2025/03/05
この話はおそらく1980年代…いや90年代か。私たちがまだ若く、「クリムゾン・シャア」なんていうふざけた名前でバンド活動してい頃のことだった(「深紅色のシャア」っていう意味で要はガンダムのシャアをもじった名前…当時はガンダムも今ほどメジャーな感じじゃなかったから、この名前を名乗っていても「え? King Crimsonが好きなの?」なんて聞かれたっけなぁ)。
この話を持ってきたのは多分、現…いや当時もうちのおかみ様であらせられます沢"Preshilla"亜姫呼(さわ-ぷりしら-あきこ)様…だったように思う(今はYouTube「うさぎのうみちゃんねる」のおばぁ)んだけど、なぜか突然私たちは、昭和女子大のキャンパス内で開催されたバンド・コンテストに参加することになった。
まぁ今となっては記憶もやや曖昧ながら、確か昼間は小さい会場でコンテストをやって、夜は大きな講堂みたいなホールで各賞の発表とその日ゲストで来ていた偉大なる2つのメジャー・アーティストのライヴをなんと「ただで」観られるという企画…だったと思う。つまり自分たちが演奏できるのは昼間のコンテストの場だけだけれど、小さい会場とはいえ、それでも普段出演しているライヴハウスよりは大きな会場で、しかも、ゲストアーティストのファンたちがたくさんいるそこで演奏できるのはとても有意義なプロモーション機会だと思えた…ように記憶している。
問題は…その日のゲストがEarthshakerと聖飢魔IIだったことくらいだろう。
Earthshakerはいいんだ。私たちが高校の頃から、Loudnessと並んで…というかLoudnessよりもメロディアスで親近感の持てるバンドとして日本のハードロック/ヘヴィメタル界のトップに君臨し、「Earthshaker」やら「More」やら「TOKYO」やら「Wall」やら、自分らだって散々コピーしたりカラオケで歌った尊敬すべき先達だもの。ぶっちゃけ前出の沢"Preshilla"亜姫呼さんなんてかなりミーハーなレベルのマーシー(Vo.の西田昌史さんね)ファンで、この日なんてびくびくしながらEarthshakerの楽屋に行って、
「ファンなんです!」
とか言いに行って、だいぶ適当にあしらわれてるしw(てかその楽屋行に、なんでその時既に夫だった俺がついて行かなあかんねんw)…まぁ今思えば、もっと勇気を出して写真くらい一緒に撮ってもらえばよかったよなぁ…ああ当時はスマホなんてなかったもんなぁ…おっと話がズレた。
でね、問題は聖飢魔IIだったんだ。いや、聖飢魔IIが問題なのではない。彼らのファンが問題なのだ…なんて、自分もだいぶファンだけどなw
そもそも会場入りしたその瞬間から不安だった。だって会場周辺の花壇やら芝生やらベンチやら、そのありとあらゆるところに、下手をすれば自分ら出演者より派手で凝った衣装を広げて身につけようとしている人たちをたくさん目にしたり、友達同士お互いの顔を、デーモン閣下や清水長官やルーク参謀のように塗っていくという(確かもう大橋さんは抜けた後だったと思うんだよなぁ…これも曖昧だけど)、そんな場面をたくさん見かけたから、今日ってひょっとしたらヤバいライヴになるんじゃないかなぁなんて、そりゃ思うでしょって感じで、実はリハの段階からけっこう緊張はしてたんだ。だって知ってるもの。閣下の号令一下あいつらがいきなり、
「コロせ〜!」
とか平気で言うのとか。だってその時点でリリースされていた全部のCD持ってたし。ライヴのビデオも観てたし。残念ながら行くことはできてなかったけど、確か小暮伝右衛門名義のビデオとかも買っちゃってたし…う〜ん…これは時系列として、このライヴの時には既に持っていたのかその後に買ったのかはちょっと曖昧だけれど、しかし、(メタルのくせにw)さだまさし様を聞いて青春時代を過ごした自分としては、閣下のトークにはそれに通じるものがあって、それはそれは楽しく観させていただいていたものだった。
とはいえ自分たちのコンテストだ。これを通らないことには話にならない。だからちゃんと真剣にやろう。許された持ち時間から考えれば2曲はできる。じゃあまずはそこに集中すべきだ…なんてことを考えてステージに上がるわけだが、上がって、準備して、構えて、照明が明るくなると…なんと!…そこにはさっきの閣下やエース、ルーク、ゼノン、ライデンなメイクのみなさんがた〜くさん! マジか〜! 観客が出演者より派手ってどういうこっちゃねん! ヤバい! とにかく圧がすごい! どうしよう!
