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Logo Mark なにか創るとうれしくて あれはなんだったんだろう?…花王名人劇場とニューウェイヴ系バンドのライヴ

紫水勇太郎・清水 豊

Spinart運営者
YouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおじぃ
YouTube「Crazy NOVA's NO VAnity!」のアシスタント
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 自分が小学生から中学生くらいの頃だっただろうか。世の巷は「漫才ブーム」という奴で、B&B、ツービート、ザ・ぼんち、紳助・龍介、等を旗頭に、それより少し前の星セント・ルイス、春日三球・照代、等もまだまだ活躍していて、お笑いの登竜門的な番組からは、おぼんこぼん、小柳トム、竹中直人、等のニュースターも続々登場し、それらすべての上に重鎮としてやすし・きよしがいるというような、世の中が全体が、お笑いの大きな波の中に巻き込まれて溺れていたような状態になっていた。

 当時の状況がどんなに異常だったかと言えば、例えば中学生の女の子が、
「赤信号 みんなで渡れば こわくない」
的な、ツービートのギャグをそのままキーホルダーやステッカーにした、本人の許可をとっているのかどうかも怪しいグッズを買って、それを自分のマジソン・バッグにぶら下げたり貼ったりしていた時代。
それはもう1年ほど後の「なめネコ」ブームの先駆事例のようでもあったし、そもそもそのフォーマットはアイドルのそれであっただろうと思えるほどの人気だった。

 ということで当時その波の中にざぶんと入って溺れまくっていた自分としては、そうしたお笑いの皆さんが出演する番組は、とにかく片っ端から見ていて、その中に「花王名人劇場」という、毎週日曜21:00からやっていた番組があった。
 この番組は、吉本系の芸人さんが多く出演する、番組としても当時ちょっと古臭さも感じるものの、それ故に由緒正しきお笑い番組という雰囲気があって、自分としては絶対に観るべきお笑い番組のヘビーローテーション番組として、本当に毎週欠かさず見ていたものだった。

 あれはなんだったのだろう。
 日曜日、おそらく親父とどこかに出かけていて、しかし自分としてはその出かけた先より、早く帰って「花王名人劇場」を観なければというような気分の中、なんとか放送開始21:00の5分後くらいには帰り着いて、急いでテレビをつけてチャンネルを合わせた時のことだった。
 画面にはけっこう暗い、横にだだっ広いステージが映し出されていた。
 そのステージの上には、自分の知っているお笑いの方は誰もおらず、なんだか見たこともない、変な格好をした人たちが楽器を持って、自分の知らない、なんだか分からない音楽を演奏していた。

 期待しているのはお笑いのステージである。
 しかし映し出されているのは、聞いたこともないバンドの演奏である。
「なんじゃこりゃ?」
 もう気分は松田優作のジーパン刑事である。
「こんなん映しとらんではよお笑いのネタを見せぇ!」
 思わずテレビの前で毒づいた。するとお袋は、
「そのうち出てくるんじゃないの?」
等と言っている。そうかもしれないと思って観ていると、次から次へとよく分からないバンドが出てきて、なんだか分からない演奏をする。
「いつになったらお笑いやるねん!」
 正直自分はだいぶ怒りに震えていた。
 あんなに楽しみにしていたのに。親父の不興を買ってまでなんとかその時間に帰るために今日のイベント(おそらくは親父が自分のためによかれと思って連れ出してくれたイベント)を、とっとと終わらせて帰れるように頑張ったその努力(ちなみに親父はだいぶ子供っぽい人なので、そういうことをするとあからさまに機嫌が悪くなる)。それらがすべて無駄だったというのか。少なくとも自分は、こんな意味の分からないバンドを観たくて、頑張って帰ってきたんじゃねぇ!…と思っていた。

 記憶は曖昧だけれども、その時テレビに映し出されていたバンドは多分、有頂天とか、プラスティックスとか…だったように思う。
 で、それがもう本当にまったくもって全然いいなんて思えなくて(普通よくある話だとこういう偶然によって開眼しちゃって、一気にその世界にのめり込んだりするんだろうけど…)、自分のお笑いを楽しむ時間を阻害したクソゴミな敵だとしか思えなくて(昔「帰ってきたウルトラマン」の時間を浅間山荘の中継で邪魔されたのに近い感じかなぁと)、もうそれからずっとそれ系の連中には憎悪しか感じていないという…まぁだいぶ大人気ない話なんですけどね。

 まぁその後自分が、フォークだニューミュージックだとなって、その後フュージョンだハードロックだメタルだプログレだと進んでいく中、とにかくこの系統の連中が大嫌いという姿勢を崩せなかったのは、めちゃくちゃ恥ずかしながら、こういう原体験的なものが大きかったように思う。
 だって、そういったジャンルのみなさんがやっている音楽や表現について、ちゃんと耳を傾けて理解しようなんて気持ちにすらなれなかったから、マジでまったく知識ないまま、ただただ大嫌いって感じだったもんなぁ。
 理由は「花王名人劇場」でお笑いが観たかったのにそれを邪魔したクソ野郎どもだから…あはは…しょうもな。

 しかしここから謎は深まる。
 後年、この時のこの放送は一体なんだったのだろうとふと思い、ネット上を検索しまくっても、このような放送の記録がまったく出てこない。
 「花王名人劇場」は原則的にお笑いのための番組であって、ニューウェイヴのバンドのライヴイベントなんて放送したことはないというような感じだし、例外的に音楽関連を扱ったとしても、それはさだまさし様だったりして(もちろんこの回は楽しんで観た…だってファンだったもの…てか、さだまさし様はその辺のお笑いよりよほど面白いしね)、そんな、なんだかよく分からないバンドの放送をしたという記録が見つからないのだ。
 あれは一体なんだったんだろう。
 そんな放送、実はなかったのだろうか。
 自分の記憶違いなのだろうか。
 いまだにこのモヤモヤは解けない。
 もしご存知の方がいれば是非教えて欲しい。

※ちなみに写真は雨上がりにうちの庭で撮った一枚。
 クモの巣に残った雨粒がキレイだなぁと思ったもので。
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 50D + Sigma 70-300mm F4-5.6 APO DG

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