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Logo Mark歯を磨く様に演じる自分と相手と演出と

鵜飼雅子

舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
日本演劇教育のさきがけ的な存在である劇団らくりん座の正式団員として全国各地で公演を経験。
朗読や表現、コミュニケーショ...

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2月19日に私が主催する宇都宮のシニア劇団の第3回公演が行われる。
今回は出演していないのでその分気楽なはず、と思っていたがそうでもなかった。
第1回、2回は演出と役者をやっていたので、なんとなく気ぜわしかった。やってみて初めて気づいたのだが、役者として考えている事と、演出として考えている事が大分焦点が違っていて、家で公演関係の事をやる場合は役者として覚えたり考えたりする時間と演出として考えたりする時間とダブルに時間が必要だった。役者と演出と同時進行は私には無理だった。
でも昨年までは役者もやっていたので自分以外の役者視点も稽古中、半分くらいはあったと思う。
しかし、今年は役者はしないのでガッチリ演出目線で稽古を見ていたらある役者が、
『ここ〇〇さん、動かない方がいいと思うんです。どうですか?』
なんて質問がきて、一瞬遠い宇宙から戻ってきた感覚だった(笑)。
そこの部分を注視してはいなかったのだ。いい加減に見ていたわけではなくて、極端に変であればそこに気がつくが、そうではなかったと思う。
私としては芝居のバランスが極端に崩れてしまわなければいいので、役者本人が動きたかったら動けばいいし、動きたくなければそれでもいい。おかしい時は止めるから。
そう言えば、振り返るとこんな場面は社会人劇団で演じていた過去にもいくらもあった。
その時は私は役者のみで演出は別の人で、それと似たような質問が起こるたび演出は少しだけ“キョトン”とした何とも言えない表情を少しだけ見せた。自分は少し不思議に感じたのだが、その意味がやっとわかった。
“重要視しているのはそこではないのだ”
これはその部分をおろそかにしているのとはまた違う。
そして社会人劇団で初めて体験した事なのだが、私の芝居に、
『そこはこうじゃない。』
と不平を言う相手役者がいてびっくりした。そして演出はその言った人の意見を採用したので不思議に思い演出に聞いてみたら、ざっくり言うと、
『面倒だからその言った人に合わせた。』
『え〜!!』(私の心の声である)
なかなかクセのある人で、確かにわからなくもないが私としては不服だった。しかし、とりあえずその時は(言ってきた人に)合わせておいた。
演出としてはどちらのやり方をしても別にいい部分だったから、面倒くさくない方にしただけ。今となってはこの行動は理解出来る。
少し外れてしまうかもしれないが、演出に軽々とそれはできないと言う。これにもびっくりである。
私が商業劇団で芝居を始めた時は、演出がいて役者がいて、役者それぞれ思い思いに動き、それに相手が合わせる。出してきたものに合わせるのだ。これが鉄則だった。大学卒業してから初めて芝居をした私にも先輩役者は文句ひとつ言わず対応してくれた。
ただし台詞が違っている場合は別で、
『鵜飼、あの台詞違ってる。』
と指摘を受ける。台詞が癖になってしまっている場合はなかなか頭でわかっていても、舞台に上がると間違った台詞が出てしまって、戻すのが難しい。
役者の演技にうんぬん言うのは基本演出だけで、どうしても出来なかったりわからなかった場合には相手の先輩方にアドバイスを求めたりした。
『演出先生方は、威厳があったなあ〜。』
と昔の演出家の顔を思い浮かべ、今の自分と比べてみたりもする。


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舞台役者、朗読家、アトリエほんまる 副支配人。
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