連載記事2025/12/02
なにか創るとうれしくて
こんなにあったら選べない!?…ピック沼について考える
「ピック」…こう言われてすぐにあの平べったいギターを弾くために使う奴だなと思い浮かべる人ってどのくらいいるんだろう。でもまぁ今はもうけっこう多いのかも?…なんてことを考えたくてこの文章を書き始めたわけじゃなくて、今回考えたいのは、ギターを弾くみなさんが、自分の愛用ピックをどのようにして決めたのかということだ。なんでそんなことを考えるかって?…実はこの過程は、例えば自分の表現スタイルを考えるとか、自己プロデュースの方向性を考えるとか…いや、もっと一般的に部活でなにやろうかなとか仕事を選ぶとか、いろいろな選択をする上でそれをどう考えているのかに近いかもなぁなんて思ったので。
それでは始まり始まり。
さてみなさんは「ピック」と言われてどんなものを想像するだろう。たいていは薄いものだろうか。プラスティックでできていると思う人が多いかもしれない。形はおむすび型の三角形かな?…涙型のものを想像する人も多いかもしれない…とまぁここで答えを言ってしまうとこの「ピック」というモノ、まぁ嘘みたいに種類が多いのだ。
まず形の種類が多い。大まかにおむすび型、涙型(ディアドロップとか言うかな)、ホームベース型(これを使ってるのってリッチー・ブラックモアくらいかもしれないけど)、かなり直線的な三角形とか(ベーシストの方が多く使ってますな)、最近は八角形とか、言葉ではちょっと表現しにくい形のものまである。つまりありとあらゆる形がある。その上、それぞれのカテゴリの中でも違いが細かくあって、ちょっと大きかったり小さかったり、つまむところが大きかったり小さかったり、弦に当たるところが長かったり短かったり、まぁもうキリがない。
さらに材質も千差万別。一番多いのはきっとセルロイドかなぁ。それだって柔らかめのものや硬いものがあって、さらにナイロンとか、アクリルとか、(今は条約等でなくなったけど)ベッコウとか、なにか別の動物の骨とか、カーボンファイバーとか、金属とか、ウルテム、ポリアセタールなんていう聞いたこともないような新しい素材のものもある。
その上それぞれに複数種類の厚さがあったりする。ペラッペラの薄いものもあれば、指ではほぼ曲がらないような厚いものまでこれも多種多様。そういった要素が絡み合って、弦に当たった時の感じが違ったりして当然音にも影響があるし、硬さ、しなり具合、指へのフィット感、耐久性、まぁいろいろ違いが出るわけだな。
そう言えば今は、指でつまむところに滑り止め加工がされてたり、弦に触れるところが円錐状の特殊形状になってたり、さらにいろいろな要素があるなぁなんてことも思ったり。
正直言えばこんなに選択肢があって選べるかい!って話で、マーケティング的に考えると、顧客に選択肢を与えすぎて顧客の思考停止を招くような状態になっていると言える。
でもギターを弾く人の多くはこれを一生懸命考えるんだなぁ。だってもっと上手く気持ちよく弾きたいって思ってるから。そのとてつもなく高いモチベーションがあるから、そのためにはなにをどうすればいいのかについてはかなりしつこく考えてるし練習もする。で、その選択肢の中にピックもあるという感じかと思う。
さて自分はどうしたかと言えば、結論を先に言ってしまうなら、
「めちゃくちゃたくさんのピックを試して選んだ。」
という感じ。トータル累計ではおそらく100種類…くらいかなぁ…のピックを試して決めた。
ちなみに今使っているのはJIM DUNLOPのULTEX JAZZ IIIというモデル。ピックの中でもかなり小さな部類に入るモデルで、厚さも1.38mmと厚くて硬く、ほぼまったく反らない。で、素材がウルテムという樹脂っぽい素材でほのかに柔らかさがあるというか、弦に当たった時の感触がいい…なんでもこの素材、爪の感じに一番近いんだとか…それは本当かどうか怪しいけど、まぁセルやナイロンよりははるかに心地よくて、アタックの「キュッキュッ」みたいな音も出ないから好きだ。
とはいえ最初はおにぎり型からスタートした。中学1年くらいの頃だろうか。当時近所に楽器屋なんてなくて、隣の町にあった小さな楽器屋で手に入ったのはおにぎり型だけだった…というかそれしか知らなかったっけなぁ。そうそう、これに合わせて指弾きの時にはサムピック(親指にはめて使うピックです)も使ってたっけ…あ…バレた? そうです。この頃はフォークギターを弾いていた時代。ピックを持てば手首を固めて腕をブンブン振ってジャンジャカとストロークすることしかできなかったし、サムピックはアルペジオとスリー・フィンガーの時のためって感じだった。
