2020/07/09
美紀:大変ご無沙汰しています。みなさんお元気だったでしょうか?
崇:いやーあのー。無理だな。
美紀:何が。
崇:コロナウイルスで、なんかこの連載も予定がだいぶ狂ってしまいまして。
美紀:何が。
崇:前回でやっと那須に移住した所まで来たのですが、この辺からストーリーが「震災」がらみになるわけですよ。そんでさらにいろんな苦労話とか。
美紀:それか、春になって畑仕事とか庭仕事とか1年くらいはそんなことしてのんびり過ごした話とか。それで、さあさあぼちぼち音楽活動もやるかなという所で「震災」だったのかな。
崇:それですよ。そういう話になるのだけど、このご時世震災の話なんかあまり聞きたくないと思うんだよね。誰得かなと。世界はコロナ・クライシスですよね「コロナ禍」。それどころじゃないじゃん。連載書きづらいわけですよ。
美紀:うーん。でもあの時(震災)にうちらの音楽活動が再スタートしたわけじゃない? さらに今回のこのコロナ禍というのもうちらのまた新しいスタートになっている感じがするのよ。ターニングポイントというか。
崇:再々スタート?
美紀:書きたいこともちょっと変わってきちゃったかも。この現状で音楽に対する姿勢というか求めるものというのが変わってしまった。それでうちらの音楽活動がどうだのとか上手く言えなくなってしまって。
崇:ほう。
美紀:それより振り返って過去の自分たちはどうだったのか、それに対して今はどうなのかとか書いてみるのも面白い気がしてる。
崇:ほほう。現在の視点を取り入れて書いてみると書けるかなと?
美紀:で、当時を振り返ってみますが、震災よりちょっと前に曲作りを始めているんだよね。
崇:え? そうだっけ??(記憶にございません)
美紀:そう。引っ越してきて一年目くらいに、ずーっと気になっていながら見ていなかった「This is it」をレンタルしてきたのよ。
崇:あー、Michael Jackson! 引っ越しをする年に亡くなったんだっけな? すごいショックだった。
美紀:それで、私は昔ハマってたマイケル熱が再熱したんだよね。この人は本当にお客さんを楽しませるために活動していたんだなあって。自分も歌でいろんな人を元気づけたりしたいなあと思ったりして。庭造りもひと段落したところで曲を作ろうと思ったんだよ。
崇:そうだったっけね。でも、私がまったくやる気なかった。そんなに乗り気じゃなかった。
美紀:うん。
崇:とはいえ、「音楽やってたんですー」みたいなのを近所の人たちと話す機会があったりして、ウチの店でライブやりなよとか言われちゃったりしてた。東京のときはそういう空気全然なかった。でもこっち(那須)は割と当たり前のように誘われたりするね。
美紀:とあるユニットさんから一緒にライブやろうよという話が来てたりしてたんだよ。
崇:震災起こる前だね。
美紀:ちょっと前なの。ほんのちょっと前。4月にやろうって言われてたの。だけど、2人でライブしたことないし、曲が足りないしどうしようかって言ってたんだよ。
崇:そうでした。2人以外なら実はあるんだな。ママと別のミュージシャンで。私その時、子守してました。
美紀:そりゃまあいいとして。そんな矢先に3月に震災がおきたんだよ。
崇:ほう。
美紀:それで、4月のライブどうするかって話になって。
崇:なんか覚えてる。そんときまったくやる気のなかった俺が、なんと「やろう!」って言ったの。
美紀:うん。
崇:不思議ー!!!!
美紀:ははは。もしかして震災がなかったら、うちらまだ音楽を再開してなかったかもしれない?
崇:その可能性はある。不思議だよね。なんであの時「やろう!」って思ったんだろう。未だに謎です。人生3大謎に入るね。
美紀:残りの2つは何だ?
崇:1つは結婚だね。
美紀:それで(無視)、ライブ活動が始まったわけだ。
崇:当時のライブは普通の雰囲気では無かったよ。電気なんかも計画停電とかあってし、不安な者どうしが集まって肩を寄せ合って励ましあうために集まっているような感じだったかも。
美紀:全然覚えてない。
崇:ミニライブだったよ。3曲?
美紀:もうちょっとやったと思う。5曲ぐらい。でもあまり覚えてないんだよ。とにかく必死だったのかな。
崇:まあ、その声を掛けてくれたユニットさんの前座的な感じだよね。
美紀:うん。
崇:ママは今や堂々たるものだけど、当時は借りてきた猫みたいだったよ。可愛かったねー。
美紀:ははは。なんじゃそりゃ。
崇:ほんとに。しかし人のこと言えなかったな。ライブ、当時はほんとヤバかったね。
美紀:なにが?
崇:ギターまともに弾けなかったから。
美紀:マジすか?
崇:マジです。
美紀:私が伴奏しながら歌を歌えるタイプでないので、全部ギター1本まかせになってしまうし、責任重大だね。
崇:10年は楽器触ってなかったね。ほんとに弾けなかったよ。
美紀:そうだっけ?
崇:コードとその出る音が頭にはいってなくて、「C」の押さえ方わかんなかったから。
美紀:マジすか。
崇:そんな状態で人前で弾くまでに1カ月くらいしかなかったんだけど、これがなぜか間に合ったね。
美紀:ただ「こういう時こそ音楽だ」というミュージシャンとしての使命感に燃えてたんでしょうか?
崇:いや、とにかく丸暗記です。感情もへったくれもないね。声を掛けてくれたユニットさんはほんと上手だったなー。
美紀:そんな感じで初めてのライブはひとまずクリアしたんだけど、その後、とにかくもどかしかった。
崇:なんで?
美紀:あの時、シンディーローパーが日本でツアーを行ったり、いろんなアーティストが被災地でチャリティーのライブとかやってたでしょ。ところがろくに音楽活動をしていなかった自分たちはといえば、「そんな所に行って歌ったところで誰からも喜ばれないなあ」と思って何もできなかった。
崇:そうねー。
美紀:無力さを痛感したんだよ。ほんとに。こういう時こそ人を励ましたりできるミュージシャンでありたかった。
崇:そんなこと言ってたね。志高いなー。いまでもそうなの? 今(コロナ禍)もある意味では同じ状況だけど?
美紀:うーーん。そう。これね。「こんなときにこそ音楽だ!」もちろんはじめはそう思ったんだけど、なんか違うんだよねー。
崇:今回はこの辺で、次回にすすむか。まあ夫婦間で想いが全然ちがったんだね。私は当時、人前でとりあえず毎回間違えずに演奏できれば万事OKだったス。
美紀:はははは。
準備中