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Logo Mark「ステキ」をベースに考えるインディーズ・マーケの肝年末年始はプロレスの集大成の堪能三昧

野林徳行

ヘヴィメタル、プロレス、モータースポーツをこよなく愛するマーケター。
常に、カスタマー(お客様)の心を揺らし、「ステキ」創りをストーリーをもって実現することで成功に導く活動をしてい...

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野林徳行です。
「Spinart」にてマーケティングコラムの連載をさせていただいています。
118回目のコラムです。この年末年始は、プロレス観戦に明け暮れました。プロレス界にとって年末年始は1年間の集大成のビッグマッチが行われます。12月28日DDT@両国国技館、12月29日スターダム@両国国技館、1月1日NOAH@日本武道館、1月3日スターダム@東京ガーデンシアター、1月4日・5日新日本プロレス@東京ドーム、その他にもDDTの12月31日年越しプロレス、大日本プロレス「キング・オブ・デスマッチ・ワールドGPトーナメント」などなど、プロレス団体にとって年末年始は、休暇ではなくて勝負の時になっています。


■ DDT「Ultimate Party 2024」2024年12月28日 両国国技館 観衆3579人(満員)

DDTは、他の老舗団体と違い、ゴツゴツのぶつかり合いだけではなく、笑って楽しむコンテンツも盛り込んでいる団体です。真剣勝負にしか興味がない人は微妙な反応をしますが、笑いながら観る、そして激闘も堪能できる玉手箱のような団体です。
KO-D無差別級王者クリス・ブルックスが佐々木大輔とのプロレス技の攻防の中に凶器も持ち出す大激闘での36分超えの死闘を制し、王座初防衛に成功。DDTらしく最後はエンディングムービーで、1つのショーケースを全員で作り上げているスタイルがファンの心をつかんでいます。
NOAHから乗り込んできた拳王は、タッグマッチで格闘技界で有名な青木真也組を撃破。NOAH内で完結する傾向の強い団体の中で、各団体に殴り込む拳王に大昔のテレビ局の影響で交わらないプロレス団体の関係性を変えていったフリーレスラーたちの思いを感じることができます。
DDTではタレントもデビューします。肉体派俳優桜庭大翔が圧巻のパワー全開で衝撃のデビュー。桜庭は舞台『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」”東京の陣”』『刃牙 THE GRAPPLER STAGE -地下闘技場編-』などで知られ身長187cm、体重100kg超えの肉体を誇ります。また、SNSで話題沸騰のダンスパフォーマンス集団「O-MENZ」の隈取もプロレスデビュー。こういう採用もDDTならでは。
新日本プロレスから参戦予定のグレート・O・カーンがけがで欠場となるや、対戦相手の男色ディーノ(名前がすごい)は、透明人間と対戦するという機転。存分にファンを楽しませました。しかも透明人間に負けるというパフォーマンスは会場を大爆笑の渦にまきこんだ。激闘と笑う要素を織り交ぜたDDTらしい年末の大会でした。


