
 これは普通に作品や企画としてあるでしょうと。特にヒーリング系なんて、なにを以てそのジャンルだと認定するのかが曖昧と思うし、この規定の運用によっては、ある種のインスト系は全部アウトなんてことにもなりかねない。それに、どんな楽曲がOKでどんな楽曲がNGになるのかの判断についてもだいぶバラ付きが出そうとも思えるから、なんとも気持ちが悪いものが残るのは正直なところ。
 カバー、トリビュート、カラオケ、ジャズスタンダード、クラシック…については、おそらく著作権の問題が大きかったのかなと想像する。つまり、著作権をちゃんとクリアしていないカバーやバック音源を無断使用したカラオケとかが増えちゃったということかなと。これね、いちいちチェックするのも大変だったと思うんですよ。事務手間が半端ない。なので、このチェックを簡素化するために全面NGとしたということかなと想像したという次第。  結果、要はオリジナル楽曲以外は出せませんと言われているようなものと思うので、これもプレイヤー目線では残念以外ないけれども、そういうことになっちゃったんだなぁとあきらめるしかないのかもとは思う。
 オーディオブックは…逆にこういう作品をリリースする人もいたんだね…という新鮮な発見だった。まぁ、表現分野としてはアリとは思うので、やはりこういう規制は残念とは思うけど、これもひょっとしたら読み上げてる文章作品の著作権が問題だったのかもなぁ。
 じゃあ「オーディオブック」の定義はどうなっているのかと言えば、わざわざ「声のみの楽曲」という注釈がついているとことがミソかなと。とすれば、バックにオリジナル音楽をつけてたらアリなのかな?…なんてことを思ったりもする。逆に、アカペラはこれに入らないということで審査通過できるのかな?…とか、要はこれもちょっと曖昧かもなぁと思ったり。これはどこまで審査通過できるかをちょっとチャレンジしてみても面白いかもしれない…運営の方にはちょっと迷惑なチャレンジかもしれないけどw


タイトル名・アーティスト名フォーマット

 実はこれ、自分の作品「Remaked」で引っかかった問題。
 アナウンスによれば「配信先で最も審査基準の厳しいApple Music/iTunes Storeの入稿規定を基準としております」ということで、詳細はApple Music/iTunesの規約を読んでねということなのだがこれが前述の通り分かりにくい。
 その分かりにくい規約を読んで、自分でおそらくこういうことかなと思われる解釈を以下に列挙してみる。
 ・アーティスト名に余計な情報を入れちゃダメ
  …年号とかメンバーとか「Reunion」みたいな情報とか。
 ・一つのアルバムの中に複数のアーティスト名を登録することはできない
  …おそらくはコンピレーション作品についてかな?
 ・アーティスト名に一般名詞は使えない
  …例えば「クリスマスなんとか」とかアーティスト名に「KARAOKE」が入るとか。
  …「〇〇トリビュート・バンド」とかもダメらしい。
 ・アルバム名や楽曲名にバージョン名等を加えたい場合はいろいろな制約がある
  …使っていい表現例がいくつか掲載されてます。
  …「Vol.1」等の表現についても決まりがあるらしい。
 まぁ上記のようなことについて細かいことがドバーっと書いているのだが、さらに、今自分の作品が引っかかってるポイントとしては以下のような指摘があったので追記しておこうかな。
 ・アルバムタイトルの英文をすべて大文字表示することができない
  …英語の慣習に従って頭文字=大文字、以下=小文字にしてくれと言われた。
 ・アーティスト名で日本語と英語で異なる名称を使う場合は、日英別々のジャケを作ってくれ
  …自分の場合、日本語名表記は「紫水勇太郎」で英語名表記を「u-taro DANNA shimizu」としていたら、それ自体は大丈夫だけど、違うバージョンの名称表記したジャケを納品してくれと言われた。
   以前の作品では全然スルーだったんだけど今回初めて指摘された部分。
 とまぁホントにいろいろあるのだけれど、まぁこれは一応フォーマットを守れば、その名称そのものに規制がかかっているということではなさそうなので、まぁ表現の自由は一応守られていて、かつ具体例が多いという意味では比較的分かりやすいかなとは思う(突飛な表現の名称には注意が必要かもしれないけど…例えばユニット名に「Various Artist(いろいろなアーティスト)」なんてつけるのはNGだと明記されてる)。