事前に決めていた通り1曲目をやったものの、その間ずっとその圧に押しまくられているようなプレッシャーを感じていた私はついつい次の2曲目との間に弾いてしまった。Amのスケールで始まるそのリフ。聖飢魔IIの中で当時もっともメジャーだったであろうこの曲「蝋人形の館」。
「きゃ〜!」
目の前の閣下メイクや長官メイクの女の子たちが雄叫びを上げる。思わずビビる。しかしやめるわけにはいかない。しかしどうやらそれは好評で、みんなさっきよりだいぶ前のめりになってくれているようだ。よし今だ。そして私はそこから2曲目の自分たちのオリジナル曲のリフへとつないだ。
まぁ考えればだいぶ卑怯な方法だけど、ま、ウケたからいいかと…だってそのコンテスト、なんだかどこぞの事務所も絡んでいて優勝者は最初から決まっていたっぽいし、だからもう好き勝手やってもいいかななんて思っていたのも確かだしね。
しかしそれでも怖かった。観客のほぼ80%があのメイクよ。自分たちよりはるかに完璧に扮装してるのよ。怖いわー。下手打ったらマジコロされるんじゃないかと思ったもの。
そしてその後時間をおいて大講堂での結果発表。なんと我がバンドは3位に入り(1位、2位はそのどこぞの事務所のバンドだったからまぁ実質いい感じだったかと)、なんとその手のコンテストとしては破格の賞金10万円を手にしたのだった! すげー!…てか、うちのバンドってこれがキャリア・ピークだったかもw
ということで表彰となって、壇上で賞状、トロフィー、賞金目録をもらうんだけど、その役を担ったうちのセンター、ベース&ヴォーカルの大介さんがだいぶ気負ってプレゼンターに不遜な態度を取っちゃって、横にいるこちらがハラハラしたりはしたものの、まぁだいぶ晴れがましい感じにはさせていただいた…ありがたいことです。
そしてその後はなんと、Earthshakerと聖飢魔IIのライヴを、リザーブされたけっこういい席で観ることができるという大特典付。これはうれしかったなぁ…もっともEarthshakerのマーシーが、
「おめぇらどうせ聖飢魔IIを観にきたんだろ〜!」
的にだいぶやさぐれてて、なんかそれがちょっと哀れで苦笑してしまったりもしたんだけれど。
しかし聖飢魔IIのライヴはすごかった。演奏も楽曲もすごかったんだけど、閣下のトーク、それに絡むメンバーの阿吽の呼吸、すべてがとてもよくできていて、これぞエンターテインメントだよなぁなんて思いつつ、だいぶ笑わせていただきながらも、しかし今日はほら、ファンというよりコンテスタントとしてのゲストだからなんて、ちょっと余裕ぶっこいて、ご用意いただいたその特等席にどっしり座りながら観ていた。
聖飢魔IIのファンの方ならここまで読んでもうお分かりですね。閣下がこんな態度の人をお許しになるはずがないのです。はい、それは予想に反してだいぶ早い段階で起こりました。
「今日はなにやらコンテストらしい。」
「その入賞者があの辺で観ている。」
「それも座って観ている。」
「そういう奴をどうしたらいい!?」
知ってたんですよ。ビデオで散々観てたはずじゃないですか。聖飢魔IIのライヴでそんな態度を取っていたらヤバいって、分かってたはずなんですよ。しかしその時の自分はもうやり切った感が満載で、お金ももらってホクホクで、その危機管理センサーが全く働いてなかったんです。だから気づいたのは閣下の、
「そういう奴をどうしたらいい!?」
の掛け声を聞いた瞬間でした。
「ヤバい!」
思った時は遅かったのです。会場を揺るがす、
「コロせ〜!」
の声。思わず座ったまま、自分の周囲を見回しました。そして自分の2列ほど後ろ、やはり閣下のメイクをした女の子の恐ろしい形相と目が合ったのです。
「ヤバい…マジでコロされるかもしれない。」
「こいつらロックバンドじゃない…宗教団体だ。」
私はその子たちにニへら笑いを浮かべて手を上げて見せ、そしておずおずと立ち上がって見せるしかなかったのです。
まぁだいぶ盛って書いてしまいましたが(筆者の悪い癖である)、もちろん聖飢魔IIの信者のみなさまに襲われるなんていうこともなく、その後もエース長官とルーク参謀の素晴らしいギター・バトルに感動しつつ(一応ギタリストなので)、閣下のトークも含め、めちゃくちゃ楽しんで過ごさせていただいたという次第。
でもね、帰りは速攻逃げましたよ。そりゃコンサート中は信者もそれを楽しみたいから襲ってこないでしょうけど、終わればねぇ、なにをしてくるか分からんと思いましたもん。
「おまえさっきの態度はなんやねん。」
みたいに絡まれたら、そりゃ一人一人はおそらく自分の方が強いとしても、それが数百人も集まったらヤバいでしょと。なので、速攻で機材を積み込んで、速攻で車を出して、とっとと現場を後にしましたとさ。考えてみればそんなにビビらずに、閣下の楽屋にでもお邪魔してたらだいぶ楽しかったかもなぁなんて…だいぶ歳を取ってから思いましたけど…いや、それくらい怖かったんだって。
ということで「10万円をもらったけどデーモン閣下に脅かされてビビった夜」のお話でした。まぁ、Earthshakerも聖飢魔IIも今でも現役で、ライヴをやればいつも満杯で、ファンはきっと以前よりもさらに楽しんでいて、聖飢魔IIに至ってはその上海外でも支持者が広がっている。そんなすごい方々と、とっても瞬間ながらとてもそばにいたんだなぁと思うと、
「もったいなかったなぁ〜。」
という思いとともに、うれしかった思い出が今でも楽しめるエピソードでした。
ちなみに後年、Earthshakerの「More」のカラオケ・ビデオに出演するお仕事をいただき、とんでもなく寒い荒川土手で、オスカー所属の女優さんをナンパする役など、とてつもなく恥ずかしい映像が巷に流れていたこともありましたなぁ…(あ、こっちはTwinzerの「I will Wait for You」だったかな?)。このお話もいずれ書かせていただきますね。
※ちなみに写真は…これはどこで撮ったんだっけなぁ…。
多分どこかの店の軒下にぶら下がっていた鮎の干物…だったような…。
※使用カメラ&レンズ:Canon EOS 6D + EF24-70mm F2.8L II USM
準備中