■ NOAH「THE NEW YEAR” 2025」1月1日 日本武道館 観衆 5,088人

こちらは、ゴツゴツの試合が高いシェアを占めるプロレスリングNOAH。三沢光晴さんが全日本プロレスから独立して起こした団体です。
前述のDDTにも乗り込んだ拳王が、この日は新日本プロレスに乗り込んで参戦を呼びかけたKENTAと対戦。NOAHの中では圧倒的に外も意識している選手ですが、これはプロレス界全体を考えてのこと。高山善廣さんをいつも思い起こします。KENTAは拳王に呼応しNOAHに継続参戦の可能性が出てきました。もともとKENTAはNOAHの生え抜き選手。アメリカのWWEでも活躍していました。
新日本プロレスが億万長者のトニー・カーン率いるAEWという団体と提携したことに対して、NOAHは世界最大の団体WWEと緩やかに提携しています。この大会では、身長221cmのWWEのオモスが来日。圧倒的なパワーを見せつけてタッグのベルトを奪取。さらに世界で一番有名な日本人レスラーの中邑真輔も来日し、佐々木憂流迦を相手に横綱相撲で完封。会場は中邑真輔の登場に空前の熱狂。メインイベントは正統派チャンピオン清宮海斗に対してSNSを使って過去を暴いたりしながら攻撃を続けたOZAWAが勝利。この悪逆な攻撃に対して会場中がOZAWAを応援するというハプニング。神戸市長選挙ではないですが、今はSNSを使って人の心を揺らすのが常套手段なのでしょうか。清宮海斗もかなり会場のブーイングに戸惑ったようでした。ヒールレスラー(悪役)の暴挙へのブーイングではなく、正統派に対してファンとしては物足りないという雰囲気のブーイングが最近散見されますが、プロレスラーへの厳しい評価ならまだしも、面白がってまじめに取り組んでいる人を中傷する感覚に近いものだと考えさせられてしまいます。


■ スターダム「STARDOM NEW YEAR DREAM 2025」1月3日 東京ガーデンシアター 観衆2,054人

IWGPという新日本プロレスのブランドの女子王座を持つ岩谷麻優が1月4日新日本プロレス東京ドーム大会でAZMという小学生からプロレスをしている天才レスラーと防衛戦をするその前哨戦がタッグマッチで行われました。試合は岩谷がAZMの前でAZMの得意技でパートナーから勝利する味な展開。全選手新日本プロレスはもともと意識していて、ブシロード傘下にある両団体。スターダムのアイコンと呼ばれる岩谷麻優が強く意識している新日本プロレス東京ドーム大会へのストーリーを実現しました。
岩谷麻優というポンコツレスラーが、スターダムのアイコンにのし上がるまでのストーリーを映画化した「家出レスラー」、引きこもりから救い出してくれたプロレスに賭けるために小銭だけ握りしめて上京した映画もぜひ楽しんでいただきたい。ネットフリックスで話題となったダンプ松本のストーリーを映像化したドラマも話題となった。
この日は、華やかなコズミックエンジェルに対して、H.A.T.E.の刀羅ナツコと組んだダンプ松本&ZAPの極悪同盟が襲撃。ダンプが竹刀で滅多打ちにする。優勢に進めたが極悪同盟の誤爆に乗じてコズミックエンジェルが勝利。全盛時には会場が震え上がったダンプ松本ですが、現在は笑顔のステキなタレント。凄みながらも最後には「あけましておめでとうございます!」、1月1日のNOAHでも同様でした。番組の宣伝でもあると思いますが、プロレス界への愛も深いのだと感じますね。
エースの舞華と女子プロレスラー最高身長のHANAKOとタッグで対戦した外敵チーム200キロ橋本千紘&優宇組のド迫力タッグマッチ、クビになったウナギ・サヤカがかつての師匠中野たむに喧嘩を売ったマッチなどスター選手目白押しの女子プロレストップ団体スターダムのクオリティが高い大会でした。