そもそもこの頃はピックについて考えてみることすらしてなかったんじゃないかなぁ。しかしその後エレキギター(確かフェルナンデスのRLG50とかいうレスポール・モデル)を持ってバンドで弾くようになるとだんだん気になってくる。
まずそれまでのピックだと柔らかすぎて弦をちゃんと弾けないしピックの先端がちゃんと弦と弦の間に入ってくれない…いや、単に下手だっただけなんだけど、そんな悩みを抱えていたある日…というかその頃はもう栃木県の宇都宮という大都会(…田舎者のシミズにとっては大都会だったんだいw)で、連日ちゃんとした楽器屋さんに通ったりしてたから、突然たくさんのピックが目に入るんですな。
しかし前述した通りとにかく種類が多い。どれを選んでいいかもまったく分からない。で、とりあえずは既に顔見知りになっている店員さんに聞いてみるとティアドロップ型のがいいとか言うから、それってどれ?…的に見てみるとそれがまた小さくて持ちづらそうに見えるんだな。だってそれまでは、おにぎり型の広い面積のものを使ってかなりしっかり持ってたから、こんな小さなものちゃんと持てるのかいな?…と心配になる。でもとりあえず買って試すと…案の定ピックはズレて落とすし、それまでのようには弾けないし、まぁだいぶダメだった。そりゃそうなんだ。だっておにぎり型の時とは指の使い方も手首の使い方も変えないとちゃんと弾けないもんね。当時はYouTubeなんて便利なものはなかったしVHSのビデオすらない時代。誰もちゃんとした弾き方なんて教えてくれなかったから当然分かるはずもなかった。
でもなぜそのピックをやめなかったかと言えば、当時出版されていた音楽雑誌に掲載されている色々なミュージシャンの楽器や使用機材の特集なんかを読んでみて、すごいギタリストの多くがティアドロップ型のピックを使っているという知識を得たから。そのギタリストのオリジナル・モデルなんてのもけっこう出てたしね。もっとも、ブライアン・メイの真似をして1円玉で弾いて(6ペンスコインなんてものは見たこともなかったし)弦を切ったり、(当時の高校生にとっては)高い金を払ってホームベース型のベッコウ・ピックを買ってみたら(リッチー・ブラックモアの真似ね)これがまぁさらにかなり弾きにくくてさすがにあきらめたりなんてこともあったけど。
とは言えなかなかしっくりこなくて、本当にいろいろなピックを使ってみたけど、最初に定着したのは確かPICKBOYの…型番とか分からないけど黒くて大麻っぽい絵がレリーフ的に描かれていて…あ、カーボン製だって書いてあったなぁ…という奴。これがよかったのは、大麻っぽいレリーフが指にかかって滑りにくく、適度に弾力もあったから当時の弾き方的には上手くハマったような感じ…でもアタックの「キュッ」っていう音はあまり好きじゃなかった…なんて感じ。自分の音楽活動としてはもっとも長い期間やっていたクリムゾン・シャアというバンドの時代の割と最初の頃にこのピックになって、以後解散まで…いや、解散間際の頃にこれがJAZZ IIIに変わったんだっけ。
この時使ったJAZZ IIIは今使っているウルテム素材のものではなくナイロン製のものだったかな。とにかくだんだん難しいことを弾かなきゃいけなくなってきて、ピックの大きさがどんどん邪魔に感じるようになって、より小さいものを探しまくってたらけっこうすぐに出逢ったという感じ…てかこの頃既に大ヒット・モデルだった…らしい…知らんけど。
これはとにかく小さくて、速く弾きたくて仕方なかったこの頃の自分にはだいぶフィットした。もちろん小さい分ホールドし続けるのが難しくて、だから指の使い方とかいろいろだいぶ悩んだけど。
しかしこの後さらに迷うんだなぁ…。実はこの後しばらくはアコースティックなユニットを組んで、自分は12弦ギターで主にリフとかコードを担当しながら歌って、難しいことはもう一人のナイロン6弦のギタリスト・カルロス様にお任せしたので、ピックについて悩むこともなくしばらく過ごしたのだが(このユニットが無くなった後もしばらくは12弦ギターで弾き語りとかしてたし)、その後さらにしばらく経って久しぶりにストラトを引っ張り出して弾き始め、さらに久しぶりに自分の作品などを作ってみようと思ったらまたまたピック沼ずぶずぶ状態が再燃した。
まず弾けない。いや、マジで下手なだけなんだけど記憶にある昔の水準にすら届かない(まぁ、長いことそういうスタイルの演奏をしてなかったからね…)。で、時代は変わり今度はYouTubeがあって、とんでもなくテクニカルなフレーズをいとも簡単に弾いている人が動画を出していたり、そういう人が難しい楽曲の弾き方を解説していたりもするので、そういった動画を見ながらいろいろと試しているうちに、