ジャケット画像のクオリティー

 これは解釈が難しい。なんでも、「一般的な店頭に並ぶCDと同等のクオリティー」がないと審査を通過することができないということらしい…お〜、これはだいぶ曖昧だw
 この「一般的な店頭に並ぶCDと同等のクオリティー」というのがどういうレベルなのかということを考えなければとは思うが、ここで頭をよぎったのはジョン・レノン「IMAGINE」のジャケ(ビデオ作品等とも連動してリリースされたベスト盤の方ね)。
 これは有名なジョン自筆による線画の自画像が、白い画面上中央にポンと配置されているだけというシンプルさなのだが、これがもし、「ジョン・レノン」という超ビッグネームによる作品ではなく、無名アーティストによるものだったらダメだと判断される可能性があるということなのかも?…でも逆に考えれば、これは既に店頭に並んだCDとしてあるわけだから、この水準を超えていればいいのか?…とかも思ったり。
 まぁいずれにしてもだいぶ審査側の主観が入ってきそうで、これはもう審査に出してみないと分からないということにもなりそうでやはり気持ちが悪い。音楽もそうだけど、ジャケのデザイン等も本来自由な表現ということになるはずで、それのレベルを云々するのは本当に難しいことのはずと思うんだけど…。
 もっとも、この「IMAGINE」のジャケは、上部にアルバム・タイトルとアーティスト名が入り、下部には「MUSIC FROM THE MOTION PICTURES」という一文が入ることで、ジャケとしての体裁を整えているとも言えるから、そう考えると、鍵になるのはこうしたタイポ・デザインだったりするのかも。そうだよ、The Beatlesの「ホワイトアルバム」みたいなのもあるぞ(白地にバンドロゴのみ)。こんなのを無名なアーティストがリリースしようとしたらどうなるんだろ。お〜、これはモヤモヤしそうだw
 いや待てよ。わざわざこんなことをアナウンスしたということはつまり、よほど酷いジャケがいっぱいあったということかも…なぁ…。


音源のクオリティー

 これも曖昧だ。アナウンスでは「音源に関しても配信先の基準が厳格化されており、基準をクリアすることが困難だと判断した作品に関しては、弊社の判断で配信をお断りする場合があります」とだけ記載されている。
 つまり、サブスク・メディアの大元に出してみないと分からないということかもとは思う。なので対策が難しい。
 とりあえず、最初に挙げたようなジャンルに当てはまらないということをクリアすることだけを考えて、ここはまぁ、審査に出してみてどうかなぁという感じかもなぁ。だって、演奏の上手い下手や音質の良し悪しだって、表現としてわざとそうしてる作品もあるだろうから、一概にどういうものが良くてどういうものが悪いなんて判断できるものではないと思うから。まぁ、そういう意味では審査する人の胸三寸ということになるかとは思うので、ここはもう気にしても仕方ないかもなと思ったりもする。
 もっともこれも、よほど酷い作品がたくさんあったのかもなぁ…。まぁそれを酷いと感じたのも結局は聞いた人の主観でしかないんだけれども、とはいえこういう運営に携わる人は、できるだけ広く多様な表現に対して寛容な立場を取ってくれているだろうとは思うので、例え自分が好きではないジャンルの作品であったとしても、「これはこれでアリだな」と思えるレベルにあればそれを通してくれるだろうとは思うけど、それでも許せないようなものがたくさんあったということかもしれない。まぁ、自分のところに送られてくる作品でも時々あるもんなぁ…これどうしようかなぁって思うような奴…。


アーティストの活動歴

 さて、さらに曖昧で難しいポイントが記載されている。
 アナウンスによれば「活動実績がないアーティストに関しては審査を通らないケースが増えてきている」ということで、場合によっては配信をお断りする場合があるとのこと。
 さてこの「活動実績」という奴。どんな実績があればOKでどの程度ではダメなのかが記載されていないのでこれも事前に対策することができない。特に、初めての作品リリースの場合などはどうなるんだろう?…というのは素朴な疑問。だって初めてだもん。実績なんてあるわけがない。ライヴしてるかとか? ネットでの投稿実績があるかとか?…まぁそんなことなのかなぁ…。
 ただこれは、私たちが運営しているワークス・レコーズでのリリース体験からすればおそらく、初めてのリリースでも、ここまでに書いたような作品やらジャケやらのレベルがある程度以上あると認められればそもそも実績を聞かれるということでもないようだ。
 しかしこれも前述のとおり明確な基準が示されているわけではないから、いきなり実績確認等を求められる可能性は否めない。だとすれば、自分の活動を示すためのWebメディアを準備しておくというのは安全策として重要かもしれないなとは思う。ベストはオフィシャル・サイトかな。Twitter等で許されるかどうかはちょっと不安だけど、YouTubeは実際のライヴ映像や楽曲MV等を見せられるので有効かも。オフィシャル・サイトを作るのが難しいということであれば、「Spinart(スピナート)」のアーティスト紹介ページのようなものを使って、自分の情報が集約されているWebページとして提示するのもアリと思ったりする。


 ということでザッと以上かな。
 このようにいろいろな要件が厳しくなっていくことは、表現者側から見たらうれしくないことだとは思うけれども、こんなことになった背景としては、あまりに酷い作品のリリースが多くなっちゃったのかなということも想像するので、一概に「こんなことしやがって…」とは言えないとも思っている。それに、それでもまだアンダーグランドな表現者のリリース窓口を残しておいてくれてるのも事実だしね。
 ということでみなさん、ちょっと気をつける部分は多くなりますけど、頑張っていい作品を作っていきましょう。


「Spinart(スピナート)」では、活動・運営・ブランディング・プロモーション等相談も受け付けています。
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