■ 新日本プロレス「WRESTLE KINGDOM 19 in 東京ドーム」1月4日 東京ドーム 観衆24,107人

「いってんよん」としてプロレス界最大のイベント。7大王座戦を中心に激闘が繰り広げられました。
第0試合という発表されていないダークマッチがどの団体のビッグマッチでも行われます。この日の第0試合は17人の本戦には名前の出ていないレスラーが次々に登場しバトルロイヤル。優勝者が世界最高峰のIWGP世界ヘビー級チャンピオンに挑戦するという試合。そして前述したスターダムの岩谷麻優とAZMのIWGP女子選手権。至極の対戦に普段女子プロレスを観ないファンからも歓声と感動が沸き上がりました。アメリカのプロレスでは、同じ大会に男女が出場するのが当たり前。日本では長い間、男子は男子、女子は女子という環境でしたが、ブシロードの木谷会長はこの風潮なままではワールドワイドな団体にならないと模索しています。
この日の大会は、人気のトップ選手に若手成長株が挑んでいく試合が多く組まれ、その成果がふんだんに発揮されました。世代交代という言葉が聞かれますが、負けないベテランと急成長する若手。トップ団体として「採用と育成」が強く感じられます。ここがほんとうの団体の強さです。
また人気選手の筆頭、棚橋弘至、社長という重責とレスラーの二足の草鞋ですが、1年後の引退を表明してファンを悲しませています。ほんとうのエンターテイナーのこの1年に注目も集まりますし、多くのレスラーが棚橋との対戦を熱望しています。
新日本プロレスはAEWと提携しました。NEVER無差別級王者の鷹木信悟とAEWインターナショナル王者KONOSUKE TAKESHITAのド迫力のダブルタイトルマッチ、メインイベントでは若手代表海野翔太が、IWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJr.に挑戦、辻陽太がIWGP GLOBALヘビー級王者のデビッド・フィンレーを撃破と、若手のレベルが上がりメインイベンターの資格を持っていることがことごとく証明されました。


■ 新日本プロレス「WRESTLE DYNASTY」1月5日 東京ドーム 観衆16,300人

新日本プロレス東京ドーム大会2日目は、新日本プロレス、AEW、ROH、CMLLの選手たちが激闘を繰り広げました。日本とアメリカに加え、CMLLというメキシコの最大団体からも実力は選手が参加し、飛び技が次々繰り出される大空中戦が展開されました。メキシコのプロレスは華やかな空中戦とジャベと言われるストレッチ技がメインで、まさにプロレス文化の融合でした。
RPW統一ブリティッシュ女子王者のスターダム白川未奈と、STRONG女子王者(新日本プロレスのアメリカ部門のチャンピオン)のメルセデス・モネが華やかに対決。AEWには、モネのように採用と解雇の多いWWEからの転身組が男女問わず多く見られます。
前日、最高のゴツゴツバトルを制し、NEVER無差別級選手権&AEWインターナショナルの2冠王者となったKONOSUKE TAKESHITAが、さらにゴツゴツの権化石井智宏を迎撃し激勝。このあとTAKESHITAは、DDT、AEWに続き、新日本プロレスとも契約することを発表し、3団体所属のスーパースターとなりました。
無法者の名前を意のままにする新日本プロレスで育ったゲイブ・キッドは、新日本を退団していた(ゲイブ曰く、裏切った!)ケニー・オメガと壮絶な激闘。ケニーが勝ったものの、今まで悪役でブーイング一色だったゲイブに、「自分がほんとうに新日本プロレスを背負う」という態度がファンに届き、大きな賞賛を獲得しました。ラフファイトであるものの、燃える闘魂の継承者であるという試合スタイルや言動がファンの心を動かした瞬間でもありました。
2日続けてのメインイベントは、IWGP世界ヘビー級王者ザック・セイバーJr.が、リコシェ(彼もWWEからAEWに移籍)を相手に4度目の防衛。コロナ禍の中、母国に帰る外国人レスラーが多い中、ずっと日本に残り続け、昨年は、新日本プロレス最大のシリーズG1クライマックスの優勝、IWGP世界ヘビー級王座の奪取、プロレス大賞MVPを獲得、東京ドーム大会を2日続けてメインイベントという過去の最高外国人レスラーであり、最高の新日本プロレスレスラーを大観衆に見せつけた。王座を死守したザックは試合後、「新日本プロレスはNO.1カンパニー。新日本の未来は明るい。」とアピール。ファンの気持ちをつかみ取った結果と言動を感動ですらありました。


各団体のスタイルの違いを楽しむ、男女に関係ない感動の作り方を感じる、そして新年を迎え、それぞれのキャラクターがストーリーを創り出そうとする行動から想像する、そして勇気をもらい、自分も動き出すファン、そんなことを感じながらの正月プロレス三昧でした。

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