「これはピックの問題もあるのかも?」
等と、自分の技術のなさを棚に上げて道具のせいにして、そしてまたピック探しの沼にハマった次第。
その時既に40歳代も半ば…いい歳こいてなにをやってるんだという感じではあるけれど、以前悩んだ頃とは情報量も知恵も違う。そして…ふふふ…財力も違うw ということで思いついたのが、サウンドハウスさんのサイトを開いて、使えるかもと思えるティアドロップ型のピックを片っ端から1枚ずつ発注するという…考えてみればサウンドハウスのみなさんにはだいぶ迷惑な方法だった。何種類くらいだったかなぁ…はっきり覚えてないけど30〜40種くらいはあったかなと。
で、片っ端から弾いてみる。そしてグループ分けする。弾いた瞬間ダメだと分かるもの。使えそうかもと思うもののちょっと違和感が強いもの。かなりいけそうなもの。で、後者2つのグループをまたしばらく交換しながら弾き比べてみる…あ、「使えそうかもと思うもののちょっと違和感が強いもの」を残したのは、単に慣れないだけで、ちょっとフォームを変えたら突然弾きやすくなるかも、なんてことも思ったから。すると…いろいろ弾きすぎてなにがなんだか分からなくなるw…あはは、ダメじゃんという感じなんだけど、それにめげずに弾き続け、目を閉じて弾いてみたり、ストラップの長さを変えて弾いてみたり、つまんだ指から出るピックの角度を変えてみたり、指から出る量を変えてみたり、等などといろいろやっていると、やがて3種類くらいに絞れてくる。そしてその3種をさらに弾いているうちに今のJIM DUNLOPのULTEX JAZZ IIIに辿り着いた次第。
で、この時なにを気にして選んでいたかと言えば、まずは持ちやすさ。
なにせ親指と人差し指の、それも先端だけで持っているわけだし、さらにそれもガッチリ持っているのではなくて軽く持っていてもホールドできる方が良くて、だから薄すぎると持ちにくいし、ツルツルだと弾いてる間に回っちゃったりする。
次に弦移動のやりやすさ。
隣の弦に移る際に引っ掛けにくいのがいい。これはおそらく先端のカタチによるんだと思うんだけど、自分の場合は鋭角な方がスムーズと思えた。
さらにこれはピックの大きさによってもだいぶ影響があると感じた。そして自分の場合はより小さい方がやりやすいと思えた。
そして弦とのこすれ具合。
細かくトレモロみたいに弾いた時に引っ掛かりなく弾ける方がいい。ここに負荷があると当然持つ指に力が入ってどうにも具合が悪い。これは多分ピックの素材や厚さによるのかもと思ったり。だから弾かなくても見た目でけっこう見当はつくように思ったけど、中には、見た目滑りそうなのに弾いたらけっこう引っかかるものもあって、やはり使ってみないと分からないもんだなぁなどと改めて思ったり。
合わせて、これはこすれ具合と近いけれどアタック音の感じ。
個人的にあまりアタックがガツガツ聞こえる音が好きになれなくて、これは弾くときのピックの角度によるところが大きいとは思うんだけれど、ピックの材質によっても、それぞれ個性的なアタック音が出るので、これもやはり弾いてみないと分からないなぁと思った。
…とまぁ、こんな感じで結局オーソドックスな形のJAZZ IIIで、材質がウルテム樹脂のものに落ち着いたんだけど…まぁ結局それでもめちゃくちゃ弾けるようになったりはしなかったので、結局は道具じゃなくて自分の腕の問題なのよねぇと…まぁだいぶトホホな結論になりましたとさ。
でもね、これだけ多くのピックを試してみると、その違いや、それぞれのピックが持っている個性とか、そのピックを作った人がどんなことを狙って作ったのかなんてことも感じられるような気がして、単に自分に合うか合わないかということ以上に面白い体験でしたよ。
さらに、自分の指の長さや形、関節の柔らかさ等々によっても合う合わないがありそうだなぁと思いますし、また、どんな弾き方をしたいのかでも選択が異なると感じました(今回選んだULTEX JAZZ IIIでカッティングするとかってけっこう難しそうと思いますもんね)。
ということで、もし今ピックに悩んでいるという方がいましたら、是非お試しください。
そうそう…時々さぁ、どんなピックでもめちゃくちゃ上手く弾けちゃう人がいるけど、ああいう人って本当にすごいなぁと改めて思いますなぁ。もちろんベスト・プレイをするには自分のものが一番なんでしょうけど、ベストでなくても上手い…そっか、そういう人たちは単に技術のレベルの底辺がめちゃくちゃ高いところにあるってことなんですかねぇ。うらやま…いや、もう少し頑張ってみようっと。こんなじじぃが頑張ってどこまで成長できるかは分かりませんけど。
準備中